終焉の姫と聖女の姫~双子の王女の数奇な運命の物語~ 【リメイク版】

にんじん太郎

双子の王女

第1話 双子の王女 パート1

 ※この作品は以前投稿していた『終焉の姫と聖女の姫』のリメイク版になります。

カクヨム運営よりリメイク版は新作として投稿しても良いとの回答がありましたので、新作として投稿することになりました。




 私は少し揺れる帆馬車の中で、女性の優しい手の温もりを感じながらスヤスヤと眠っていた。その時私はまだ生まれたばかりの赤子であるが、なぜか記憶が鮮明に残っていた。


 私は辺りが騒がしくなってきたので目を覚ます。すると先ほどまで私を抱いていた女性の姿はなく、白い仮面をつけた女性が私を抱きかかえていた。そして、その女性は私を帆馬車の床に優しく降ろす。女性の側には黒い仮面をつけた大きな男が居て2人は何か会話をしているようだが、私は言葉を理解する事はできない。

 仮面でその男の表情はわからないがとても悲しそうな雰囲気を感じた。私は咄嗟に両手を男の顔に突き出して笑顔で微笑みかける。するとその男の大きな体が小刻みに震えていた。しかし、その男は突然巨大な斧を振り上げて私のお腹を真っ二つに切り裂いたのであった。





⭐️少し時は遡ります。


 


 デンメルンク王国にて双子の姉妹が誕生した。



 「陛下、元気な双子の女の子が生まれました」


 「そうか!それは非常に喜ばしいことだ。どのような『称号』を持って生まれたのか楽しみだな」



 デンメルンク王国のロード・レーヴァンツァーン国王には3人の正妻がいた。第一王妃のアプロディーテー、第二王妃のシャリーズ、第三王妃のヴァルキリーである。双子の赤子を授かったのは第三王妃のヴァルキリーであった。



 この世界では生まれながらに『称号』という能力を授かって生まれる子供がいる。『称号』には2種類あり1種類目はレア称号である。これは、特別な能力を授かり、その『称号』に相応しい生き方をすることが求められる。


 例えば、ロード国王は『覇王』(SSランク)という『レア称号』を授かって生まれた。『覇王』の『レア称号』は王になるための資格であり、『覇王』の『レア称号』のない者は王になることはできない。ロード国王は激しい王位争いを勝ち取り王位につくことができた。



 もう1種類目の『称号』は職業的な『称号』である。『戦士』『剣士』『魔法使い』などである。この『称号』を持って生まれた者は、その『称号』に秀でた力を持っているので、『称号』を持たない者に比べると圧倒的な力を持っているのである。


 ※『称号』にはランクがある。A~Fが職業的な『称号』であり、S~SSSSが『レア称号』になる。

『称号』は『称号』ごとにランクがある。例えば『戦士』(Aランク)や『戦士』(Bランク)などである。『戦士』(Aランク)の方が『戦士』(Bランク)より能力が優れている。 

 『レア称号』はレア度のランクであり『覇王』(SSランク)はあるが『覇王』はない。(Sランク)しかし『レア称号』にはレベルがあり、『レア称号』に応じたレベル上げをすればさらなる力を得ることが出来る。



 

 「『称号』の儀は3日後に行う予定です。2人の王女様はさぞかし素晴らしい『称号』をお持ちだと思います」



 『称号』は選ばれし子のみが神様から授けられると信じられている。平民の大半は『称号』を持っていないが、王族や貴族など地位の高い者は『称号』を持って生まれる子は多い。




 双子の姉妹は、長女はアルカナ妹はディスピアと名付けられた。アルカナは光り輝く黄金の瞳をしていて、見るものを惹きつける魅力的な女の子だ。一方ディスピアは赤色の瞳をしていてどことなく不気味な雰囲気を醸し出していた。


 『称号』の鑑定ができるのは、『神の巫女』(Sランク)と呼ばれる『レア称号』を授かった者である。アルカナとディスピアはデンメルンク城の中にある教会で『神の巫女』の手によって鑑定がなされる。


