【短編】異世界転移
零
前編
俺は
「大変申し訳ございません!まさかうっかり神罰を放ってしまうとは...。さらにそこに人がいるなんて」
「いえいえ。気にしないでください。故意でないなら仕方ないことです」
頭を下げてきた彼に俺はすぐにそう言った。確かにもう死んじゃうとは思ってなかったけど、早いか遅いかの違いだけだからね。今更どうこう言ってもしょうがないよ。
「...そうか。じゃあ、これからの望みはありますか?可能なことならなんでも協力させていただきます」
「望み、ですか?そうですね...では、生き返ることは無理ですかね?」
「地球には残念ながら戻せませんが、別の世界なら記憶を残したまま送り出すことができます。地球にも輪廻転生という形でなら可能ですが、記憶などは引き継がれません」
...やっぱり地球には無理だったか。このまま0から生まれ変わってもいいけど、せっかくなら俺のままで異世界に行くのも楽しそうだね。
「分かりました。では、別の世界でお願いします」
「了解しました。では、せめてものお詫びとしてあなたに力を。少しでも幸せに暮らせるように祈っています。...まぁ、普段は祈りを聞く側なんですけどね」
そう言って神様は自虐的に笑った。そして、俺の中に暖かいものが流れ込んできた。
「...じゃあ、もうそろそろお別れかな?元気でね」
「あの!最後に一つだけいいですか?」
「はい。どうぞ」
「あなたのお名前は?」
「私はカグラ。よろしくね、和希さん」
「はい!カグラさん。また、いつか」
「はい、また」
その言葉を最後に俺の視界は白く染まった。そして次の瞬間には大きな木の根元に立っていた。
「...ここが、異世界?」
『カグラから手紙が届いています。』
「うわっ!...て、手紙?」
俺が一歩踏み出そうとしたタイミングで目の前に半透明の板みたいなのが出現した。そこから文字が浮かび上がっていた。驚いて大声を出しちゃったけど、誰にも聞かれてなくて良かった。
『拝啓
この度は私の落ち度によりご不便をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。お詫びの能力について説明させていただきます。
まず、ステータスなどは念じることで確認することができます。ここは変更できなかったので、私の加護を最大限にかけさせていただきました。
次に、特殊能力としてポイントを自由に振り分けることができるようにさせていただきました。このポイントは人の役に立ったりすると増加します。ポイントによって死後に天国か地獄かが決定するのでこちらも私の力ではどうしようもありませんでした。なので、私は現在の和希さんの保有ポイントを把握していません。まぁ、沢山の人を助けていたあなたなら大丈夫だと思いますが。
あと、そちらの世界には魔物が存在しています。ポイントを効率的に貯めるなら、それらを討伐するのが良いと思います。
最後に、その世界を楽しんでください。応援しています。
敬具』
カグラさんからの手紙にはそう書かれていた。俺は早速ステータスを見たいと念じた。すると、さっきと同じような半透明の板が出現した。
『カズキ=シンドウ
体力 30
魔力 20
攻撃力 15
防御力 15
抵抗力 20
素早さ 15
幸運 10
保有ポイント ∞
スキル
・ポイント振り分け lvーー
称号
加護
・カグラ(最高神)の全力の加護 lvーー』
「...えっ?」
ポイント∞?いくらでも使えるってこと?流石にそこまでじゃない、よね?...と、とりあえずスキルっていうやつを使ってみよう。これも念じるだけなのかな?
『ポイント振り分けを発動。取得可能な一覧を表示します。
・体力+10
・魔力+10 SP 1
・攻撃力+10 SP 1
・防御力+10 SP 1
・抵抗力+10 SP 1
・素早さ+10 SP 1
・幸運+10 SP 1
・強化解除』
...あ、あぁ。なるほど。ステータスしか強化できないんだね。なら、どれでも変わらないのか。とりあえず、全部を1000回ずつ強化するかな?
『強化が実行されました。
・体力→1,0030
・魔力→1,0020
・攻撃力→1,0015
・防御力→1,0015
・抵抗力→1,0020
・素早さ→1,0015
・幸運→1,0010
・保有ポイント ∞
条件を満たしたことにより、新しい称号を獲得しました。また、新しく取得できるようになったスキルがあります』
それが完了したらものすごい力が体の内側から溢れてきたように感じた。一種の万能感や全能感があるけど、これはカグラさんから貰ったものだから、傲慢にならないようにしないと!
