続 村の少年探偵・隆 その8 スクーター

山谷麻也

第1話 少年探偵・健

 I街道は、四国の大河・Y川の支流・I 川に沿って山奥まで抜かれている。小杉隆の通った学校は街道のそば、猫の額ほどの校地に建てられていた。そこから先は集落もまばらになり、いよいよ秘境に足を踏み入れた感が強くなった。

 I街道は御多分にもれず、昔は舗装されていなかった。クルマは曲がりくねったデコボコ道を、土煙を上げながら往来した。それかあらぬか「I街道を行くバスの運転手の腕は日本一」などと言われたものだった。


 メインの街道からして、このような道路事情だったので、周辺の村に通じる道は昔ながらの山道だった。クルマは入れず、文明の利器らしきものと言えば、自転車くらいだった。それも恩恵にあずかれるのは、山道を下る時だけだった。帰りに自転車を押すのは、重労働だった。


 修司の父親・勲がバイクに乗り始めると、村人は驚天動地だった。何しろ、エンジン音が村中に響いた。有史以来の静寂が破られたのである。

「都会へ行くと、ロクなこと覚えて帰らん」

 勲叔父さんは鼻つまみ者になった。しばらく不遇の時代があったが、叔父さんにライダー仲間が現れた。しかも、それが地元のお医者さんだったので、叔父さんは面目を一新した。


 ただ、お医者さんは乗っていても、それほどうるさくはなかった。スクーターだったからだ。

 隆たちは叔父さんのバイクよりも、お医者さんのスクーターに憧れた。


 そのころテレビで『少年ジェット』(竹内つなよし原作)が放映されていた。少年探偵・たけしが毎回、悪者を懲らしめるというストーリーだった。この主人公がスクーターに乗っていた。

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