後ろの化け物
和音
考え事
私の後ろには化け物がいる。距離にしておよそ10m、気づいた時にはそこにいた。赤と黄の混ざった灰色の
しかし、困ったことが一つ。この化け物は私の頭からこぼれた考えを拾って喰べてしまう事がある。私はよく考え事をしながら歩く。やらなければならない事や気になる事、先ほどしていた会話など様々な事を次々に頭の中に浮かべては、こぼれ落ちていく。そして化け物が拾い喰らった考えは、自分の力では思い出せなくなってしまう。
その化け物のせいで私はよく忘れ物をする。それだけではなく誰かとの約束や覚えたことも、他人から言われるまでとんと忘れてしまうのだ。よく怒られたり呆れられたりするような人生であったし、これからもそうなのだろう。
どうしても覚えておきたい事は、頭からこぼれないように気を付けて歩くか、どこかにメモをしておくようになった。まあ、何かの拍子に溢れこぼれたり、メモを残したことさえ忘れたり、意味のないことが多いのだけれども。
最近、気のせいかもしれないが、化け物との距離が近くなっている気がする。曖昧だった境目はぼんやりとした輪郭となり、先日、とうとう人のような形だと判別するに至った。人型の何かに常に付きまとわれているこの状況は、まさにストーカー被害者のようだという考えも、数分したらこぼれ落ちて喰らわれてしまった。
とある雨の日、もはや真後ろから離れなくなった化け物と歩いていると、強い衝撃が背中に走る。私の身体から中身が飛び出し、代わりに化け物が入り込んだ。
はっきりとした
後ろの化け物 和音 @waon_IA
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