ツンデレカノジョ。

晴時々やませ

ツンデレ彼女。

 最近彼女ができた。

 普段はツンツンしているけど、たまに見せるデレの一面がある。

 そんな彼女がたまらなく可愛い。


 ツンなところも好きだけど、デレるところも見てみたい。

 ずっとそんなことばかり考えていた。

 ある夜、彼女からあるメールが届いた。それもなぜか二通も。


『大変! なんかあたしが二人になっちゃったんだけど!』

『どうしよう、なんかあたしが二人になってるよ~』


 内容はどちらも同じだが、文面の雰囲気がそれぞれ違う。

 というか、いまいち状況がつかめない内容だ。


 詳しい話はまた明日、ということでそのときは収まったが、それからあんなことになるなんて、全く想像していなかった。


 これが、一か月ほど前の出来事だった――。





「二人ともおはよう」


「ふんっ、おはよ……」


「あ、おはよーっ」


 茶髪でウェーブのかかったセミロングの髪が風に揺れる。

 一人は無駄にツンツンしていて、もう一人はテンション高め。

 ずいぶんと温度差のある返事だ。

 無論もう慣れている。


 朝。俺は彼女たちと待ち合わせをして、それから登校する。

 彼女たちとは、俺が今付き合っている子のことだ。

 この説明だけだとすごい誤解を受けてしまいそうだが、簡単に説明するなら、彼女が『二人に分かれてしまった』のだ。


 見た目は全く一緒なのに、性格は真逆。

 ツンが多めな方と、デレが多めな方。どちらにもツンとデレはあるが、その比率が真逆になっている。


 初めは目を疑ったが、今ではもう慣れたものだ。

 周りの知り合いなんかもすでにこの状況を受け入れている。

 しっかし、どうしてこうなった。


「さっきから何ぼさっとしてるのよ。置いてくわよ」


「どうしたの? 具合でも悪い?」


「いや、平気だよ。行こうか」


 同じ顔で性格が全然違うのを見ると、まるで双子みたいだ。

 もともとは二人で一人だった。どちらも俺の好きな彼女だ。

 こうして彼女の表情を二つ同時に見れるのはいいが、いろいろと大変なこともある。


 まず、なぜか二人は仲がそんなによくない。

 嘘と本音のような二人だからこそお互いよく通じ合っている、はずなんだけど……。


「あんたねぇ、ちょっとべたべたし過ぎよ。いい加減こいつから離れて」


「えー、なんで? いいじゃん別に。ね、いいよね?」


「あはは……」


 デレ子が俺の右腕に自分の腕を絡めて抱き付く。

 その様子を見たツン子がそれを止めようとする。


「見た目はあたしと一緒なんだからもっとあたしらしくしてよね」


「それだったらあたしも同じこと言えるよ~」


「ほら、二人ともケンカしないで」


 俺は彼女たちをなだめる。これももう慣れた。


「別にそんなんじゃないわよ。ふんっ」


 ツン子がそっぽを向く。


「そうそう。ツン子は私に嫉妬してるだけだもんね~」


 デレ子がニヤニヤとツン子を見つめる。


「は、はぁ!?」


「ツン子もあたしみたいにイチャイチャしたいんでしょ」


「べっ、別に違うしっ! 全然そんなんじゃないし!」


「遠慮することないよ、付き合ってるんだから」


「い、いや、だからあたしは別にっ……」


 ツン子が俺に目線を移した。ちょっと顔が赤い。


「えっと、こっちの手でよければ空いてるけど?」


 そう言って俺は左手を差し出す。


「だから違うって言ってるでしょ。勘違いしないで……」


 相変わらず今日もツンツンだ。

 なんでだろう。少し寂しい。

 もう少し、素直でもいいのにな。

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