「?新しい称号に、スキル?ちょっと確認してみよっかな?」
『新しい称号
・超人類
・
・世界最強
新しく取得可能な一覧
・身体強化 SP 1
・剣術 SP 1
・短剣術 SP 1
・格闘術 SP 1
・槍術 SP 1
・弓術 SP 1
・棍棒術 SP 1
・杖術 SP 1
・鞭術 SP 1
・斧術 SP 1
・盾術 SP 1
・火魔術 SP 1
・水魔術 SP 1
・光魔術 SP 1
・闇魔術 SP 1
・古代魔術 SP 1
...』
「いや、多い多い!」
余りの多さにうんざりした俺は途中で見るのを辞めた。まだ100倍くらいのスキルがずらっと並んでいるみたいだった。
「...まぁ、とりあえず全部取っておくかな?」
俺がそう呟くと、さっきと同じように力が溢れてきた。それに、自分の感覚が鋭くなったような気がした。
『強化が実行されました。
・身体強化 lv.1 etc
・保有ポイント ∞
条件を満たしたことにより、新しい称号を獲得しました。また、新しく取得できるようになったスキルがあります』
また!?...全部取得する!でも、いちいちやるのは面倒くさいな。次からは勝手に取得するようにならないかな?
『保有ポイントが0になるまで自動で強化するようにしました。強化が実行されました』
...お、終わった?じゃあ、自分の能力でも確認しようかな?俺がそう思うとステータス画面が表示された。...これも見慣れてきたな。
『カズキ=シンドウ
体力 ∞
魔力 ∞
攻撃力 ∞
防御力 ∞
抵抗力 ∞
素早さ ∞
幸運 ∞
保有ポイント ∞
スキル▶︎
称号▶︎
加護
・自身(最高神)の究極の加護 lvーー
・カグラ(最高神)の全力の加護 lvーー』
「あれ?ステータス一桁...はっ!?」
そこに表示されていたステータスは頭おかしいとしか思えないものだった。スキルや称号が纏まって見やすくなったけど、全部∞って。
「...よし!異世界を楽しむぞ!」
しばらく呆けていたけど気を取り直した俺はステータスを見なかったことにした。
「よし!せっかく異世界に来たんだし、とりあえず移動するかな?...でも、どこに行こう?」
目の前に広がるのは広大な草原。はるか先まで続いているんじゃないかと思うほど何もなかった。
『地図を表示します』
そうしてすごく正確な地図が出てきた。...相変わらず便利と言うか、ご都合主義と言うか。
それによると、どうやら今いるのはラグエルという国みたいだった。けど、ラグエルか。どんなところなんだろう?
『ラグエル
・人口 5,3728人
・面積 43,5332k㎡
貿易が盛んで、どの国のものも大体が揃っている。暮らしている種族も様々で、表向きは共存している。
しかし、少しでも裏に入れば違法なものが沢山ある。お金さえあればどんなモノでも買えるのが特徴的。
六大国の中で最も経済が発展していて、他国からは必要悪とされている』
どんなモノでも、か。例えばどんなのがあるの?
『呪いのかかった装備品や副作用の大きい薬、暗殺者に奴隷などがあります。どんなモノでも売れるのがラグエルなので、他国よりも質が良くなりやすいです』
...なるほど。だから、必要悪なのか。まぁ、とりあえず自分で見に行くか。俺がそう決意した直後、
「きゃ!」
そんな悲鳴が聞こえたような気がした。小さな声だったけど、ステータスが大幅に上がった影響かはっきりと分かった。俺は慌てて声の聞こえてきた方に向かった。
「くそっ!全部コイツのせいか!魔王の娘なら高く売れると思ったのにスライムどもが湧いてくるなんて!...もういい、コイツを囮にして逃げるぞ!」
俺が現場に到着したときには小さな女の子に向かって剣を振り上げた2mくらいの大男だった。それが振り下ろされる直前、間に滑り込むことで彼女を庇った。
パキンッ!
