第37話
鑑定グラスを使った鑑定の普及。丸投げにより忘れかけていた真琴の元に、増産の依頼が入ってきた。企業に赴き、お玉でグルグルと作業をこなす。
量を増やしたいという要望に応じて、今回は3倍の量をグルグルすることに。報酬も増えてニコニコだ。
そして、10日ほどの時間を費やして、次は施術用の魔道具一式も完成した。予備も含めて必要な数を揃えるにはまだ時間を要するものの、先ずは試験的に使ってみようという話に。
3人は光魔法の恩恵を十分に受けているため施術を施す余地がなく、鼎の母親も同じ。思案した真琴が存在を思い出して、兄夫婦を横浜から招き、テスターとして協力をしてもらうことに決定。
真琴の兄=弘樹(28)も父親に似て毛根の数を減らし始めていてるし、奥さん=
更には夫婦揃ってこの分野の商売に興味を持ち、男性の頭髪に特化した店の開業にまで話が拡大。これは一度持ち帰り、夫婦間で本格的に検討されることになった。
実現すればその分の魔道具作りも余儀なくされて、真琴の仕事量が大変なことに。自分達用として追加で2セット、兄夫婦の分で頭髪用を2セット。真琴の内職はまだまだ続きそうな状況に。
◇
「錬金術に飽きちゃったから、気分転換に何かしたいんだよねぇ」
毎日続く魔道具造りに真琴が飽きた。
とはいえ京と鼎は魔道具の導入に伴って色々と忙しい。覚醒済みの客と未覚醒の客が混在するため、予約に関することで色々と準備をしているし、従業員を増やす算段もしている。魔道具なら施術を行うのは誰でもいいから。
「何かってなによ?」
「それは私にも分からないけど……へへ」
「在り来たりだけど、たまには飲みにでも行こっか。最近は働きづめだったし」
「賛成しかない」
「鼎ちゃんナイスぅ」
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「「「かんぱーい」」」
馴染みの居酒屋で憂さ晴らしと気分転換、それと日頃の頑張りを労う会が始まった。飲み物の他にはサラダと枝豆、冷やしトマトという、サっと出るものがテーブルに並んだ。
「真琴も大変だと思うけど今が頑張り時よ。たぶん」
「それは分かるんだけど、悶々とするんだよねぇ……同じことの繰り返しは」
「まー今は目の前のことを片付けていくしかないよね」
各自、分かりきっていることに頷く。
「真琴のお兄さんも、お店してくれたらいいわよね。需要凄そうだし」
「私達のお店、男のお客さん殆ど来ないもんねぇ……」
「そんな気にしなくていいのにね。こっちは何とも思ってないのに、シャイっていうかナイーブっていうか」
男性客来ない問題が取り上げられた。特に初めは女子高生が殺到して、躊躇してしまうような雰囲気があったかも知れない。
弘樹がその需要を受け持てば、真琴達は単純に嬉しい。どうせなら男性にだって利用して欲しいし、満足してもらう自信もある。
「従業員が増えたら皆の休みも増やせるからね。今は戦国さんの関係で実質月曜だけになっちゃってるし」
「おお、自分でしといてアレだけど休み嬉しい」
「戦国さんもそのうち落ち着くしね。施術やりきったら」
戦国温泉物語の従業員達への施術が終われば、京と鼎には結構な余裕が生まれる。
「私、戦国さんの厨房に料理スキルをあげたい人がいるけど良いよね? 食べ物美味しくなるし」
「良いんじゃない?」
「私達の体重だけが心配だね」
「あ、やば」
「大丈夫よ、ラーメン3杯とか二度とやらないし」
「2杯ならありそうで怖い」
「ないとは言い切れないよねぇ」
「まあ、ほら? サウナ入るからセーフで」
「てことにしとくか、あは」
飲み会はまだ暫く続き、ちゃっかり〆のラーメンまでを胃に収めてから3人は帰っていった。
◇
