中編

「リディ、君はすごいよ!クリスは、計算があっているかどうかしか見なかった。物価も分からない。

 だけど、君は、適正かどうかまで、見るのだな」


 ヤバい。妬みを買う。


「違うの~~~お義姉様がたたき台を作ってくれたから、わかったの~~~~私がやったことは姑の嫁いびりなの~~~」


「うん・・・難しい言葉知っているね。ガルド夫人はクリスの元で、現金の出納係を代行していた。

 信頼にかこつけて、少し、悪いことをしたら、段々、バレないからと大胆になったと分かったよ。

 孤児院も不正が発覚した。やはり、院長が不正をしていたようだ。あれも叔母だ。同族経営はよくないな」


 そうだ。孤児院長はたまにしか見なかった。

 たまに来るときは、派手なドレスと化粧をしていたな。

 シスターさんはいつも手に塗るクリームすらなくて、ひび割れしていたのに。


 プルプルプル~~


 お義姉さまは拳を握ってプルプル震えている。

 辛いけど、これを糧に頑張ってくれ。

 お金のことは妥協できない。


 結局、ガルド夫人は、嫁ぎ先に戻され、お姑さんの監視の元、厳しい生活を送っているらしい。

 この不正に関わった使用人たちは、紹介状無しで解雇、その代わり、賠償は求めない。

 仮にも貴族の印が押されているのだ。

 そして、お義姉様は、帳簿付けから離された。



「外から財産管理人を入れることにした。クリスの母、クラウディアは帳簿を他家の者にみせるのを嫌がった。こういった弊害があるのだな」


 それは、100パーセント不正をしていますって、


「お父様!私は反対ですわ。私一人で出来ます!」


 それは悪手だよ。お義姉様、会計係は、一人でやりたがる者は信用におけない。

 いつも、不安で、第三者に点検してもらいたがる小心者が最適なのだよ。


「そうだ。クリスは、そろそろ貴族学園の入試だ。帳簿をリディに任せて、受験に専念したら?」


「そんな」


「少し、休みたまえ」


「ところで、リディはどうして知っていた。まさか、転生者か?」


「違うの~~~たまたま執務室にあった本を読んでいたの~~~~」

「そうか」


 そして、私に、帳簿付けの仕事が入った。

 高度なことを教えてくれる家庭教師もつけてもらった。


 私のやり方は、


「ベッキーさん。数字見るの~~~~この数字でわかる~~~~?」


「ヒィ、ええ、ここがこうして、お金が出て、ええ、とお金の計算が合いません」


「これは、先月の繰り越しを別にしているの~~~一緒にすると混乱するの~~~」

「なるほど、それなら分かります」


 素人でも分かるように、説明できるようにして、

 財産管理人のザイムさんに、見てもらう。


 因みに、ザイムさんも、帳簿をつけて、ダブルチェックをしている。


「あれ?銅貨2枚合わないの~~~~多いの~~」

「そうですね」

「探すの~~~~」



 ☆☆☆使用人休憩室



 トントン!

「入るの~~~」


「「「ヒィ!」」」

「不正はしていませんよ!」


「先月の1日に、お使いに行ったサムに用事があるの~~~~銅貨で合わないとしたら、お使いの交通費なの~~~~」


「ヒィ!申し訳ありません。実は、駅馬車が値上げしていまして、自分のお給金から補填しました」


 ベシ!ベシ!


 手のひらで頭を軽く叩いた。


「お給金で補填しないの~~~~すぐに言うの。駅馬車の値上げと渡す現金に齟齬があったのは、こちらのミスもあるの~~~~」


「ヒィ、申し訳ございません!あれ?」


「リディをペシペシするの~~~~~」


「ヒィ、そんな恐れ多いことは・・・」


「じゃあ、お父様の前で、サムを見たら、プルプル震えるの~~~」


「ヒィ」


 ナデ~ナデ~

 何故か、ナデナデになったが、まあ、いい。


「帳簿は合わなくて当然なの~~~~銅貨2枚渡すの~~~」


 チャリン♩


「はい、確かに頂きました」


「私も間違えするの~~~~」


 日本だと交通費は後払いか?

 だけど、この世界は皆、お金をもっていないし、レシートなど発行されないから、先払いだ。

 しかも、ネットがないから値上げ情報とかすぐに入らない。

 駅馬車の値上げ情報は1日には入らなかったので、往復銅貨10枚渡した。


 その後、値上げの情報が来て、こちらの勘定に反映した。

 時間差だ。


 サムのことは忘れていたのだ。


 午前中は、家庭教師について勉強、午後はマナーとダンス、夜は、帳簿付けと、合間をぬって、お義姉様におねだりも続けた。


 こんなそんなでやっていたら、


 ついに、貴族学園入学の年になった。


「ベッキーさん。帳簿を覚えたの~~~会計係にするの~~~」

「ヒィ、嫌です!」


 さて、辞退をしよう。

 私は家を出るタイミングを見計らった。


「リディ様・・・貴族学園経営科は、卒業程度です・・・王国語、大陸共通語、数学、経理、経営基礎理論、あと、お屋敷でやった経理で、実務経験ありです。・・・

 魔法学基礎とマナーとダンスは、入学程度です」


「ありがとうなの~~~」


「平民学校の教鞭を取れる資格です。大きなお屋敷でも、家庭教師になれます。これが、証明書でございます」


「先生のおかげなの~~~~」


 そして、出ようとしたら、


「リディ、重大発表がある。正式に分家の支持が取り付けた。

 養子になれる。当主として命令する。伯爵令嬢として貴族学園に入学を命じる・・ウウウウ」


 パチパチパチパチパチ~~~~~


「「「お嬢様、おめでとうございます!」」」


 あれ、これって、


 お義姉様と、古参のメイドと使用人たちはお義姉様と固まって恨めしそうに見ている。

 数人だ。


 もしかして、私、欲しがり義妹になっている?格差姉妹だ。


 困った。


「お父様、もう母屋で暮らせません。離れに行きます」


「おおそうか。好きにしろ」


 え、お義姉様とお父様、仲が悪くなっている。


 これ、アカンやつだ。


 どうしようか。


 大丈夫だろう。時間が解決してくれる。

 お義姉様が婿を取って、家を継げば、責任感から変わるとこの時は思っていた。



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