「...はっ?」
その剣が触れた瞬間に折れた。真ん中辺りからポッキリと折れた剣を見て呆けているのは大男だった。俺も多少の痛みは覚悟したけど、全く衝撃が無かった。これがステータス∞の効果か...。
「...っと、大丈夫?怪我してない?」
俺はしゃがみ込んでいる女の子にそう聞いた。交差した真っ赤な瞳には涙が浮かんでいた。
「も、もしかしてどこか痛むの!?」
俺が言うと、彼女はブンブンと首を振った。そのときにショートカットのピンク色の髪が広がった。
「そっか。良かった。...じゃあ、後は...」
ひとまず彼女に怪我がないみたいなことに安堵した俺はさっき剣を振り下ろしていた男の人たちの方を振り返った。俺の中ではこの人たちが悪いと思ってるけど、流石に一方的に決めつけるのは違うからね。俺はあくまでも部外者で、一部始終を見てたわけじゃないから。
「ひっ、ば、化け物だ!!逃げろ!!!」
...そう思ったのに、目が合った瞬間に走り去っていった。追いかけても余裕で間に合うけど、そこまでする理由もないかな?
「最後はこの魔物を何とかするかな?」
俺は今にも襲いかかってきそうな50㎝くらいの高さの汚物のようなものを見た。ゴミの塊みたいなそいつに一応の鑑定を使ってみた。実際に使ったことは無いし、あるのかも分からないけど、やっぱり異世界の魔法の定番だよね!
『スライム
強さ ザコ
スキル
・攻撃軽減 lv.3
・自動修復 lv.3
・軟体 lv.5
称号
加護
』
やっぱりできた!...けど、見れる情報は少ないんだね。
『詳細も確認できます。確認しますか?』
あっ、そうか。使えるか分からなかったから、一応って思ったんだっけ?まぁ、スライムなんでしょ?それにザコ。ならいいかな。
けど、どうやって倒そうかな?触るのは嫌だし、武器も無いし。ここは魔法しかないよね!...けど、どうやって使うんだろう?
『魔法はイメージするだけで使えます』
あっ、そうなんだ。イメージ、か。火は臭くなりそうだし、風と水は飛び散りそう。...よし。ここは氷に閉じ込めるか!
俺がイメージしようとしたその瞬間、スライムが動き出した。明らかに毒があるだろと思わせるような黒に近い紫色の液体が腐卵臭を纏って向かってきた。それも、腕の中にいる女の子に向かって。
「...グッ」
「!お兄ちゃん、大丈夫!?どうしよう、私のせいで...」
思わず俺はその攻撃を手を差し込むことで女の子に当たらないようにした。そしてその液体に触れた直後、俺の手に激痛が走った。火傷したような感覚に、思わず声が漏れてしまった。...心配、かけちゃったな。
『警告
毒状態になりました。早めに治すことを推奨します』
俺は何とか痛みに耐えながらイメージを固めた。ここで治療してもきっとまた毒攻撃がくるし、それなら先に元凶を倒した方がいいと思った。
俺が手をスライムの方に向けた。すると、スライムは氷に包まれた。そしてそのまま動かなくなった。
『初の魔物退治が完了しました。
報酬として保有ポイントが+5000されます。...エラー。失敗しました。代替措置として全ステータスが+5000されます。...エラー。失敗しました。更なる代替措置を申請しています。...成功しました。代替措置として世界創造権が付与されました』
はっ?世界創造権?何それ、美味しいの?
『世界創造権
新しい世界を創り出すことができる権利。これで世界を立派に造ることで名実共に神となる』
...よし!何も見なかったことにしよう。それより今はくっついてきてる女の子をどうにかしないと。それに、毒の治療もしないとだね。まずは簡単な毒の方からやっちゃうか。
毒よ、治れ。そう念じると急速に身体の調子が元に戻った。
『毒耐性無効無効を入手しました。また、毒無効と毒耐性無効無効が統合され、毒回復になりました』
...毒回復?
『毒回復
毒状態になった場合に体力が回復する』
...これってポ◯モンのポ◯ズンヒ◯ル?
『毒回復です』
いや、でも...。
『毒回復です』
...はい。
さて、残る問題は...
