第3話 遊び人さん、魅了しちゃってください!
「あのー、まだですかねぇ?」
「うるさい! 黙って待っておれ!」
痺れを切らして丁寧に問うてみるが、ムカつくやつだな。
もう殺してもいいんじゃないか?
「遊び人! 魔王を魅了して時間を稼いでくれ!」
「はぁ〜い、魔王ちゃんどう? 楽しいことしなぁ〜い?」
遊び人がそのだらしのない体を座り直し、一見セクシーな人魚座りになる。
うん、キツいこれはキツいぞ、ある意味破壊力がある?
「そんなムスーってしないでさ、ほらぁ――チュッ」
魅了の投げキッスが飛んでくる。
たまにはこういうお婆さんのセクシーさもいいかも知れない……どんどん目が離せなくなって、この人の虜に――。
「なるわけないだろ!」
ウエッ! めっちゃ吐きそうだ、なんだあの不快感の塊は!?
ウインクなんてするな、シワが目立つだろう! ほらまた化粧にヒビが入ったじゃないか。
「えっ? 酷い、私泣いちゃうわよ?」
あまりの嘔気に我輩が思わず口元に手をやると遊び人が涙目になってしまう。
一丁前にプライドがあるようだ、ならばもうちょっと努力してほしい。
「遊び人が泣いてしまったじゃないか! 失礼だろう! 女心のわからぬ鬼畜魔王!」
「そうじゃぞ、魔王。女性を泣かすのはダメじゃ!」
遊び人がしくしくと手で目を覆うと勇者と魔法使いの罵声が飛んでくる。
なんなんだコイツらは。
「ええい! うるさい! 《睡眠魔法》!」
「――ほえ?」
あれ? ムカついて睡眠魔法を放ったらみんな眠ってしまった。
「どうするんですか? もう起きないかもしれませんよ?」
悪魔神官が呆れた表情をしてきた。
え? 嘘? これで終わりなの?
「いやいや、それはないだろう」
悪魔神官の冗談に笑って答えるが、悪魔神官は嘘ではないと笑みのない目でこちらに向く。
「え、本当に起きないのか?」
「わかりませんが、可能性は十分にありますね」
言うに老いた人はいつ眠ったまま逝ってしまうかわからないということらしい。
「そもそもあいつらに眠り耐性すらないのがおかしいだろう、勇者と勇者の仲間だぞ? 良い装備ぐらい身につけているものだろう」
「あれが良い装備に見えますか?」
「むぐぐ……」
悪魔神官が指差す、確かに全く良い装備に見えん。
勇者の鎧は光沢がなく錆ているし、魔法使いのローブも洗っていないのか己の皮膚の様にシワシワだ。
盗賊と遊び人に関してはあれは何だ、何の効果もないただのコスプレセットじゃないか。
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