日常に溶け込む “違和感”―11

時刻的にもより賑わいを強める繫華街。

仕事や学業を終えて帰路に付く人々の賑わいが

街の活気へと繋がっており、日常の生活を感じさせる。

そんな街中に1ついや2つの巨大ロボットが鎮座していた。

1つは専用のキャリアトレーラーの荷台に寝かされており、

もう1つは棒立ちの様に思える直立ではあるがその威容さには存在感を

抱かせている。

デザインもさることだがどこか安心感を感じさせているのもあるかもしれない。

その機体はカシマ重工製ワークスレイヴン【ピースキーパー】

国産として開発された初の警察警備部門専用のWLである。

その機体の隣にある指揮車の中で中島ケンと小早川ミユキが小休憩していた。


小早川「はい、中島クン」

中島「お、サンキュー」


手渡された缶コーヒーを開けて一口飲む。

微糖の甘さと苦味が疲れた身体を癒していく。

中島は車のシートに深く身体を沈めると同時に疲れを吐き出す様に息を出す。


ミユキ:「疲れた?」

ケン:「ン?ああ、だが機体に乗っているアイツラと比べればこっちはまだ楽な

方さ」


中島はサングラス越しではあるが車内の窓越しに映る【ピースキーパー】1号機を

見る。

続く様に見るミユキは確かに、と合意の頷きをした。


ミユキ:「あの子のバイタリティもあるとはいえ、今何時だっけ?」

ケン:「16:30。あと30分で撤収だな」


ミユキの問いにケンが腕時計を見ながら答える。

彼らが街中に出動しているのは交通キャンペーンの一環であり、

同時に【ピースキーパー】の導入と実働のテストも兼ねたものだ。

機体の搬入が行われたのが今年の4月頃とまだ比較的に稼動データ収集も

できるということで課長と隊長の2つ返事で行われることになった。


ケン;「隊長はともかく、課長もまさかGOサインを簡単に出すとはな・・・」

ミユキ:「アピールとかを兼ねたのかもしれないわね・・・私的にはそういうの

抜きにして【あの子】の良さを知って欲しいけどね」


再度、【ピースキーパー】を見やる。


ケン:「しかし、【レイヴン】かぁ・・・ちょっと前まではこんなのが存在するとは

考えもしなかったぜ・・・」

ミユキ:「そうね、第1世代はだいぶ前から出てたけども10年未満でここまでの

技術になっているのは凄いとしか言い様がないのは確かね」


レイヴンという人型機械はここ数年で急速に発展と普及を果たしていた。

軍事用の【アームズレイヴン】はまだそこまでではないが一般的には

【ワークスレイヴン】の方が割合的にも多い。

その発展などには些か疑問や謎といった部分もない訳ではなく、

どこか作為的なモノもない訳ではないがそれらも単純に憶測の域を出ないの事実だ。

ネットでもそういった陰謀論などがまことしやかに書き込まれていたりするが

大体はホラ話として流されているジョークの類となっている。

違和感もないだけではないが日常にも不思議と馴染み、溶け込んでいるというのが現実である。


ケン:「まあ、レイヴンを用いた犯罪だなんだ起きてないのが幸いだなぁ」

ミユキ:「システムのセキュリティ上、作為的にやらない限りは誰彼簡単には操作できない様になっているからね。ハッキングするにしても作業用のWLを暴れさせる

理由が特にないし」

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