護りぎつねの散歩道
碧月 葉
会津旅行の朝
【プロローグ】
「キモチワルイ……。ごめん……無理。取り敢えず午前中は動けない……寝てる」
美味しいからって日本酒をあんなにガブガブ飲むからだよ。
新撰組好きの友人の付き添いで、2泊3日の会津旅行にやってきた。
ところが旅行2日目の朝、肝心の友人は二日酔いで完全にダウンしている。
困ったな。
予定では街の中心部を巡るはずだった。
友人は「齋藤組長のお墓参りだ!」って、超張り切っていたのに……。
復活するまでの半日をホテルでダラダラ潰すのも勿体ないよね。
さて、どうしようか。
私は友人のように歴女ではないけれど、スイーツ店やカフェを巡るのは好きだ。
SNSで検索すると、オシャレな和カフェの抹茶スイーツ、大正レトロなカフェの懐かし系プリン、紅茶店のふわふわワッフル……そそられる画像がたくさん出てきた。
朝ごはんをしっかり食べたばかりだから、ほどほどのがいいな。
えーっと、このホテルから観光名所「鶴ヶ城」までは徒歩15分か。
ふぅん、茶室では抹茶を頂けるらしい。
趣きのある場所で、朝からお抹茶……というのもオツかもしれない。
よし決めた。天気も良いことだし散歩がてら行ってみよう。
表に出ると、空には柔らかいタッチのすじ雲が浮かんでいた。
そんな視界の端に影が入り込む。
最近、黒い煤のようなものが見えるようになったんだよね。
友人は「飛蚊症」だっていうけど、少しずつ広がっている気がする……コレは帰ったら眼科かな。
まあ、気の滅入る事は一旦忘れて旅行を楽しみますか。
道沿いにはスタイリッシュなオフィスビルの他、趣深い蔵づくりの酒屋さんや菓子屋さんがあって街の伝統と今とが感じられた。
お城に到着すると、茶室「
麟閣は、茅葺き屋根、 板葺きの庇という素朴な草庵風の茶室だった。
これが侘び寂び?
私は優しい甘さの薯蕷饅頭を味わい、立ててもらった抹茶を啜った。
お茶を堪能した後は折角なので散策してみた。
近くの石階段を登り、月見櫓跡などをぐるっと見て回る。
木が多いからか鳥の声が賑やかだ。
ふと目の前を黒い生き物が横切った。
犬?
黒猫は縁起が良くないっていうけれど、犬はどうなのかな?
そんな風に考えていると……。
「ねぇキミ、ちょっといい?」
ハッとするほど綺麗な男の人が声をかけてきた。
驚きと恥ずかしさから、私は聞こえなふりをして通り過ぎようとした。
「わ、待ってよ」
彼は、間違いなく私に声をかけてきている。
これって……人生初のナンパ?
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