まものもんすたー

智者猫

第1話 俺の相棒

気が付いた時には草原にいた。


直前までの記憶がない、記憶喪失というやつか?


「おーい、そこの少年。そんなところで何をやっているんじゃー?」


少年?おかしいな・・・確か年齢は、にじゅう・・・うっ頭が・・・


自分のことを思い出そうとすると頭痛がおこる。


爺さんが近くにある石を拾いながら俺のもとに来て話しかけてくる。


「モンスターもつれずにこんなところにいると危ないわい。ほらこっちに来るんじゃ」


よくわからないまま爺さんに連れていかれる。俺はいったいどうしてしまったのだ。


「この辺りでは見ない顔じゃのう。なんでこんなところに一人でいたんじゃ?モンスターもつれずに出歩いていたら下手をすると死んでしまうんじゃぞ?」


モンスター?死んでしまう?爺さんの話が理解できず、頭にハテナを浮かべたままついていく。


「ついたこの村じゃ、特に何もない村じゃがこのあたりに出るモンスターが珍しくてのう、もう長年この村に住んで研究しているんじゃ」


もう着いたのか、俺が立っていたところから目と鼻の先じゃないか。なんで俺はあんなところで立っていたのだろう。


「ここがわしの家じゃ、遠慮せずに入ってよいぞ」


爺さんが先に家の中に入ってしまう。何をしてよいかわからないためいったん爺さんについていく。


「爺さん、案内してもらったのはいいが俺は記憶喪失みたいなんだ。ここはどこなんだ?」


背中越しに俺の言葉を聞いた爺さんがピタッと止まる。悲しそうな笑顔でこちらを振り返った。


「そうじゃったのか、だからあんなところでぼーっと立っていたんじゃな・・・」


「儂はこの村でモンスターの研究をしているモーイゾ博士じゃ、何も持たずに記憶喪失じゃこれから大変じゃろう。儂のおさがりだがこれをやろう」


そういって板を渡された。


「これは?」


「それはまものモンスター図鑑じゃ。それを身に着けたまま、ステータスオープンと念じるんじゃ。そうすると今までお主が捕まえたまものモンスターの詳細が表示されるんじゃ。まずは使用者登録をしておこうかのう、少年の名前はなんじゃ?」


名前・・・?俺の名前は確か・・・うっ頭が・・・だめだ思い出そうとすると頭が痛くなる。今は思い出せないようだ。


「どうしたんじゃ?どこか痛むのか?」


「ああ・・・大丈夫だ。記憶を思い出そうとすると頭が痛くなるんだ。名前も思い出せない」


「そうか、それは難儀じゃのう。儂のほうで勝手に名前を付けさてもらっていいかのう?名前はいつでも変えられるからのう」


「そうなのか?それなら頼む」


「そうじゃな・・・マサトシなんてどうじゃ?」


まさ・・・とし・・・、ま・・・さとし・・・、まさとし・・・マサトシか、ふむ悪くない響きだ。ギリギリだが、なぜか気に入った。


「どうやら気に入ったようじゃな。まものモンスター図鑑にマサトシの使用者登録をしておいたぞ。これでその図鑑はマサトシのものじゃ」


「ところでこの図鑑があると何が便利なんだ?」


「やれやれ、そんなことも忘れてしまったのか。ほれ、そこの机の上を見てみろ。魔石が3つあるじゃろう。その中の一つをおぬしにやるから気に入ったマモモンを選ぶんじゃ」


マモモン?魔物モンスターの略か?危なく感じるが机の上に置いてある石を一つ取ってみる。


「そいつはヘビのマモモンじゃ、このあたりで捕れた珍しいマモモンじゃな、それにするか?」


「ああ、こいつにする」


どうせ記憶喪失で何もわからないんだ。一番初めに選んだやつでいいだろう。


「そしたらマモモンに名前を付けてやるんじゃ。そうすればマサトシを主と認めて戦ってくれるようになるじゃろう」


名前か・・・自分の名前を爺さんに決めてもらった直後にヘビの名前を決めなるなんておかしな話だ。


「・・・ウロボロス、そう、お前の名前はウロボロスだ」


「・・・いい名前じゃ、図鑑を見るんじゃ。マサトシのマモモンが登録されているはずじゃ」


頭の中でステータスオープンと唱えると、目の前にウロボロスの情報が表示された。


名前:ウロボロス

種族:ヘビ型モンスター

特徴:???


「マモモンは育て方次第で様々な進化を遂げるんじゃ。常に戦いをさせて戦闘型にさせるのか、日常の手伝いをさせて生活を豊かにするのか、何を食べ・何を経験し・マサトシが何を望むのか・・・マサトシがマモモンを大事にすればマモモンは必ずそれに応えてくれるだろう」

「・・・マサトシはそのマモモンと何をするんじゃ?」


俺は・・・


「記憶を取り戻す。この世界を旅して、なくなった記憶を取り戻す」


「そうじゃな、それが良い。この村を東に出ると街道にぶつかる、その道を北に向かえば辺境伯のおさめる地方都市ゴルドーシティがある。まずはそこを目指すといいじゃろう。街道に出るまでにコブリンやスライムが出るかもしれんがマモモンがいれば問題ないじゃろう。」

「・・・もしマモモンがやられてしまったら無理をせずに逃げるんじゃぞ。マモモンがいない状態で魔物と戦おうとすると・・・」


な、なんだ・・・?戦おうとするとどうなるんだ?


「・・・戦おうとするとどうなるんだ?教えてくれ」


「・・・目の前が真っ暗になるんじゃ」

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