第10話 ドスケベな女をどう思う?
朝、美海に“大人の証明”として頬にキスされた。胸が柔らかいのは周知の事実だと思うが、唇もそうだったなんて予想外だ。
自分のを触っても柔らかくないんだから、差がないと思うのは普通だろ?
俺が知らないだけで、他にも柔らかいところはあるのかな? 今日1日、空いた時間の大半をそれの思考に費やしたのだった…。
時は流れ放課後になった。昨日と同じシフトでバイトがあるので早速向かう。
「いらっしゃいませ~!」
須藤さんが入店した俺に向かって元気に挨拶してくれた。この店にはバックヤードに直接入る場所がないので、お客さんと同じように入店しなければならない。
お客さんとスタッフで挨拶を使い分けるのが面倒かつ大変なので、このスタイルが定着している。
…今まで意識した事なかったが、須藤さんの唇も柔らかそうだ。気になるな~。
「荒井君。アタシの顔に何か付いてる?」
ヤバい、見つめたせいで怪しまれてるぞ。
「そんな事ないですよ。ちょっとボーっとしちゃって…」
「それなら良いんだけど、無理しないでね。すぐ“
大ちゃんというのは、ここの店長の
この店のオープニングから店長をやっていて、同じオープニングスタッフの須藤さんと仲が良い。大ちゃんと呼ぶのが何よりの証拠だ。
あくまで噂だが、2人は付き合ってるらしい。一緒にいる2人を見れば誰しもそう思うぐらいの距離感だから、特に驚きはしない。
「万が一の事があったらお願いします」
俺はレジそばのスタッフ専用入り口からバックヤードに入る。
男子ロッカーで着替えとかの準備を終えてキッチンに向かうと、姉ちゃん1人で業務の真っ最中だ。…昨日と違ってちゃんとしてるな。
俺も出来る事を始めよう。仕込みや洗い物など、やる事はたくさんある。
「姉ちゃん、今日は問題なさそうじゃん?」
「まぁね。大地に夜這いしたおかげかな♡」
「おいおい、夜這いなんて須藤さんに聴かれたらマズいから自重してくれ」
ブラコンに加えて“変態”も追加されちゃうぞ?
「マズイ? 芽依だって店長さんに夜這いしてるらしいし問題ないわよ」
「須藤さんがしてる? あの2人同居してるの?」
「ううん。芽依は店長さんの家の合鍵を持ってるの。大学の前とか後に遊びに行った時、店長さんが寝てたらって感じ」
合鍵を持ってるなら、付き合ってるのは確定だな。
「この店で芽依と同い年なのは私だけだから、下ネタ含むいろんな事を話すわね」
俺も高校でクラスメートとそういう話をする時あるし、似たようなもんか。
「ふ~ん。けどさ、須藤さんがそんな事話すイメージないぞ?」
俺が勝手に抱いてるイメージは“元気な清楚系”だ。…矛盾してる?
「イメージなんて人それぞれだからね。私だって芽依に『ブラコンには見えないな~』って言われた事あるわ」
「そうか」
外見でブラコンと思われたら怖い気がする…。
「私は芽依を“ドスケベな女”と思ってるわ。大地はドスケベな女をどう思う?」
「答えにくい事訊くな!」
姉ちゃんの顔を見れば、どう答えて欲しいかわかるけど!
「だったら質問を変えるわね。積極的な女をどう思う?」
そう訊かれると、美海のキスが頭に浮かぶ。あの行動のおかげで女子の柔らかさを知ったんだ。なら答えは…。
「良いと思う」
「じゃあドスケベな女も良いのね♡」
「何でそうなる? 話違うだろ?」
まったく、姉ちゃんには困ったものだ…。
「さすが姉弟。仲良いね~」
須藤さんがキッチンに来た。どうしたんだろう?
「美空ちゃん。悪いんだけど、ちょっとの間ホールのヘルプお願いしても良い?」
「わかった。すぐ行くわ」
俺ではなく姉ちゃんに声をかけたか。理由については考えないでおこう。
「大地。すぐ戻ってくるからね」
「ああ…」
2人は早々にキッチンを出て行った。
1人でキッチン業務をする事は珍しくないが、姉ちゃんと話した後だと寂しさが際立つ。早く戻ってこないかな…。
って、俺は何を考えてるんだ! 子供じゃあるまいし! こんな事を姉ちゃんと美海に知られたら笑われちゃうぞ。しっかりしないと!
俺は気を取り直して業務を続けるのだった…。
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