ミス・パラレルワールド

一般マン

第1話 ミス・パラレルワールド

彼女に危機がせまる。

巨大な危機がせまる。


8時のニュースがきっかけで。


死ぬならわたしと来て

パラレルワールド体験


近い未来にあなたとまた出会う。




その時の僕には歌詞が変わって聞こえた。


一本鎗駿 (いっぱんやりしゅん) 以下、一本鎗という。

「僕の大好きな相対性理論というバンドの曲だ」


一時間後には、家を出てアルバイト先の店長にいつもの挨拶をしている頃だろう。


横浜で起こっている連続殺人事件の続報が気になり、テレビをつけた。


「まずは、国内のトピックスから。横浜で起きた連続殺人事件の速報です。

本日、この事件の5人目の被害者が見つかったとの報告がありました。

被害者は、亀井音兎さん30歳。

警察は容疑者の特定に向けて捜査を進めており、事件の背後にある動機や犯人の特徴についても詳しく調査を行っています。...」


僕はしばらく気づかなかったが、次のニュースを紹介するタイミングで思考が停止した。


近くにあったスマホで「横浜連続殺人事件 被害者 名前」と調べ、

中学生の頃好きだった亀井音兎 (かめいおと)の事を思い出した。


すべてがどうでもよくなってしまう感覚をあなたも味わった事があるだろう。

僕は今その気分だ。


アルバイト先に適当に仮病をつかい

ベッドで横になり目を瞑り、現実逃避に励んだ。


目が覚めた頃、あたりはすっかり真っ暗になっていた。

時計に目をやると5時間寝てしまっていた事に気づき

お腹がグーとなっていた。


重い体を起こして、コンビニ向かう準備をした。

コンビニに向かう道中、亀井さんの事しか考えていなかった。


僕が最後に亀井さんを見たのは大学生の頃に最寄りの駅で彼女とすれ違った。

彼女は僕に気づかなかったが僕はすぐ亀井さんだと気づいた。


声をかける勇気はなく、彼女が駅に消える姿を見送った。


当時の思い出と中学生の時に交わした会話が頭で何度もループした。

涙が出ている事に気づいたのはコンビニの向かいの信号でだった。


涙を洋服の袖で拭いて顔が上げた時に彼女(亀井さん)がいた。


彼女(亀井さん)がベビーカーを引いて、信号を待っていたのだ。


「本物...」小さくつぶやいた。


その時、信号が青に変わり彼女がこっちの向かってくる。


慌てて僕も彼女の方に歩いた。


その時、機関車の汽笛のような音が左側から聞こえた。


トラックだ。


トラックはこちらの信号が青であることを無視するように

もうスピードでこっちに向かってくる。


僕は足を止め、歩道に戻ろうとした時にある事に気づく。


彼女に似たベビーカーを引いた女性はトラックに気づいていない。


彼女はベビーカーで愚図ってる赤ん坊に夢中だ。


僕は「トラックだ!」と咄嗟に叫んだが、彼女は気づかない。


僕は彼女に向かって叫びながら走った。


彼女が気づかない腹立たしさと焦りで声が強張った。


最後に見た景色が彼女が赤ん坊を抱えて僕の顔を見て驚いていた姿だった。


僕が目が覚めて起きた時には辺りに霧が立ち込めていた。


霧の中で人の姿のように光がある方へ歩き始める。


辺りを見回して霧が濃く先が見えないので光の方へ向かった。


だんだん光が近くなるにつれ、辺りの霧が晴れてきた。


どうやら女性のようだ。杖を持ってすごくニコニコしている。


僕の好きなお天気キャスターに似ている。



「あら~、死んじゃったんですね~」


彼女はのんびりとした口調でニコニコしながら言った。


死んでしまった事を彼女の一言で知った。


「あ~あ、マジか」

最後の光景は死んだ時のだったのか。


死んだ事の虚しさと彼女達を救った喜びの感情が入り混じった複雑な心境だ。


僕はとりあえずに苦笑いしながら彼女に聞いた。


一本鎗

「ここはどこですか?あなたは?」


彼女はあっ、しまったという顔をしながら答えた。


「ここはあの世の入り口です。私はひみつの組織のものです。」


あーこれ、見たことある。


異世界行くやつだ。これ試されてるんだ。


あの世やらひみつの組織やら気になることは山ほどあるが、聞いてみよう。


一本鎗

「僕は異世界にこれから行くんですよね!?」


彼女

「えっ、いえパラレルワールドです。笑」


異世界とパラレルワールドの違いがよくわからなかったが、

「ですよねー」という返事をした。


一本鎗

「では、よろしくお願いします。」


彼女

「はい!」

の一言が聞こえたあたりで彼女から放たれている光が空間全体から放たれて眩しかった。


一本鎗

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」















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