第3話 リアクション
お姉ちゃんのアドバイスに従って、ペンケースをもうちょっとわかりやすく推しが入っているものに変えてみた。シャーペンも変えてみた。
登校してペンケースを置くときになんとなく彼に見えるように置いてみた。この距離なら気づくでしょ。そう思いながら待っていたけれど、彼から話しかけられることはなかった。
う〜ん、やっぱり気づかれなかったかぁ。次の日は消しゴムも変えてみた、また次の日は下じきも変えてみた。いろいろ変えてみたけれど彼から話しかけられることはなかった。
土曜日お姉ちゃんが休みになったときに聞いてきた。
「ねえねえ、隣の彼とはどうなったの?」
ちょっとニヤニヤした感じがいやらしいけえど、別に彼とはそういうのではない。
「だめなんだぁ。」
「えっ、だめってどういうこと?」
「全然反応ないんだよね。」
「はじめはもうちょっとわかりやすい推しのペンケースとかにシャーペンを入れたけれど気づかれなかったみたい。」
「はじめはって、今はどうなっているの?」
「ノートに消しゴムにラバストもつけていった。色々なものを推しのグッズに変えてみたよ。」
「あちゃ〜。」
「ええ〜、なんだかまずかった?」
「多すぎるよ。ちょっと落ち着いて考えてみて。ペンケースに推しがいるのに気づいた。そのあと本人見たら、上から下までみんな推しグッズで全身包まれている。こんな人に声かける?」
「かけない…。」
「でしょ〜。」
「無理なのかなぁ、話してみたいなぁ。」
「そうねぇ、まああとは機会を待つしかないかな。」
「どんな?」
「それはお姉ちゃんにだってわかりません。ただ、チャンスは逃さないことだね。」
「そっかぁ。」
私はただただ推しお話がしたいだけなのだけれど、なかなかうまくいかない。お姉ちゃんはチャンスを逃さずにって言っていたけれど、一体チャンスってどういうことなんだろう。いつか来るそのチャンスを待ちながら、推しのことを見るだけだった。
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