洞窟の奥で



 洞窟に入って行ったクロノはとあることに気づいた。あれほど狭い入口にしてはやけに中が広かったのだ。

 とは言っても洞窟なんてものは千差万別なので大したことでは無いと思い引き続き奥へと進んで行った。


「それにしてもこんな広い洞窟がよく今まで見つかってなかったなぁ。

 しかもモンスターも全くいないし…こころなしか体感温度もなんかちょうどいいような。洞窟ってだいぶ寒いって聞いたんだけど。

 もしかしてここは洞窟じゃなくてダンジョンだったりするのか?」


 クロノがそう思うのも無理は無い。


 ダンジョンというのは非常に特殊な存在となっており、中へと入って貰えるような様々な工夫がある。

 例えば、金銀財宝や魔剣などの宝物や不自然に存在するセーフゾーン。広いダンジョンの場合は飽きさせないように階層ごとに変わる環境など様々だ。


 しかし、そんなダンジョンにしても今クロノがいる洞窟はだいぶ特殊だと言える。

 なぜならダンジョンならモンスターが絶対に存在しているからだ。


 ダンジョンは訪れる者にとっては脅威でもあるのだ。その最大の要因はモンスターの多さであるからである。

 また、一定以上の大きさのダンジョンにおいては必ずボスモンスターが存在しており、これらの理由からダンジョンはどんなに得られるものが多くとも入るには一定以上の強さを持った人物のみが挑もうとする。


 しかし、クロノがいる場所は仮にダンジョンだとしたらありえない状態なのだ。

 そのため、クロノも疑問に思っているというわけだ。


 そんな疑問を持ちつつも今のところ危険が来ないクロノは少しずつ洞窟の奥へと進んで行った。


 ――――――――――――――――――――


 しばらく進んでいくと目の前に大きな扉が現れた。

 どう考えても1人の力じゃ動きはしないだろう。


「すごいでかい扉だな〜。

 でも扉があるっていうことはやっぱりここはダンジョンなのか?にしては平和すぎるけどな。


 ん?あそこになんか文字が書いてあるんだけどなんだあれ?」


 クロノは扉の横に書いてある文字に気がついた。

 文字は今の書体とは少し違うがクロノでも読めるくらいにはくっきりと書かれていた。


 そこにはこう書いてあった。

 『封印されし魔剣に辿り着きしものよ。貴様には資格がある。これから訪れる困難を乗り越える覚悟があるなら扉を押すといい。』


 現代風に訳すとこんな感じである。


 これを読んだクロノはと言うと…


「封印された魔剣だって!!カッコよすぎだろうが!

 やっぱりあれなのか!神々の剣だったりするのか!

 いや〜楽しみだな〜。一体どんな魔剣なんだろうな。出来れば切れ味がいい魔剣だといいなぁ。うん。


 …でも覚悟か。まぁ資格があるって言ってくれてるしやっぱり気になるんだよな。そもそも冒険者になった時点で覚悟は決まってるようなもんだしな。


 やらない後悔よりやる後悔だ!」


 クロノは少し悩んだが長年憧れた魔剣があるという事で扉を押すことに決めた。


 扉は思ったよりも力を入れずに押して開けることが出来た。

 中には台座の上に1本の魔剣が刺さっている以外には何も無かった。


「うぉ!いかにもな魔剣があるなぁ。台座に刺さってるって言うのが何とも言えない雰囲気を醸し出してるよな。

 流石にここまで入れて資格があるとまで言われてるんだから抜けないことは無いよな…大丈夫だよな?」


 クロノは恐る恐るその台座へと歩いていく。


 そして台座へとたどり着いたさっそくクロノは台座に刺さっている魔剣を抜いたのだ。


「これが魔剣か!

 なんだか力がみなぎってくるような気が…思ったよりしないな。やっぱ封印されてたってことはすごい魔剣なんだから俺自身も強くならないとダメってことだよな。

 とりあえず早くこの洞窟を出てどんな能力なのか試してみないとな。」


 魔剣を手に入れたクロノは魔剣オタクの性が出たのか早々に洞窟から出て魔剣の性能を確かめようとすることにした。


 洞窟の外に出たクロノは早速魔剣を鑑定することにした。


 『朽ちた剣ナナシ

 ・長い間封印されたことにより朽ちてしまい本来の力が消えてしまった魔剣。それでも普通の剣よりは切れ味がある。


「うっそだろおい!

 封印時間が長すぎて能力が消えた魔剣なんてありかよ!

 あんなにすごい感じであったのに切れ味のいいだけの魔剣ってありかよ…」


 これにはクロノもガッカリであった。

 せっかく夢にまでみていた魔剣があまりのガッカリ性能だったのだ。

 しかし、しかしだ。切れ味がいいということは普通の剣としては優秀な剣とも言える。

 現在のクロノは剣が買えなくて困っているわけでそう考えるとこの魔剣も当たりではないか。


 クロノもそう思ったのか、


「でも切れ味はいいらしいし魔剣なんだから多少の修復機能はあるだろうから普通の剣よりは断然ましだよな。しかも無料で手に入ったし。

 とりあえずちゃんとした魔剣が手に入るまではこの魔剣でダンジョンとか行こうかな。」


 そう考えたクロノは引き続き日が暮れるまで手に入れた魔剣を使いスライム狩りをすることにしたのだった。


 ――――――――――――――――――――


 補足

 

 クロノの見た目

 黒髪黒目のこの世界でありふれた髪色。

 顔は中性的ながらしっかりと男のような雰囲気が出ている。(某二刀流の方みたいな感じ)

 身長はまだ成長期なのか少し低め。

 性格は真面目で好奇心は多め。特に自分の好きな魔剣の事となるとすごい興味を示す。

 そのため魔剣の知識は結構豊富。


 ――――――――――――――――――――


 良ければ星一でもいいので評価をしていただけるとありがたいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る