「お兄ちゃん!グスッ、死んじゃやだ!お願い!生きて!アリアを独りにしないで!グスッ、神様でも悪魔でもなんでもいい!お兄ちゃんを、助けてよ!」
...毒状態になったときもここまで辛くは無かったんだけどな。女の子の涙はあんな攻撃よりもずっと心に響く。
「俺なら大丈夫だよ。ちゃんと生きてる」
俺はなるべく優しく女の子の頭を撫でた。すごくサラサラしてて癖になりそうだった。
「...ホント?無理、してない?」
「うん。ホント。そんなことより君が無事で良かったよ」
俺は心からそう思った。胸の中にいるこの子をちゃんと守れたから。
「...アリア」
「えっ?」
「名前。君、じゃやだ」
「そっか。アリアちゃんか。俺はカズキ。よろしくね」
「カズキお兄ちゃん。...うん。ちゃんと覚えた。よろしく!」
俺たちはまだ自己紹介もしてなかったんだ。遅すぎる自己紹介を終わらせた俺たちは更に強く抱き合っていた。
...いや、抱きしめられていた。やっぱり、怖かったんだよね。
「カズキお兄ちゃんはどうしてアリアを助けてくれたの?」
「?困ってる人は放っておけないでしょ?」
その瞬間、アリアの身体がビクッと跳ねた。そしてゆっくりと離れていった。アレ?何か答えを間違えた!?
「...そっか。なら、ごめんなさい。アリアは、人じゃないから」
そう言ったアリアちゃんの頭からは大きくて円を描くようにカーブしている角が生えていた。
離れたアリアちゃんはとても悲しそうだった。それでも、俺にはどうしてなのか分からなかった。...分からないなら聞けばいい。何が嫌だったのか。そう思って俺はゆっくりとアリアちゃんの方へ近づいていった。
「ごめん。何がいけないのか分からないんだ。教えて、くれる?」
あっさりと彼女の元に辿り着いた俺はアリアちゃんを抱きしめてそう言った。そのときの彼女は少し震えていた。俺は知らないうちにアリアちゃんを傷つけていたのかな?
「...だ、だって!!アリアは魔族で、人じゃない、から。それなのに、カズキお兄ちゃんを傷つけちゃった。...アリアさえ、居なければよかったのに!!」
...ああ、そうか。アリアちゃんは優しいんだ。だから周りを考えすぎて独りになっちゃう。せめて俺は彼女の支えになりたい。感情をぶつけて貰えるような。だから!
「そんなこと言わないで!俺はアリアちゃんを助けられて良かったと思ってるよ!...だから、さ。アリアちゃんも自分に自信を持ってよ。それこそ、助けたのが無駄になっちゃうからね」
俺が自分の本音を伝えるんだ。ちゃんと届くと信じて。
「や、めて!アリアは、アリアは...。アリアの大切は、もう、いらない。失うのが怖い!だったら、もう何もいらない!!」
「そんな悲しいことを言わないでよ。俺はもうアリアちゃんが居なくなると悲しいよ」
「でも!...どうしようもなく怖いの。アリアの大好きだったママはもう居ない。こんな、アリアに厳しい世界で生きる希望なんて、何もない」
俺に何かしてあげられることなんてあるのかな?俺は、家族を残してきちゃった方だから。俺なんかの言葉が真逆のアリアちゃんに届くのかな?
「明日なんていらない!命なんて必要ない!...アリアはただ、ママとずっと静かに暮らしていたかった。それは、わがままなの?」
「そんなことない!アリアちゃんの願いはわがままなんかじゃ絶対にない!」
それから無言の時間がしばらく流れた。強く抱きついている体勢のまま。平均的な身長の俺の胸あたりまでしかない小さな身体で、一体どれだけの悲しみを抱えているんだろうか?
