1000年前、行方不明になった陰陽師を探しています。
青色絵の具
第1話 陰陽師行方不明になる
平安の都、
あの、安倍晴明の遠い親戚であり、彼に継ぐ実力の持ち主だと持て囃されたこともある。
しかし、晴忠には、致命的な欠点があった。
彼は、不運体質で、絶望的な方向音痴だった。
陰陽師としての力は一流でも、その不運さから、全て裏目に出てしまう。
簡単な、あやかし退治の依頼を受ければ、大物を引っ張り出してしまい、安倍晴明と共闘して、ようやく鎮めた事もあった。
先日も、一週間鬼界から戻ってこず、式神として契約している朱雀は、心配で夜も眠れなかった。
仕方なく、安倍晴明に協力を頼もうかと思ったとき、けろっとした顔で戻ってきて、新しい鬼の式を、傍らに携えていた。
朱雀は、その呑気な姿に腸が煮えくり返る思いだった。
そんな事が連日続き、その日もいつも通り、晴忠は、あやかし退治の依頼を受けた。
「それじゃあ、行ってくるね。朱雀、留守は頼んだよ。」
「晴忠、本当に同行しなくて大丈夫か?」
「平気だよ。今回こそは、本当に大した事無い依頼なんだ。それに、いざとなったら、呼びだせるだろ?」
「まぁ、そうだけどな。お前は、色々規格外だから。」
「心配性だな~。もう行くよ。」
そう言って、晴忠が家を出て1000年の月日が流れた。
まだ、彼は家に帰ってこない。
懐かしい夢を見た。
まだ、主がそばにいた頃の夢。
いくら探してもみつからない、あれから悠久の時が過ぎた。
きっと、もう主は戻ってこないのだろう。
10年探した時点で、気付いていた。
でも、諦めきれず、長い月日がたった。
あの、主ならひょっこり帰ってくるのではないかと、何度思ったことか。
仲間達は、一人また一人と去っていった。
残されたのは、私一人。
擦りきれそうな心を抱え、これを最後にしようと受けた、下らない依頼。
まさか、それが運命を替える事になろうとは、思いもよらなかった。
1000年前、行方不明になった陰陽師を探しています。 青色絵の具 @Mana2023
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