出会い系でマッチングした子が変装した世界一可愛いで有名な元アイドルだった

でずな

第0話 出会い系アプリ

 世の中にはどれだけ努力しても彼女ができない悲しい男がいる。

 その悲しい男の中に俺――中村なかむら春樹はるきも入っている。中学では女友達すらできず、高校は男子校に通っていたせいで今も女っ気1つない。

 今年になって大学生になったが、異性の知り合いは講義で隣になってたまに喋る程度の人くらい。これまで俺は垢抜けするために頑張ったり、異性とのコミュニケーションの勉強をしてきた。

 けど、その結果がこれ。

 もう嫌になっちゃう。頑張った意味ないじゃん。

 そんな風に思い、高校からの親友でモテるイケメン――清水しみず秀人しゅうとに愚痴っていると。

 

「春樹がモテないの、絶対女の子との出会いが少ないからだと思うんだけどな。出会い系のアプリでも始めてみたら?」


「出会い系かぁ」


「大学内で恋愛するよりよっぽど気楽でいいと思う。オレみたいに元カノがありもしない噂を流されないで済むし……」


 トホホとしょんぼりする秀人。

 それを横目に見ながら、たしかに出会い系ならいいなと俺は思う。自分磨きやコミュニケーション能力がどれだけ通用するのか知る、良い方法だ。良いと思った人がいたら本気でぶつかってみればいい。

 しかし、そんな事を思う中で不安点が残る。


「出会い系ってさ、俺の知ってる限り純粋に気が合う異性を見つけるためにやってる人少ない気がするんだけど」


「ま、まあ中には体目的のヤツとか金目的のヤツはいる。でもそういうのは、人生のパートナーを探すためのマッチングアプリを使えば万事解決ってわけだ」


「なんか詳しいね」


「ひゅ〜」


 わかりやすく口笛を吹くな。でも、そうか。マッチングアプリって色々あるんだ。


「ちなみにマッチングアプリってどんなのがあるの?」

 

 秀人から教えてもらったのは3つの種類。

 1つ目は共通の趣味を通して異性と仲良くなることを目的としたもの。これは恋愛をすると言うより、異性の友達を作るためらしい。

 2つ目は本物の恋を見つけるのを目的としたもの。これがマッチングアプリとして王道であり、様々な年齢の人達が使う。これは俺でも知ってる。

 3つ目は体の関係を持つことを目的としたもの。この存在を秀人から聞いた時SNSでやれよと言ったけど、アプリの方が色々楽なんだと。不純すぎるだろ。


 そして、それぞれの種類にたくさんのアプリがある。有名なアプリじゃないと女の子から詐欺られたりするらしく、かなり無法地帯らしい。


 ……なんか話を聞いていくうちにどんどん自分じゃできないように思えてきた。

 

「俺、誰かとマッチングするのかな」


「するする。春樹は空手で黒帯だろ? それをプロフィールに書いたら女達がわんさか寄ってくるからそんな心配しなくていいぞ」


「そんな都合の良いことある?」


「ま、女ってのはいざというときに守ってくれる強い男が好きな人が多いってわけだ」


 その理屈は理解できるけど。実際のところ強くて守れるだけじゃモテるわけじゃないんだろうな。こんな事言ってる秀人は別に体格がいいわけじゃないし。

 

「あっすまん。彼女から呼び出しが入った。ということで、出会い系でなにか困ったことがあったら何でも聞いてくれ」


「おう」


 俺は秀人と別れた後、マッチングアプリについてネットで色々調べ。

 『人生のパートナーを探そう!』という、それっぽいキャッチコピーの人気出会い系アプリ――カップラブをダウンロードすることにした。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る