第10話 新天地②

第10話


古風な荘厳な建物が連なり、西側とは一風違った街作りになっている。これこそがニホンの伝統的な建築様式ニホン建築なのだろう。

商売はもちろんのこと、ニホンの武具である刀を使用した剣道などの文化も盛んである。


ソフィリアはアテラに連れ出され、天界の東側に位置するニホン町に訪れていた。


「ここが、ニホンですか」


「凄いだろ、ここが余の持つ民達じゃ」


ソフィリアの目に最初に入ったのは建築物ではなく刀を携帯する“サムライ”の存在だった。

仲間内で談笑している間も殺気は緩めず、いついかなる時も咄嗟な対応を出来るように刀に手をかけられていた。

そんなサムライ達にソフィリアの豊満な胸が踊る。


「アテラ様、早速ですがご紹介お願いします」


「うむ、こっちじゃな」


アテラに手招かれ、一軒の民家へと辿り着く。

先程の堂々たる建築物とは違い、なんとも小ぶりで少々年季が入っている。

アテラは躊躇わず、民家へと足を運んだ。


「むねたかぁ!余が来たぞ〜」


「珍しいこともあるものだな、そちから某に用があるとは」


アテラの声に釣られたようにのれんがまくられ、黒一色の長い髪を持った男がやってきた。

柔和な表情を浮かべているが、蒼い目の底では奥にいるソフィリアに警戒心を絶やさず、腰に携帯している刀に手をかけていた。


「初めまして、私はソフィリアと申します」


「ソフィリア…聞いたことがあるな。シードの奴らで間違いはないか?」


「滅相もございません、私はシードの側近にあたる者です」


「それは失礼した」


淡々と義務的な会話がこなされる中、男はソフィリアに敵意があるのか否かを計っていた。

話し方や仕草、感情や顔色の変化まで徹底的に模索している。

無論、ソフィリアは常に冷静さを保ち、感情より理性を最優先にさせているため顔色や感情の変化は見受けられない。

男は警戒を緩めず、再び牽制の眼差しをソフィリアに向ける。


「時にむねたかよ、刀…鈍ってないか?」


話を遮り、アテラは男の刀の方へと意識を追いやった。

すると男は顔つきが変わり刀を取り出し、目の前を横切ったはえを両断した。


「鈍ってるか、そちの目は節穴か?」


アテラとはいえ、男の神に対する扱いがかなりぞんざいである。ただ刀には雑念を払拭した洗礼された技術が垣間見えた。

ずっと一身に己を磨き続けた極地、ソフィリアは更に心を弾ませる。


「見事、余の目が狂っていたようじゃ」


乱雑な口調に立腹させることなく、アテラは友達のように和気藹々わきあいあいと接していた。

その間を次はソフィリアが遮る。


「今のではっきり致しました、貴方の力を私に貸してください」


「ほう、突拍子もない発言だが…緊迫した様子から只事ではないと読んだ」


男は刀を鞘にしまい、家の中へと入ることを促した。


ソフィリアの中で緊張が走り、アテラの中で愉悦が過ぎった。

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