 

 ⭐️3日の後の教会にて・・・



 「王女様の鑑定を行わせてもらいます」


 真っ白な修道女のような服を来た美しい女性が、デンメルンク王国にいる7人の『神の巫女』の称号を持つ1人ミカエルである。ミカエルは、最初に長女であるアルカナを教会にある神聖な六角形の台座に載せて、称号鑑定の魔法を使ってアルカナの『称号』を天井に映し出す。


・・・聖女・・・


 教会の天井に映し出されたのは『聖女』という文字であった。



 「陛下、アルカナ王女様の『称号』は『聖女』でございます。『聖女』は光魔法を使いこなす能力と神の奇跡を起こせるSSSランクの『レア称号』です。これでデンメルンク王国の安泰も決まったも同然です」


 「さすが、私の血を引く娘だ。ヴァルキリーも喜んでいるだろう」



 ロード国王はとても満足している。もし、王族の子供が『称号』なしで生まれることがあれば、それは王族の恥であり『称号』なしを産んだヴァルキリー王妃の立場も危うくなるのである。もし、王族の子供が生まれてすぐに亡くなった時は、『称号』なしで生まれたので殺されたと思っても間違いないのである。それほど王族にとって『称号』を授かることは重要なことである。



 「次はディスピアの番だな。双子だから、この子もSSSランクの『称号』持ちに違いないぞ」



 ロード国王は子供のようにはしゃぎながら言った。



 「では、ディスピア王女様を鑑定いたします」



 教会の天井に映し出された文字は・・・


 ・・・終焉妃・・・



 「・・・」



 ミカエルはディスピアの鑑定結果を見て顔が青ざめていた。そして言葉を発することができずにガクガクと震えていた。



 「しゅうえんひ???どういうことだ!」



 ロード国王は称号の意味が分からずに困惑している。



 「ミカエル、終焉妃とはどのような『称号』なのだ!」


 「それは・・・」



 ミカエルは躊躇している。



 「私が説明いたします」



 王族の『称号』の鑑定の儀は、国家の重大な機密儀式であるので参加者は決められている。参加できるのは、ロード国王、神の巫女ミカエルそして、デンメルンク王国ミレニアム教会のトップであるシンシ教皇の3人のみである。


 シンシ教皇は、『聖人』(Sランク)という『レア称号』を授かっている。シンシ教皇は聖人としての過酷な修行を乗り越えてレベル3まで到達し、その後デンメルンク王国ミレニアム教会の教皇の座まで上り詰めた男である。



 「『終焉妃』はSSSSランクの『レア称号』です。しかし、その『称号』の能力は未だ解明は出来ていません。解明が出来ていない理由は前例がほとんどないからです。私が読んだ文献によりますと、1000年前に世界を支配した大国の第2王女が『終焉妃』の『レア称号』を持って生まれたそうです。しかし、その大国は第2王女の手によって、あらゆる最先端の技術を破壊され人類の終焉が訪れたと記載されています。この文献の内容がどこまで真実なのかわかりませんが、1000年前がどのような世界だったのか記する書物が残っていないのは、第2王女の手によって全てが破壊されたためだと言われています。



 世界を支配した大国が滅亡した理由は謎であり、本当にそのような国があったのかさえ謎とされている。しかし、とある文献には『終焉妃』の『レア称号』が原因とされている。『終焉妃』の『レア称号』を授かって生まれた子が現れた時、再び世界は滅ぶとも記載されていた。



 「そ・・そんな・・・あり・えない・・・」



ロード国王は両膝をついて崩れ落ちた。そして頭を抱えて叫び出した!



 「この世界は滅ぶのか!!!そんなことは絶対にさせないぞ」



 デンメルンク王国は300年も続いてる歴史のある国である。国の大きさは中規模だが、『称号』持った人物の育成に励み大国をも退ける軍事力を持つ国なのである。



 「滅ぶと確定したわけではありません!」


 「殺せ!その呪われた子を今すぐ殺すのだ」



 ロード国王は冷静さを完全に失っていた。


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