無人島に女2人だけ

ろんろん

第1話 カモメとイルカ

肌に焼き付く紫外線、ポタポタと落ちる汗。


ぼんやりと考えているようで何も考えてはいない。

ただその場で立ちすくむだけ。

私は穏やかな波と、その先の地平線に見入る。


「諦めが悪いね…暑いでしょ?」


ゾンビのように無気力な私は、やる気のない声に反応して視線を向ける。


日陰で膝を抱えて座るもう1人の女は、イルカ。

汗が頬から顎へと滑り落ちているが、太陽に晒されている私よりかは、マシに見える。



「なんでそんなに冷静なわけ!もう3日目なんだよ!」


「4日目じゃないっけ?」



「『……あ”あ”ぁぁ!!』」


ゾンビは膝から崩れ落ち、叫ぶ。







私は船旅を楽しんでいたが、突然の嵐に遭遇した。

数百人が乗っていた大型船は、案外、簡単に、ひっくり返った。



まさかの転覆。


気がついたときには、砂浜に打ち上げられていた。


周りを見回しても、家も道路も人工物もない。無人島に流れ着いたのだ。

不安と恐怖が心を襲う。声を出そうとするが、喉からは微かな嗚咽しか出ない。

次第に押し寄せてくる不安と恐怖。



『起きた?これ、食べる?』


雑木林の中からどこか抜けた喋り方をした女が出てきた。

女の両手には木の実や、見たことない小さな果物らしき物がたくさんあった。

暫く女の両手を見つめてから、黙って1つ手に取って口に運ぶ。また1つ手に取り、口へ。また1つ。


また嗚咽から始まり、泣き叫ぶ。


状況を少しだけ理解した。


生きてる。助かる?人がいる。遭難した?

理解した分だけ涙を流す。




『…ぁりがと…私カモメって言います…』


口にまた1つ。



2人は家族でも、友人でもない。



無人島に女2人だけ

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