第26話 お粥開始

 次男が入院して4日が経ったが、まだ何も食べられず、点滴のみで生きている状態だった。3日目にして「カレーライスが食べたい!」と言っていたのに、気の毒だ。既に医師から、

「連休中は点滴継続。月曜日からお粥行ってみよう。」

と言われたそうで、カレーライスどころではない。月曜日というのは5月2日の事で、4月27日に入院したから、5日食べずに腸を休ませるという事だ。点滴は、生きているのに最低限のエネルギーしか供給しない。割と元気で、勉強もしようかという若者に、点滴だけで過ごせというのは酷だ。痩せてしまう。

 連休中というのは、いつまでの事だろうか。まさかゴールデンウイークの前半の事ではなかろう。きっと5月3日~5日の事で、それまで点滴をしながら、徐々に食べ物を増やしていくのだろうと思った。退院は5月6日の金曜日かな、と思っていた。当初の予定よりもずいぶん長い入院になってしまうが。まあ、だからこそ、シャンプーだとか毛抜きなども持って行ってやったのだ。


 それがなんと、そのお粥を始めると言っていた5月2日月曜日の朝の事。

「問題なければ、明日の昼に退院できるかもだって!」

と、次男からLINEが来た。

 え?明日!どういう事?まだお粥も食べてないし、水も飲ませてもらっていないのに、今からそんな!

 いや待て。ぬか喜びはいかん。問題がなければ、だ。お粥を食べてみたところ、お腹が痛くなったり下痢したり、何か問題が起きればまだ退院にはならないのだ。とにかく、お粥を食べて、それから少しずつ慣らしていって、ある程度普通の物を食べられるようになってから、退院になるのだろう。そう、解釈した。

 ところが、月曜日のお昼。次男は5日ぶりに食事にありつけた。それが、ご飯はお粥なのだが、何と他に驚きのおかずが!次男から写真が送られてきた。

 大根の煮物は分かるが、まさかのハンバーグに、ミックスベジタブル!消化に悪そうなコーンが入っているではないか。しかも、デザートまである。水ようかんだから、まあお腹に悪くはなさそうだけれど。

 次男は、ボリュームがけっこうあった!と喜んでいた。当然完食だそうだ。人間、何日も物を食べていなくても、突然こんなに食べられるものなのか。急に食べたらお腹が痛くなりそうだと思っていたのに。

 そりゃそうか。肉食動物は、何日も獲物にありつけない事はある。でも……水は飲んでいるだろうに。次男は水さえも飲ませてもらえていなかったらしいが。

 けれども、歯磨きはしていたようだ。1年前、しばらく何も食べられなかったから、歯磨きをしなかったら舌に白いケバケバしたものが生えてしまってビックリだったのだ。食べていなくてもスポーツドリンクは飲んでいて、それでいて入院中の今よりも体調がひどくて、立って歯磨きなどをしている場合ではなかったのだ。返す返すも、あの時に入院していれば、1年間苦労しなくて済んだのではないかと思ってしまう。あの時も、とにかく救急車を呼べばよかったのかもしれない。躊躇して病院に電話を掛けたりしていたから、結局家にとどまる事になってしまった。いやいや、コロナ禍で医療が逼迫していたのだ。うちの子だけではない。それで命を落とした人だってたくさんいるのだ。それなりに学校にも通って部活まである程度出来ていたのだから、これで良かったと思うしかない。コロナのせいなのだ。

 因みに、夕食の写真も送ってくれた。夕食の方がヘルシーだった。お粥とお吸い物に、魚と椎茸の煮つけ、カリフラワーと人参の煮物、サツマイモのマッシュ?それからカットマンゴー。次男はきのこと魚が好きではないのに、メインが魚と椎茸とは。でも次男は、

「魚も美味しくいただきました。芋がめっちゃ美味しかった!」

と喜んでいた。ただ、お粥は塩がなくてあまり美味しくないかも……と。まあ、他におかずを食べてしまえばそうなるかな。お粥だけだったら、きっと美味しいと思うのだろうが。

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