乙女の尿意
かとうすすむ
第1話 本文
来た。
奈津子は、それ以前から、予感はしていたが、こんなに早く来るとは予想していなかった。そこで、ギュッと強く電車の吊り革の輪を握り締める。しかし、そんなもので奈津子の身体に激しく襲い来る、ぞくぞくするような感覚に勝てるわけがない。相手は身体である。たぶん、朝に飲んだ2杯のミルクのなせる技であろう。しかし、そんなことはどうでもよかった。
尿意である。
最初のうちは、モゾモゾと身体をくねらせて、何とか時間を稼いでいた。それで、次の駅に着けば、急いでトイレに駆け込めばいいのよ。そう思っていた。しかし、身体は奈津子に容赦なく間断ない勢いで、奈津子に放尿を迫ってくる。なんとかなる。落ち着け、奈津子。と、自分に強く言い聞かせるが、波のように尿意は勢いを増してくる。
「だ、だめ。いけない‥‥‥‥」
と、自分でも予期せぬ言葉が、つい口を突いて出たのを、奈津子の真正面にいた若い会社員風の男が耳にしてしまった。
「どうかなさいましたか?お嬢さん」
と、男は不思議そうに奈津子の顔を覗き込んできた。
「い、いきそう‥‥‥‥‥」
そう言って、奈津子は色っぽく腰をくねらせて、男に拗ねるような焦るような熱い視線で見上げてくるのである。これでは、男が勘違いしないわけがない。男は驚いた。そして、しばらく考えてから、男は声を落として言った。
「そんなに僕のことが?弱ったなあ。でもね、こういうことは、お互いによく相手のことを理解してからでないとね。でも、君は‥‥‥‥‥」
「は、早く、あたしをトイレで‥‥‥」
「そ、そうなんだね。君の禁断の欲情はそこまで来てるんだ。トイレでいいから、僕に、してほしいんだね。弱ったなあ」
弱っているのは奈津子の方である。もう、尿意は限界寸前まで来ていた。
「あたし、もう、駄目」
「わかった。君の気持ちはよく理解できるよ。僕も男だ。次の駅で降りて、二人でホテルに向かおうじゃないか?それでいい?」
それどころじゃない。奈津子は、尿意から来る焦りと男に対する怒りの念の合い混ざったような複雑な表情であったが、それが男には淫靡な表情に見えたのだろう。男が言った。
「でも、君も好きなんだね、男として分かるよ」
「このバカ男!」
ついに、奈津子は大勢の人で混雑する朝の通勤電車の中にも関わらずに、大声で叫んでしまった。そばにいた周りの者たちが勢いよく振り向いてきた。
それが、ついに奈津子の身体を変化させた。大声を上げたことが、奈津子の腹直筋を刺激して、一気に身体はダランと弛緩していまい、それまで緊張していた糸がプツンと切れてしまったように、奈津子は放尿し始めた。
奈津子の股間の尿道口からほとばしり出た尿液は、奈津子のピンクのパンティーを濡らし、薄いストッキングを濡らして、奈津子の白い太ももの内側をタラタラと流れ落ちていく。そして流れ落ちていく尿液は、黄色い水溜まりとなって、電車の床の上で楕円形に広がっていく。大勢の者たちが、それを注目していた。もう手遅れである。
駅に到着した。
「あー、スッとしたわ!」
と、奈津子は、大声を張り上げて、尿液でボトボトになったパンティーとストッキングを、電車に吹き込んでくる突風に吹きさらして、威風堂々と降車していくのであった‥‥‥‥‥‥。
乙女の尿意 かとうすすむ @susumukato
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