「ふうん? 重量軽減LV1かぁ」
(初見の使えそうなスキル、久しぶりにゲットー)
(体重は……減らないよね? 物語で見たことのあるようなスキルだけど、何ができるのか謎だあ)
日課ともいえるペットショップ巡りで久しぶりに良さげなスキルを発見して取得する。手帳を取り出して、所持するスキルを更新する真琴。
鑑定で表示する順番は入れ替えができないため、非常に見辛い。今では紙に控えて簡単に整理してあった。
《持ってるスキル一覧》
鑑定LV1
スキル交換 LV2
スキル強制覚醒LV1
火魔法LV2
風魔法LV2
水魔法LV2
土魔法LV2
光魔法LV1
剣術LV1
弓術LV1
投擲LV1
格闘技LV1
体力増強LV1
範囲拡大LV1
肉体強化(俊敏)LV1
魔力増幅LV1
精神力強化LV1
毒耐性LV2
隠蔽LV1
気配察知LV2
会話術LV1
無臭化LV1
成長促進(植物)LV1
運気上昇LV2
食欲LV1
器用LV1
魅力LV2
不眠耐性LV1
理解力LV1
第一印象LV1
引き寄せLV1
健康(脚部)LV1
平常心LV1
晴れ女LV1
閃きLV1
挨拶LV1
集中力LV1
ストレス耐性LV1
飼育(両生類)LV1
二重思考LV1
錬金術LV1
魔力吸収LV1
重量軽減LV1
料理LV1
現状で40以上、これに水槽の幾つかを加えたものが総数になる。何となく見覚えがあったり、役に立ちそうなものだけを集めた真琴なりの集大成。
欲をいえばアイテムボックスとか転移魔法とか、追加の光魔法にしてもそうだが、欲しいものはまだまだある。見付からないものは仕方がない。
◇
一口に従業員を増やすといっても、それはそれで懸念があった。ネットで検索できるような求人形態にすると、凄い数の応募がありそうで。
何百人とか何千人も有り得そうな気がして、尻込みする京と鼎。そんなことになれば採用する人員を選出するだけで、確実にその作業に忙殺される。それは嫌だ。
平行して、もう少し大きな箱へ移転した方が良いのでは? という話が勃発した。これは全員が認めるところで、確かに今の店舗では色々と限界がある。
色々なことがいっぺんに押し寄せてきて、選んでは決めて、営業に反映していかなければならない。自分達で……
結果的に店は移転することに決めた。他に会社の設立時期と、従業員を増やしての事業規模の拡大。これらを同じタイミングで行い、一度キレイさっぱりと目の前のことを片付けよう全部。ということになった。
そしてタイムリーに飛び込んできた、空き物件の情報。同じ渋谷区内で80坪のテナントは、鼎を通して瑠美から話が持ち込まれた。
フレンチレストランが撤退した物件を持ち主(瑠美)が改装して貸し出すから、やってみないか? という至れり尽くせりのお話し。
「こ、これが……て、天の時」
思わず真琴が呟いた。誰も聞いてはいなかったが。そしてすぐに現場に急行して、立地や人の流れなどを確認する3人。駅からのアクセスも良好で文句なしの立地に思える。
「凄い……ち、地の利まで」
また何か真琴が言った気がした。取り敢えず流しておく京と鼎。家賃の関係でそれなりの金が必要になるが、店の売り上げと真琴のスキルバイトで十分に賄える(カククリンは寸胴1つ10万。真琴は毎週6つ以上それを創る)
「次のお店は広いから端の方借りて……私も喫茶店を兼ねたお店、やっちゃ駄目かな? へへへ」
「「……」」
真琴がまた何か言った。今度はちゃんと聞いていた京と鼎。
(あれ? 京ちゃんと鼎ちゃんがフリーズしちゃった? 怒られる感じかな? ひ、人の和は? どこいったの?)
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