ツンデレカノジョ。
晴時々やませ
ツンデレ彼女。
最近彼女ができた。
普段はツンツンしているけど、たまに見せるデレの一面がある。
そんな彼女がたまらなく可愛い。
ツンなところも好きだけど、デレるところも見てみたい。
ずっとそんなことばかり考えていた。
ある夜、彼女からあるメールが届いた。それもなぜか二通も。
『大変! なんかあたしが二人になっちゃったんだけど!』
『どうしよう、なんかあたしが二人になってるよ~』
内容はどちらも同じだが、文面の雰囲気がそれぞれ違う。
というか、いまいち状況がつかめない内容だ。
詳しい話はまた明日、ということでそのときは収まったが、それからあんなことになるなんて、全く想像していなかった。
これが、一か月ほど前の出来事だった――。
◆
「二人ともおはよう」
「ふんっ、おはよ……」
「あ、おはよーっ」
茶髪でウェーブのかかったセミロングの髪が風に揺れる。
一人は無駄にツンツンしていて、もう一人はテンション高め。
ずいぶんと温度差のある返事だ。
無論もう慣れている。
朝。俺は彼女たちと待ち合わせをして、それから登校する。
彼女たちとは、俺が今付き合っている子のことだ。
この説明だけだとすごい誤解を受けてしまいそうだが、簡単に説明するなら、彼女が『二人に分かれてしまった』のだ。
見た目は全く一緒なのに、性格は真逆。
ツンが多めな方と、デレが多めな方。どちらにもツンとデレはあるが、その比率が真逆になっている。
初めは目を疑ったが、今ではもう慣れたものだ。
周りの知り合いなんかもすでにこの状況を受け入れている。
しっかし、どうしてこうなった。
「さっきから何ぼさっとしてるのよ。置いてくわよ」
「どうしたの? 具合でも悪い?」
「いや、平気だよ。行こうか」
同じ顔で性格が全然違うのを見ると、まるで双子みたいだ。
もともとは二人で一人だった。どちらも俺の好きな彼女だ。
こうして彼女の表情を二つ同時に見れるのはいいが、いろいろと大変なこともある。
まず、なぜか二人は仲がそんなによくない。
嘘と本音のような二人だからこそお互いよく通じ合っている、はずなんだけど……。
「あんたねぇ、ちょっとべたべたし過ぎよ。いい加減こいつから離れて」
「えー、なんで? いいじゃん別に。ね、いいよね?」
「あはは……」
デレ子が俺の右腕に自分の腕を絡めて抱き付く。
その様子を見たツン子がそれを止めようとする。
「見た目はあたしと一緒なんだからもっとあたしらしくしてよね」
「それだったらあたしも同じこと言えるよ~」
「ほら、二人ともケンカしないで」
俺は彼女たちをなだめる。これももう慣れた。
「別にそんなんじゃないわよ。ふんっ」
ツン子がそっぽを向く。
「そうそう。ツン子は私に嫉妬してるだけだもんね~」
デレ子がニヤニヤとツン子を見つめる。
「は、はぁ!?」
「ツン子もあたしみたいにイチャイチャしたいんでしょ」
「べっ、別に違うしっ! 全然そんなんじゃないし!」
「遠慮することないよ、付き合ってるんだから」
「い、いや、だからあたしは別にっ……」
ツン子が俺に目線を移した。ちょっと顔が赤い。
「えっと、こっちの手でよければ空いてるけど?」
そう言って俺は左手を差し出す。
「だから違うって言ってるでしょ。勘違いしないで……」
相変わらず今日もツンツンだ。
なんでだろう。少し寂しい。
もう少し、素直でもいいのにな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます