謙虚な謀略者

@HighTaka

第0話 口上

 遠いようでそう遠くもない未来のお話。人類は不愉快な労働から解き放たれた。いや、まだごく一部物好きな人達がいたのは事実であるが、大半の人類はもっとも不愉快な仕事をしなくて済むようになった。

 一つは輸送手段の革命による居住圏の爆発的な拡大。今ひとつは補則を加えた修正三原則をそなえたロボットの普及である。判断力を備え、高度なものは人間に劣らぬ思考力をそなえたそれらの普及を新しい奴隷制度の始まりと訴える者もいたが、実態はシステムであり、そうと言いきるにはむずかしいところもあった。

 人間は働かなくなったかといえばそうではなかった。人によってはこれまでと変わらず忙しく、ただ全体に少し余裕ができたくらいである。そして、過去の人間が不愉快な労働を行っていた時代を覚えているものがいなくなるにつれ、相対的にはそうたいしてかわりもしなかったのである。


 さて、物語を始めよう。


 注 作中の時間、距離などの単位系はもちろん全く別の単位系であるが、作中人物と感覚を一にするため二十一世紀地球のものに換算している。

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