引退したVがデスクトップに流れ着いてきた

川雨そう

プロローグ「さよなら」

 泡のような一年だった。


 僕が君を推していた証拠なんてどこにもなくて。

 汐見もくずというⅤtuberが活動していたと知っている人は、流行という波にのまれてしまって。

 けれども、僕の記憶には確かにある。


 君の嬉しそうな声も、楽しそうな笑顔も、豪快なくしゃみも、軽快なトークも、色あせることなく心に刻みついている。

 一年経っても、君に会える二十二時を心待ちにしている。

 本当の顔も名前も知らない君のことを忘れられないでいる。


 声を聞けなくていい。

 画面越しに会えなくていい。

 たった一言だけ伝えたいんだ。


「好き」を教えてくれて、ありがとうって。

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