ショートストーリー

月乃糸

先輩、私のこと好きですよね

「ねぇ先輩、私のこと好きですよね?」


 部活で他の人がいない部屋に後輩と移ると、いきなりこんなことを言われた。


 はっきり言ってわがままで生意気な後輩だが、実力は俺より上のため何も言い返さずに宥めていた。


 そんな後輩にいきなり言われると、『なぜ?』という3文字が頭の中に浮かんだ。一度聞いてみようか。


「だって練習の時だって私のことチラチラ見てるし私がミスっても怒らないし多少生意気言っても許してくれる。こんなの優しい通り越して好きじゃないですか?」


 そんなことない。ただ年下の女子が怖くて怒れなかっただけだ。


「私、今フリーなんで付き合ってあげてもいいですよ?」


 何か勘違いしているこの後輩を、どうやさしく…


 いや、もう無意味だろう。ここまで勘違いをしているなら優しく断ったところでゴリ押してくる。ここはいっそ、正直な言葉で伝えよう。









「え、先輩、嘘ですよね?」


 本当だ


「そんな、先輩も冗談きついですよ。彼女さんがいるならそう、言ってくれた方が」


 後輩は震えながら言う。だが、残念ながら彼女もいないし本当のことしか言っていない


「ちょっと、待ってください。わ、たしは先輩っが…」


 涙が溢れている後輩を、俺はどうすることもできなかった。


「わたし…には先、輩が、必要でぇ、、、見捨てない、で…ください」


 なにか、ゾクゾクっと感じた。これが興奮によるものか忌避感によるものかはいまだにわからない。


「先輩…奴隷にでもっ、性の吐口でもっ、なんでもいいので」


 付き合ってください。


 散々俺にわがままを通し生意気を言ってきたのに何を言っているんだ。


「先輩っ…ねぇ、先輩」


 見捨てないでください

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