大人気美少女WEB作家の感想欄に「お前、才能ないよ」と書き込んで、精神崩壊させるのが楽し過ぎる。他人の不幸は蜜の味と思ってたが、隣の席の眼鏡っ娘が情緒不安定になったので介抱してあげることにした。
平日黒髪お姉さん
第1話 マイブームはWEB作家潰しです
俺の名前は
どこにでも居る普通の男子高校生だ。
趣味はマンガやゲーム、アニメと言った二次元コンテンツ。
ただ、それは昔の話。
現在のマイブームは——。
『ごめんなさい。小説投稿を止めます。一年半の間、皆様お疲れ様でした。私には才能がありません。最後まで完結させることができなくてごめんなさい。もう限界です……』
青い鳥アプリを見ると、とある作家がそう呟いていた。
いいねとリツイート数は多く、誰もが励ましの言葉を吐く。
俺もその中の一人である。
『何があったのかは分かりません。ただ、貴方がもう一度小説を書いてくれる日を楽しみに待っています。俺、ドングリさんの作品大好きだったので、また読みたいですっ!!』
どんな言葉を掛けても無駄。それはもう分かりきっている。
作家の心は完全にへし折られているのだ。ぐにゃりと。
もう再起不能と言った感じか。もう二度と書くことはないだろう。
なにせ、アレだけ俺がしつこく誹謗中傷したのだから。
そうだ、現在俺が熱中しているのはWEB小説書き潰し。
『才能ないんで、書くのやめてください』
『正直言って目障りです。貴方の小説がランキングに載ると』
『あのー? 全く面白くないので、投稿止めてください』
『コレってあの作品パクってますよね? 謝罪してください』
『小説を書く時間が無いと呟くぐらいなら、さっさと小説を書いてください。読者の気持ちを蔑ろにしてるんですか? 皆さん、楽しみにしてるんですよ。あのー? 分かってます?』
『完結させられない作家はゴミ。二度と読みません』
『次から次へと小説書くなら、一作ぐらい完結作品を書いたらどうですか? 読者の時間を奪わないでください』
何度も何度も誹謗中傷を食らわせる。
最初の数回程度は、殆どの人が軽く流すだけだ。
それでも誹謗中傷が続けば、簡単に人間は壊れる。
否——人間は壊せるか。
誹謗中傷を繰り返し、作家が破綻する様が最高に面白い。
あまりにも滑稽で。あまりにも脆くて。あまりにも儚げで。
美学を感じるね。まるで、ドミノ倒し。
今まで積み重ねた悪口が意味ある言葉に見えてしまうのだ。
そして、作家の精神を崩壊させるのだ。ぐちゃぐちゃに。
俺自身は、適当な言葉を並べているだけなのに。
数秒程度で考えた感想をスラァーと書いているだけなのに。
それなのに、作家は考えるのだ。
どんな意図があったのかと。何日も何日も。
俺からしたら、特に意味があったわけではないのに。
「あっっはは。あはっっっははははははははははしゃはははしゃははっはは、最高だよ。ドングリさん、アンタはよぉーく頑張った。半年間よくぞ、耐え抜いてくれたよ、全く」
だけど、勝利したのは俺だ。
小説書きは、書かなくなったら終わりなのだから。
書籍化の夢を掲げていたのに。その夢は潰されたのだ。
この俺によって。この凡人の俺によって。
作品など読んでもいない、ただ一人の毒者によって。
「はい、ゲームクリアぁあああああああああ!!!!」
誰かの夢を潰すって、どうしてこんなに楽しいのだろうか。
最高の幸福感。毛穴という毛穴から、何かがゾワワと込み上げてくる。相手の人生をぐちゃぐちゃにした達成感だろうか。
「次の獲物は誰にしようかな……あ、こ、コイツにしよう」
大人気美少女WEB作家——マリン——
ネット上に自分の容姿を公開し、爆発的な人気を誇る。
アイドル並みのルックスと、甘ったるい声。紫髪にゴスロリメイド服という、オタク受けを完全に狙ってる美少女だ。
毎日ネット上での顔出し生放送を配信し、読者との交流も盛んだ。
反面、一部ユーザーからは『枕営業』と呼ばれることも。
「さぁーて、楽しもうじゃないか。マリン……お前が苦しむ姿を、俺に見せてくれ。楽しませてくれよ、最後の最後まで」
◇◆◇◆◇◆
マリンのLIVE配信が始まった。本日は雑談枠らしい。
いつも通りのゴスロリメイド服を着た紫髪の女の子。
目元はアイプチをしているのか、普通にしては極めてデカイ。口元はマスクで隠しているが、身バレを避ける為だと。
「本日もお友達と一緒に楽しく行ってマリンー!?」
画面から流れる媚びた声に、俺は吐き気を催してしまう。
いまどき、ロリボイスでもここまで酷いのはない。
コメント欄には『可愛い』『最高ー』などとオタク共の気持ち悪い発言が並んでいる。一方で『若いからって調子乗るな』『お前には価値ないから』『お前の人気は若いだけ』などという、売れ残り女達の嫉妬も垣間見える。本当、地獄絵図。
ま、俺自身も罵倒を食らわせているのだけど。
『今日も枕営業お疲れ様です。配信内で媚びた声を出して得た作品の評価は嬉しいですか? 貴方の作品を心からお待ちしている人など誰一人居ないんですよ。分かってますか?』
一度目は不発。軽くスルーされてしまった。
と言えど、少しだけは効果があったのか。マリンの顔色が若干だけど、曇ってしまう。初めて見る光景だ。人が嫌がる顔を見るって、本当に楽しいなぁー。やっぱり最高だわ。
