第22話
(よーし! 今日からまたペットショップ回るの頑張るぞー)
鼎という戦力を得て、真琴がスキルを探す時間を設けることができるようになった。
魔力量の都合上、京と鼎の間でスキルを移動(交換)する必要があるために昼過ぎには一度顔を出すが、本格的な出番になる夕方に近い時間までは自由に動けることになる。
とはいえ時給の発生する 仕事 扱いなので、怠ける訳にはいかず責任も大きい。仕事に役立つスキルに期待をして、二人は営業を引き受けてくれているのだから。
そういう
◇
チャリンチャリン……
「来たよー」
「あ、真琴ちゃんお疲れー」
「お疲れ真琴。その紙袋、何?」
「オニギリ作ってきたから皆で食べよう? おかずもあるよ。お昼、まだでしょ?」
「噂の料理スキル……ごくり」
「ナイス真琴、今日もパンとウィダー○リー覚悟してたから助かるー」
客の退店を見計らうように真琴が出勤して来た。一応、店には小型だが冷蔵庫と電子レンジ、電気ポットが置いてあってパーティションで目隠しをし、簡易的なバックヤードとしている。
出勤時に弁当を買ってくるなりすれば、冷蔵庫に入れておいて食べる際に温めることができる、という訳だ。
しかし開業間もない今はそういうところに割く余裕がなかったため、全員が適当な菓子パンや栄養補給食品で済ませてしまっていた。
「取り敢えず二人で食べてきなよ。お店、引き受けるから」
「真琴ちゃん有り難う」
「じゃ、お願いね」
「チンして食べてね? もう次のお客さん来ちゃいそうだから静かにね」
「「はーい」」
ささっと白衣に着替えた真琴が京から光魔法を受け取って、予約客に備える。
◇
「それで何か収穫あった? スキル」
「役に立つかはまだわからないけど、面白そうなの見付けてきたよ。錬金術」
「錬金術? ポーション作りかな?」
再度、客のいなくなった店内で今日の成果が報告された。少しづつ良さげなスキルを溜め込んでいる真琴だが、今日は初見の面白そうなスキルを発見することができた。久々のヒットかも知れない。
「あ、鼎ちゃん正解! 私の持ってるスキルを組み合わせて? 能力を付与したポーションが作れるみたいなんだよね。何となく」
「え? 凄いじゃないのそれ」
「うわー可能性の○じゃん」
「休みの日に色々と試してみるね」
「しかし、なかなか見付からないか光魔法」
「元々カブトムシの幼虫が持ってたんなら幼虫ガンガン見てみるとか?」
「それ、昆虫強いお店でやったけど駄目だったんだよねぇ……」
「あ、お客さん来ちゃう時間だ。カナさんお願い」
「りょーかーい。激ウマのオニギリで元気出たから頑張るよ」
◇
店の休みを日月休みの連休に設定しているため、新たなスキル──《錬金術》に費やす時間は十分にあった。
日曜の朝、普段通りの時間に目を覚ました真琴は朝食を食べもせずに、早速スキルに意識を向けてみる。
(あー成る程、組み合わせることができるスキルとできないスキルがあるんだね?)
(ふむふむ……そしてポーションにするには色々と材料が……て全部食材なの?)
(うぅん、カタクリ? 若干よくわからない植物も……検索して売ってる場所を見付けなきゃ。取り敢えず買い物に行こうか)
錬金術を用いて創れる品々は、それこそ多岐にわたった。代表的なものとしては金属の加工品や革製品に陶器、そしてポーションの
その中から自分達(店)に役立ちそうな──今回はポーションにあたりをつけて、買い物を済ませた真琴が制作に取り掛かる。
(スーパーで買ってきた食材の確認からやろう……先ずはニンニク、生姜、それと氷砂糖、セロリにブロッコリー、鷹の爪、うずらの卵でしょ)
(それと春菊と、さやえんどう……生のワカメと黒胡麻に、ひじき)
(そしたら花屋さんで買った、カタクリの根っこの部分とアロエの葉? の部分)
(うん。朧気に頭に浮かんだ材料はこれで全部だ、間違いない。たぶん!)
(硬水のミネラルウォーターをお鍋で沸かして……あ、その間に材料をカット。 ん? 材料を鍋に入れるタイミングが各々違うから、混ぜちゃ駄目、と)
(私は何の料理を作ってるんだろう……? て、そんなこと考えちゃ駄目だ! スキルを信じるんだ。これはポーション、これはポーション、これはポーション……)
(よし。お鍋も沸騰したから材料を投入していこう。スキルが訴える順番通りに……最初は氷砂糖から)
・
・
・
・
・
(オッケー全部の材料がお鍋に入ったね。ここからが本番、 肝となる工程……直ぐに弱火にして、と)
(お玉で撹拌しながら魔力を注ぐ? うっ、とにかく、注ぐ、注ぐ。同時に私の持つ《魔力増幅LV1》をイメージ!? )
(イメージした《魔力増幅LV1》の効果を……魔力に混ぜて、お玉伝いに……お鍋の中に流し込むイメージ、イメージ!)
(お鍋の中身、液体が紫色に変色したら、それが成功の証! 適切な魔力量とイメージによる効果の付与、その成功を知らしめる合図! イメージ、イメージ、あれ? カレーの色だこれ、カレーだわ……カレーの匂いしてきた)
連休初日。真琴は凄く美味しい、ドチャクソに旨いカレーを作ることに成功した。鍋の中には溢れんばかりの量が作られているため、連休中の献立が、自然な流れで決定した。
◇
ふて寝をしたり、カレーの
《魔力増幅LV1》の効果を持つ紫色のポーション。店用にと創ったもので、使用者の魔力量を三割程度、増幅させる。
「て感じで、ポーションができましたー」
「おー」
「へえ。ちなみに施術に使う光魔法そのものは、付与できなかったの?」
京が疑問を投げ掛ける。
「うん。施術で使うヒールは効果の種類が複数あるし、イメージもお客さんに合わせて様々でしょう? 持続期間のこともあって、無理っぽだったんだぁ」
「そっか。でも三割アップは偉い!」
「十分凄いんだよなぁー、ここにいると感覚バグるけど」
「えへへ。じゃあ冷蔵庫に入れておくから、施術前に服用してね。100CCだよ」
「わかった。あたしから飲んでみるわね、一人目のお客さんの前に」
「麦茶作る時の入れ物なの、真琴ちゃんらしさがめちゃ出てるね。あはは」
「じゃあ、行ってきまーす」
減った魔力を回復させるタイプではなく、元となる魔力量を割合で増やす(底上げする)タイプのポーションなので、用量と合わせて念を押しておく。そして、スキルを探すために出掛けて行った。
先程の京の疑問。試してはいないが、単一的な効果のものなら創れるだろうと、真琴は考えている。
例えば、効果を毛根の再生に限定して、範囲は服用する量に依存させる。込める魔力の量次第で、効果の継続期間も調整が出来そうだ。
(魔法を使えば済んじゃうから、お店では必要ないんだけど……深夜番組の通販で扱ったら儲かりそう?)
(ラーメンのスープみたいに巨大な寸胴で仕込めば……いや、防腐剤とか入ってないから危ない? 食あたりみたいな、健康被害が出たら訴えられちゃうか)
(て、そもそも自分から仕事を増やしてどうするの私? 今でも忙しいんだから駄目だ駄目だ! 危ない)
(飲み物とか、私達みたいな素人が売って良いのかさえも分からないしね。あ、店のは? うん、あれは料理、お味噌汁とかスープ的な料理を差し入れしただけ、セーフセーフ……)
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