第20話 勇者


 俺たちはいま31階層に挑んでいる。

 2人にとっては楽なもんだろうから俺が一人で狩っている。

 31階層はゴシックゴーレム!よくあるemeth(真理)という字が刻まれた泥人形であり、「e」の一文字を消すとmeth(死)となり消えてしまうので簡単なんだが、大きいな。ドロップは土だ?これも何かに使えるかもしれないので持って帰るしか無いよな。


 32階層はストーンゴーレム、こいつは核を持っていて魔法で壊して核を斬る。ドロップは石だ。

 33階層はアイアンゴーレム!コイツはダガーより弱い金属なので引き裂き核を壊す。

 ドロップは鉄、もういいよ。

 34階層はメタルゴーレム、やっと大物が来たかと思ったが魔法で壊して核を斬れば消える。ドロップは玉鋼、これは刀鍛冶の人にどうだったか聞かないとな。


 で。35階層のボス部屋はミスリルゴーレム !繋ぎ目を斬ってもまた繋がるし魔法の効きも悪いので炎舞で溶かして核を斬ると倒せた。

 ドロップはもちろんミスリルのインゴットだった。宝箱からはミスリルのインゴットが三つに金貨が35枚入っていた。


 流石に1人でここはキツいなと思いながらボードに手を当てて三人で一階層に戻る。

「実に見事じゃったよ」

「完璧」

「あはは、ありがとう」

 で。受付に別室を用意されて今野さんが来る。

「今日は凄いからね」

「本当ですか!」

「まず土!」

「え?」

 しょうがないので説明すると調べてみると言って持って行った。

 まだあるんだがな。

 戻ってきたらすいませんと良い次のやつを出す。石だ。そして鉄!

 これもゴーレムの素材だと言うと調べると言ってくれた。

「次はまだわからないが玉鋼だ」

「え!本物ですか?」

「一応刀鍛冶の人に調べてもらってるけどどうかなぁ?」

「すぐ連絡してみてください!」

 連絡すると玉鋼はもうないのかと言われあると言うと売ってくれと言ってきたので本物なのかと聞いたら多分本物らしい。

 それを聞いた今野さんは嬉しくて飛び上がりそうだったが最後にニヤリとして出したミスリルのインゴット!

 これには今野さんも喜んでくれた!

 俺はもういらないから4本とも卸してあげる。


「あとは今日のマッピングだね」

「ありがとうございます」

「いや、役に立てて嬉しいよ」

 ギルドの売店には俺がドロップしたものが飾られていたり売られているからミスリルなんて出したら驚愕…とまではいかないか、新宿ギルドにも卸したしな。


 帰りはミスドに寄って甘いものを買ってみると2人とも感銘を受けたように味わいながら食べている。甘いものが少なかったんだろう。

 しかし、この2人がいるってことは他にもきているルバリオル大陸の人がいるってことだがなぜかそう言う話は聞かないな?なぜだ?

 やはり俺みたいに可哀想で匿ってあげてるのかもしれないな。


 夜はリビングでみんなでテレビを見ていると勇者と言う人物が映っていた。

「こやつじゃ!こやつが我の国を」

 どうやらご本人登場らしい。

 しかし、ダンジョンから出てきたのは勇者1人だったらしく他の仲間と逸れてしまったと言うことだった。

 まぁ、そのうち会うことがあるかもしれないから気をつけよう。


 35階層から階段を降りるとまだダンジョン型が続いている。俺らは手分けをしながらマッピングしている。36階層のモンスターはレッドアイだったのでもしかしたらまた同じかもしれないな。


 37階層はブルーアイ、やはり同じだろう。ここも、同じようにマッピングして来ると雷魔法を使う音がしたので行ってみると、サーシャが怒っていた。

「さぁ。立て!立つのじゃ!」

「どうしたんだよ?そんなに怒って!」

「こやつは勇者の仲間じゃ」

 そこには鎧を着た金髪の大男がいた。

「くそ、魔王を復活させたのはお前か!」

「いや、普通に魔王って王様のことだろ?なぜあんなことをしたんだ?」

 男は俺を見て何を言ってるんだと言う顔をしている。

「魔物の王だろ?」

「違う普通の魔法国家の王様だろ?」

「う、うそだ!俺たちは全てを賭けて戦ったのが王様だと?魔王は魔王だろ!」

「いやだから魔法国家の王様で魔王な?わかるか?」

 挙動不審になっているとこ悪いがコイツは洗脳でもされていたのか?

「じゃあ。私が殺したのはただの市民なのか?」

「だから言っておるじゃろう!市民を殺し我も幽閉し、何が勇者だ!恥を知れ!」

「そ、そんな。そんなことが許されるか!俺は勇者の1人だ!」

「はぁ。まじめんどくさいやつだな?騙されたのか知らないけど罪は償えよ!」

「知らん!俺は国を魔王の手から守った勇者だ!」

「サンダーランス!!」

「ごはっ!が!お、おれは」

 勇者の1人は倒れるまで勇者だったのかも知れないが、真実を受け入れることもできたはずだ。

「済まぬな。我のために」

「知らないけどサーシャは悪くないんだからしょうがないだろ?」

「そうね」

「2人とも、ありがとう」

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