「...ありがとう。もう落ち着いたから大丈夫だよ」
そう言ってアリアちゃんは一歩下がった。けど、それは拒絶じゃない。そのまま俺の目を真っ直ぐに見つめていた。
「そっか。アリアちゃんが大丈夫になったならよかった」
「うん。でも、まだ少し不安だから...カズキお兄ちゃんがアリアの生きる希望になってくれませんか?」
緊張からか、真っ赤な瞳は潤んでいて、頬もほんのりと赤く染まっていた。それでも交わった視線はそのままだった。
「うん。もちろんいいよ。こんな俺でいいならね」
俺にはそう答えることしかできなかった。せめてアリアちゃんが家に帰れるまではずっと一緒に居よう。
「〜ッ!うん、ありがとう、カズキお兄ちゃん!!」
そのときのとびきりの笑顔を俺は一生忘れないだろう。俺はそう思った。きっとアリアちゃんの家に着いたら離れ離れになるだろうけど、それまでこの笑顔を一番近くで眺めていたいと思った。
俺たちはアリアちゃんの故郷であるサリエルまでの道のりを進んでいた。そのときにアリアちゃんから簡単にどんな場所なのか聞いていた。もちろん、調べれば詳しく分かるだろうけど、それはしなかった。
「アリアは国が、優しいみんながいるサリエルが好き」
「...そっか。じゃあ、着いたら案内してほしいな。アリアちゃんが大好きな国を」
「うん!」
本当に好きなんだということが分かるくらいの笑顔だった。...俺はどうなんだろう?故郷に、日本にそこまでの誇りを持てるのかな?
「じゃあ、国の王様。魔王様ってどんな人なの?」
俺がそう聞くとアリアちゃんの雰囲気が変わった。聞いちゃいけないことだったのかな?
「...魔王様はアリアの、父親だって言われた。...ママが死んじゃって悲しかったときに魔王様がアリアの前に来た。そしてアリアは城に連れていかれた。そこからの生活は今までと全く違った。みんながアリアに遠慮してきた。...ううん。誰も"アリア"なんて知らない。魔王様の娘、それだけでしかなかった。ママと一緒だった頃のアリアはだんだん居なくなった。アリアはママと一緒にお散歩するのが好きだった。ママに怒られて、でも許して頭を撫でてくれるのが好きだった。ママの笑った顔が好きだった。そんなアリアはもう居ない。
魔王様はアリアと全く話してくれない。きっとアリアが酷いこと言っちゃったから。初めて会ったときに、どうして一緒にいてくれなかったの?って。いきなり父親だってなっても、アリアは受け入れられなかったの。
だから、アリアはすぐに城を飛び出した。そしたら捕まって奴隷にされそうなところをカズキお兄ちゃんが助けてくれたの」
「...そっか。じゃあ、アリアちゃんは国に着いたらどうするの?」
俺はアリアちゃんに励ましの言葉をかけてあげることはできなかった。俺にはアリアちゃんの気持ちは分からないから。父さんも母さんもいる、当たり前の暮らしをしていた俺なんかじゃ。
「...アリアの居場所はもうカズキお兄ちゃんの隣だけだよ?だから、アリアはカズキお兄ちゃんについて行く!」
...えっ?俺についてくるって?いやいやいや!?アリアちゃんってお姫様なんだよね?流石にそれは...。まぁ、魔王様に会ってから決めればいっか。
「...分かった。けど、魔王様も心配するんじゃない?」
「...してくれる訳ないよ」
アリアちゃんはそう言っていた。けど、やっぱり親なら心配するはずだよね。すれ違っているだけだと思う。なら、ちゃんと向き合わせてあげないと。
「ならさ、こんなのはどう?
......」
「...うん、分かった。カズキお兄ちゃんがそう言うなら。けど、結果は変わらないと思うよ」
俺は一つの案をアリアちゃんに提案した。俺の考えが正しければ、絶対に良い結果になるはずだよ。
それから俺たちはサリエルに向けて歩いていった。転移魔法もあったけど、それは一度行った場所じゃないと使えないみたいだった。それに、ほとんどの国の首都は転移魔法が使えない結界があるみたいだった。それはアリアちゃんの故郷のサリエルでも例外ではなく、歩いて向かうしかないみたいだった。
それから一月くらいゆっくり歩いてサリエルに向かった。何度か魔物に襲われたけど俺の魔法で一撃だった。夜も眠気のなくなった俺が周囲の警戒をしていた。街に着いたときも俺だけは外で野宿していたし、アリアちゃんとは何も無かったことは明言しておこう。...アリアちゃんは少し不満そうだったけど、俺にはアリアちゃんと一緒に寝る度胸も宿に泊まるためのお金も無かったからな。
...そして、ついに魔王様が治めるサリエルに到着した。ここから首都オーダバルまでは2日ほどかかるみたいだ。アリアちゃんは少し緊張しているのか口数が少なくなってきていた。
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