第3話 友との約束

「そういえばゆうなとエリナは天慶学院へは行くの?」


 お茶会も終盤に差し掛かってきたところで玲奈がそんなことを聞いてきた。


「うん、今のところ入学するつもりだよ」


「私もそのつもりです。」


 私立天慶学院。日本の中でも有名な名門校でその歴史は長く代々政治家や大企業の社長などの優秀な人物を輩出している。そのため毎年かなりの人数が受験しに来るが受かるのはほんの一握りらしい。


 まさにエリート中のエリートが何人もいるとんでもない高校ということだ。


 かくいう私も両親に勧められて受験することになっている。


「よかった、私とりなも天慶学院を受けるつもりなの。無事受かることができればいっしょに学校へいけるわね」


「れいな……」


 私と玲奈はそれぞれが日本五大企業である鳳条グループと如月グループの令嬢。故に私達は同じ学校には通えない。一つの小学校や中学校に二人もいてはいい存在ではないからだ。


 だが天慶学院は別だ。あそこはあらゆる家柄の人たちや権力者達の子息たちが集まる場所。私と玲奈が同時に在籍していても変に思われないはずだ。


「だってあなたたちは私の数少ないとのだちなんですもの。私はあなたたちと一緒に学生生活を送って見たい。だから約束しましょう、ここにいる皆で天慶学院に必ず合格すると。」


 天慶学院はそう簡単に行けるものではない。合格するには並々ならぬ努力が必要だ。


 だがそれでも親友からのとても可愛いお願いを断れる理由がどこにあろうか。


「うん、もちろんだよ一緒に通おう。」


「私ももともとその予定です。」


「ありがと、私は本当にいい友人達を持ったわね。」


 それは私も同じだ。こんなにも可愛くて優しい友人達と出会たことに私はすごく感謝している。


「ところでりな、あなたは大丈夫なんですか?」


「んー? わかんなーい」


「あなたという人は……ゆうなさまとのやくそくを反故にするなど許しませんよ」


「うぅ……れいなさまー! エリナがいじめてくるー!」


「はいはい、もういつまで立っても甘えん坊なんだから」


 里奈を抱きしめ慰める玲奈はまるで手のかかる妹を世話するお姉ちゃんのようで見ていてとてもほっこりする。


 もしかしたら私とエリナもこんな距離感がいいのかもしれない。実際小さい頃からずっといるし姉妹みたいなものだしね。


 よしそうと決まれば試してみよう。


「エリナ」


「どうさましたたか? ゆうなさま……」


「いらっしゃい」


 私が自分の膝をポンポンと叩いて合図するとエリナは数秒思考停止したように固まってから意味を理解したのか一気に顔が真っ赤になった。


 あれ? ちょっと恥ずかしかったかな?

確かに同い年に膝枕されるのはちょっと恥ずかしいかも。


「ごめんね恥ずかしかったよね」


「い、いえ! そうではなく! で、ではお邪魔させていただいてもよろしいでしょうか?」


「ど、どうぞ」


「失礼します。」


 エリナは少し緊張しつつも嬉しそうに私の膝に頭を乗せた。


 膝枕なんて初めてしたけどこれであってたかな?


「どう? 首とか苦しくない?」


「……極上の気分です」


「そ、そっかならよかった。」


 そんなに私の膝枕よかったかな? まぁ何がともあれ気に入ってくれてよかった。


 私はそっと優しくエリナの髪に触れる。サラサラで糸のような銀髪は普段から手入れをしていることがよくわかる。


 それに肌も白くハリがありとても綺麗だ。


「綺麗だね……私はエリナの髪と肌が好きだよ」


「ゆ、ゆうなさま……」


「ねぇちょっとここあなた達の家じゃないんだけど?」


 玲奈の声は完全に二人の世界に入ってしまっている二人にはとどかなかった。


 


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