大名と農民
額田兼続
第1話(幸松)
K
名前(幼名)は
そして、さっそく
近くの藩であるT藩の大名、
幸松が数え年5歳(満年齢は3歳)になった正月。
お由と会うことになった。
大石家と柴樹家の権力の差はほぼないが、数え年12歳(満年齢10)であるお由と会うのは初めてだ。それに、幸松の姉達はお由に数年前に会っていたけれど、幸松が生まれてから一度も会っていないらしい。
「姉上。おゆう様はどんなお方ですか?」
「お由は少し意地悪だわ。気の弱い幸は振り回されてしまうかもね」
姉であるお
「からかうのはやめてください、姉上。私だってもう5歳ですよ」
「そうならない様、若は頑張ってください」
家臣である
「分かった、のぶつな。さちまつは頑張ります」
およそ30分後。ようやく大石家の城についた。
「あそこにお由はいるみたいよ」
許嫁とはいえ、初対面。幸松は少しドキドキしてしまった。
「久しぶりですな、大石殿」
「7年ぶりですな。ん?その男児は誰じゃ?」
「お由様の許嫁、幸松でございます」
「幸松か…。由は乱暴だからな。まあ、由に振り回されぬよう頑張るんじゃ」
「は、はい…」
「その子が幸松?」
お由が言った。
「そうでございます」
大石家家臣、
「もうちょっと私と年の近い子が良かったわ」
「それは
由信とは、お由の父である。
「父上様、何で私にしたのかしら?姉上様はもう19なのに今だに嫁いでないし、末っ子の
「おそらく父上様は………………………………………」
「…ふーん。なるほどねぇ…」
その2年後、幸松は元服した。
幸松は、
そして、結婚することになった。
「幸松改め忠政です。よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
前と違って、優しくなったかと思った。
なってなかった。
例えば、酒を飲んでいる時。
「忠政。酒を一杯持ってきてくれぬか?」
「いえ、その…もう酒はよした方が…」
「私の体のことは私が決めるから。いいから持ってきて」
「あ、は、はい…」
ちなみに、お由は全く酔っていない。
「忠政、
「あの…その罪は、流刑なはず…」
「あっそ。でもそれって、幕府が決めたの?違うわよね。私が決めたのよね。私が決めたから、私が自由に変えられる。間違ってる?」
「…………」
年上で気の強いお由に、忠政は全く逆らえなかった。
そして、お由に振り回された忠政は、ある日、お由が外出している間に逃げ出した。
(お由から離れたい…)
彼女の事を忠政は心から嫌っていた。
そこで、こっそり馬で逃げたのだ。
(あ…もう日が暮れてきた…)
もう、ここがK藩なのかさえも分からないくらい逃げた。
(少し、探索してみよう…)
辺りは田んぼや畑で、農民が働いていた。
しばらく歩いていると。
(あ…もう無理…)
疲れて倒れてしまった。
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