セクハラ面接を受けていた陽キャ美少女JDを、陰キャモブが助けたら一体どうなる?
さばりん
第1話 陽キャなJDが面接にて……
「では、御社を希望した志望動機を教えてください」
「はい、私の志望動機は、貴社の『お客様に寄り添ったビジネスソリューション』という企業理念に魅力を感じ――」
(嘘である。こんな会社の企業理念なんて自分の価値観に一致すらしてない)
そんなことを心の中で思いながら、
就職活動というのは、どれだけ嘘を上手く吐くことが出来るか勝負である。
薄っぺらい出来事を拡大表現して、あたかも自分が有能であることを見せつけられるかが、面接でのカギを握るのだ。
そんな就職活動という荒波に揉まれながら、
何故入社したくもない商社の面接を受けているのか?
それは先日、就職セミナーでどの企業の話を聞こうかと悩んでいたら、社員の人に声を掛けられ、半ば強引に説明会に参加させられたからである。
説明会で配られたアンケート用紙を記入して提出したのだが、どうやらそれが一次選考になっていたらしく、後日二次選考である集団面接の日程がメールに送られてきたのだ。
その時点で既に怪しいとは思っていたけれど、内定をもらっていなかったこともあり、面接の練習として選考を受けてみることにしたのである。
「はい、ありがとうございました」
つっかえながらも当たり障りのない志望動機を言い終えて、ふぅっと肩の力を抜く。
「では次の方、志望動機を――」
「はいっ! 私は当社の営業スタイルに魅力を感じております。様々な顧客の方と取引をしていき、困っていることを解決できるような一流の営業マンになれるよう尽力して参りたいと考えております!」
そうはきはきと答えるのは、本日同じ集団面接を受けている、風太の隣に座るリクルートスーツに身を纏ったセミロングの女の子。
比較的小柄で、顔も小さくて可愛らしい。
そして何より、きらきらと太陽のように輝くような笑顔。
(きっと、こういう元気でハキハキと受け答え出来る子が採用されるんだろうな)
まさに陽キャオーラとはこのことを言うのだろう。
陰キャの風太には持っていない明るさを持ち合わせており、なにより愛想が良い。
質問を投げかけた面接官も、心なしか隣に座る陽キャな彼女に好印象を抱いているようで、微笑ましい笑みを浮かべていた。
ちなみに、今日の集団面接は、風太と女の子の二人で行われている。
「ありがとうございます。えー
面接官が資料を確認して、女の子の名前を口にする。
彼女は
「はい! 大学時代は居酒屋でアルバイトをしておりました。どうしたら効率良くお客さんに提供をすることが出来るかを考え、自分なりの考えを店長に伝えたところ、その案が採用されました。この経験を生かして、貴社でも自分なりのスタイルで行動して行ければと考えております!」
さらに重ねてされた質問に対しても、はきはきとした口調で答えていく恵。
面接官の人も納得した様子で頷いている。
「では次の質問です。ラインはやってますか?」
「はい、やってます!」
「ラインの交換は差し支えないでしょうか?」
「えっ? まあ、はい……」
面接官からの突然のぶっこみに、流石の恵も不思議そうな表情で首を傾げている。
(なんだか、雲行きが怪しくなってきたな……)
異変を感じて、風太は念のため、ポケットの忍ばせておいたスマホで録音を開始する。
警戒を高める風太に気付くことなく、面接官はつらつらと言葉を述べていく。
「弊社、内定者全員に入社するにあたってグループを作っていただいておりまして、そちらで弊社の心得や座学を学んでいただくことになります」
「あぁそう言うことですか! 承知いたしました。でしたら問題ありません!」
「ちなみに差し支えなければですが、現在婚約する予定などは有りますでしょうか?」
「いえ、ありません」
「ありがとうございます。常務、何かありますでしょうか?」
とそこで、質問を繰り返していた面接官がひと段落した様子で、隣に座る常務へと声をかけた。
今まで終始無言で伸ばした髭をさすりながら威圧感を放っていた常務は、喉を鳴らしながら居住まいを正す。
「いやぁそれにしても、丸山さんほどの美貌をお持ちでしたら、彼氏の一人や二人いてもおかしくないでしょうに」
何を言い放つかと思えば、いきなり色恋沙汰の話をし始める常務。
「そんなことないですよ。本当にそういうの、私には縁がなくて」
「ならわが社に入社した暁には、男性社員から引っ張りだこですな。ガハハッ……」
「あっ、あははは……」
盛大に笑う常務のおじさん。
それに対して、恵は愛想笑いを浮かべることしか出来ない。
セクハラ的発言に、風太は眉間に皺を寄せてしまう。
風太のことなど気に留めることなく、常務は気を良くしてさらに恵へ質問を投げかけていく。
「それにしても、その明るい雰囲気なら、色んな人から声掛けられたんじゃないの? 例えばほら、夜のお店とかの勧誘とか」
常務のおっさんは遠慮なくさらにプライベートな質問を繰り返す。
「いえ、私あんまりそう言う所には行かないので」
「そんな事言って、本当は言えないだけで、実はそう言うお店で働いてたりするんでしょ? ほら、今時の若い子はお金がないから」
「いえ、本当にないですってば!」
恵は笑い飛ばすようにして常務の質問をさらっと受け流しているものの、机の下に置いている手を見れば、ぎゅっと握りこぶしを作ってプルプルと手を震わせていた。
「嘘つかなくたっていいんだよ。君みたいなタイプはね、そう言って夜が凄くて遊び人だったりするんだから! 見た感じ着やせするタイプみたいだし、脱いだら凄そうだ」
そう言いながら、リクルートスーツ越しに恵の胸元をいやらしい目で見つめる常務。
流石の恵も、これには恐怖を覚えたのか自身の身体を手で抱いた。
「おやおや、そんな恥ずかしがらなくたっていいじゃないか。減るものでもないだろうに。ほら、ピシっと背筋を伸ばして」
度が行き過ぎた常務の対応を目の当たりにした風太は、そろそろ頃合いだろうと思い、意を決して口を開いた。
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