ドクターとロボ

 ドクターは自分の作ったロボットにキスをした。それは何のため? ロボットは演算を開始した。大量のデータがCPUを駆け巡る。しかし、その情報をもってしても、その理由は突き止められなかった。これは、恋なのだろうか? それとも生みの親としての愛? それともまた別の愛? 問題を解決するために、次々と情報をアップデートしていくが、あまりに圧倒的な情報量だったため、ロボットはその濁流に飲み込まれしまった。CPUは同じ問答を前にグルグルといつまでも、いつまでも演算を繰り返した。そうして、ロボットは遂に、その答えに辿り着くことが出来なかった。あまり演算を高速で繰り返すものだから、三日前、ロボットはショートしてしまったのだ。ロボットの回路は焼け切れてしまった。あまりに複雑奇怪な問題を、ドクターの唇の温もりを、電気的で浮かれた高熱を、CPUに抱いてしまったから。

 次の日、ラボで冷たくなっている、というかずっと前から冷たかった彼のアルミのボディを、ドクターはその手で抱いた。彼の頭に仄かな熱を感じた。

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