第42話

 アレンを先頭にコンラッドが生徒達の待つ教室に入った。


 全ての視線がコンラッドに向くがそれを悠々と受け止めた。


 アレンが教壇に立つと生徒に言った。


「噂では聞いていると思うが、新たなクラスができることになった。そこに選ばれた者は国の為に働いてもらう。大変な名誉だ。そのクラスの担任となってもらうのがここにいるコンラッド氏だ。俺の師匠でもある。失礼のないようにな」


 するとソフィアが不満そうに挙手した。


「アレン先生。質問いいですか?」


「なんだ?」


「先生の師匠と仰ってましたね」


「ああ」


「でもそれは十年前のことですよね。そちらの人は本当に今も強いんですか?」


 失礼な質問にアレンは眉をひそめた。そして苦笑しながらコンラッドの方を向く。


「だそうですが」


 コンラッドはやれやれと肩をすくめた。


「どうだろうな。お眼鏡にかなうかは分からないが、まあそれなりの腕は維持してるつもりだよ」


 ソフィアはコンラッドに尋ねた。


「アレン先生よりもですか?」


 今度はコンラッドがアレンを見た。


 アレンは困った笑みを浮かべる。


 コンラッドは苦笑した。


「なんなら今ここで戦ってみるか? 骨の一本も折れば認めてもらえるかな?」


「勘弁してください」


 アレンはため息をついてソフィアに言った。


「ソフィア。お前は俺を殺す気か? そんなに俺の授業はつまらなかったか?」


「べ、べつにそういう意味じゃないですけど……」


 尊敬する先生にそう言われてソフィアは動揺した。


 アレンの態度から周囲もざわつく。


 どう見てもそこらにいるおっさんにしか見えないコンラッドがアレンより強いという噂は本当だったのかと小声で話し出した。


 それを聞いたコンラッドは提案した。


「いきなりやって来て信じられないのも無理ないか。よし。天気も良いしみんなで中庭に出よう。ついでにそこで試験もやっちまおうか」


 アレンは訝しんだ。


「なにをするつもりですか?」


 コンラッドは笑って答えた。


「なあに。ちょっとした自己紹介だよ」

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