『キモオタ達を身体で釣って得る評価は嬉しいですか? WEB作家を名乗るのならば、作品の出来で戦うべきではないですか?』
『あのー気に食わないコメントは無視って酷くないですかー? 自分の指示に従わない奴は要らないと言ったら、どうですかー?』
マリンの表情に亀裂が走る。頭に血が上ったのだろう。
但し、自分はアイドル路線で売っていると自覚しているらしい。ここでボロを出したら完全に終わる。そう思い、彼女はネットアイドルの顔を保ち続けた。
しぶとい奴だな。さっさとボロを出して、周りの人達から「こんな人ではないと思っていたのに……」などと言われて欲しかったのに。あー作戦失敗だな。ただ精神崩壊は少しずつ進んでいるのは確かみたいだな。
「ご、ごめん……お友達の皆……きょ、今日は放送終わるね」
涙目になったマリンは小さな声でそう呟いた。
配信を見ていた他の人達が「大丈夫ー?」とか「変なアンチには負けないでぇ!」とか「がんばえー、マリンちゃん」などと、励ましの言葉が送られている。
それでも、マリンの心は少しずつ蝕まれているのだ。
「ごめんなさい……本当はもっと放送したかったけど……」
そう言って、マリンのLIVE配信はブツ切りになった。
放送後、俺がもう一度彼女の放送を見ようとしたら——。
「あれ……マリンのチャンネルが開けない。さてはアイツ。俺をブロックしたな。少しは頭が回る女みたいだな」
でも、ここで俺が止めるはずがない。ていうか、マリンがもっと苦しむ姿が見たい。泣きじゃくって泣きじゃくってどうしようもなくて、死にたいと連呼する様とか。あー考えただけで、ワクワクが止まらないね。
「マリン……この世界には純粋な悪が居ると教えてあげるよ。現実は小説よりも奇なりと言うけれど、フィクション以上の悪人がここに存在するってことをね。俺が教えてあげる」
◇◆◇◆◇◆
高校生という身分は若い女を間近で見れる良い機会だ。勿論、高校生じゃなくても、女を見れる機会は腐る程ある。
但し、そこに若いという二文字は存在しない。
大人になるにつれて、女性は大雑把になる生き物だ。特に男との交わりを終えた女は人が変わる。可愛い子猫だと思っていたのに、薄汚いドブネズミに豹変することが多々あるらしい。
『らしい』という推測表現しか出来ないのは、俺が童貞で、女性との経験が皆無だというのは言わずもがな分かるだろう。
と言えど、別に童貞であることに劣等感はない。寧ろ、自分自身の童貞に誇りを持っている。清純さを売りにしたアイドルが居るけれど、俺程度に清純潔白さが必要だと思うね。
どうせ、アイドルなんて若手女優やアイドルと毎日ヤリまくりだと思うし。本当に羨ましいよな。他にも一般のファンと交際を持ちかけてもいいわけだし。女性に困ることはないよな。
「葛川くん……あ、あの……教科書を貸してくれませんか?」
「あっ?」
俺に喋り掛けてくる奴が居るとは思ってもみなかった。
「ひぃ……そ、そのきょ、教科書を忘れたので……み、見せて貰えないでしょうか?」
俺に喋り掛けてきたのは隣の席の眼鏡っ娘。
銀縁眼鏡で黒の三つ編み。昔懐かしの学級委員か、文学少女っぽい容姿。ギャルが好きな俺的にはマジで無理。
個人的に、三つ編みにしたら髪が痛まないか心配です。
「あーいいけど。机、くっ付けるのか?」
教科書を忘れたと言い出す女には要注意。
親切心で机を合わせて一緒に教科書を見ようと言ったら、マジでキモい。臭いからこっちに寄ってくるな。などと罵倒される可能性があるからな。思春期の女の子は不思議でいっぱいだ。
思春期の女の子と言えば、父親の体臭を嫌う習性があると聞いたことがある。つまり、俺の体臭を嫌うのは、俺が女の子のパパだからってことでいいよな……? え、何その謎パパ理論。
「机をくっ付けないと見えないです。イジワルするんですか?」
「スカートを捲って、パンツを捲ってくれたら見せてやらないこともない。どうする、やるか?」
「あ、はい……あ、あの……わ、分かりました……」
眼鏡っ娘は躊躇しつつも少しずつスカートの裾を掴んで、持ち上げていく。少しだけ捲れただけで白くてふっくらな肌が見える。椅子に座っている為か、太ももの肉付き具合は二割増し。エロ動画を日頃から漁る俺にとっては、別段どうってことはなかった。感覚が麻痺してるのかもなー。
「ふぅーん。ピンクのレース付きか。見た目の割には、意外とエッチなの履いてんだな。もしかして誘ってんのか?」
「……ち、違います……そ、それは……ぜんぜん……」
小言を呟きつつ、眼鏡っ娘は視線を下へと逸らしたまま。
「あの……教科書を見せてください。お、お願いします」
「あーいいよ。それで、お前の名前教えてくれよ」
「え……あ、あたしの名前を……し、知らないんですか?」
驚愕の事実を知らされたかのように、眼鏡っ娘は顔色を歪めてしまう。隣席の女の子と言えど、俺は興味を持った人や物の名前しか覚えられないのだ。そもそも隣の席になった人物の名前を覚えなけれならないという法律や規則はない。
「タイプじゃないからな」
「あ、はい……そ、そうですか……隣の席なのに……」
ボソボソと呟きつつ、眼鏡っ娘は肩を落としてしまう。
「それで名前は?」
「ええと……あ、あたしの名前は
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