短編の本棚

すぱとーどすぱどぅ

バレンタインの奇跡

 毎年バレンタインデーが近づくと、小さな町は特別な賑わいを見せる。


 今年もまた、町の中心にある小さなチョコレートショップ「ハートフル・スイーツ」の前には、特別なチョコレートを求める人々の列ができていた。


 ショップのオーナー、エマは、毎年バレンタインデーに合わせて、限定のハンドメイドチョコレートを作り出す。


 彼女の作るチョコレートには、受け取った人々が幸せになるという噂が町じゅうに広がっていた。


「今年も素敵なチョコレートをありがとうございます、エマさん」


 ある常連客が嬉しそうに言う。


 エマもそれに笑顔で応えた。


「皆さんに喜んでいただけるよう、心を込めて作りました」



 しかし、エマには心の中に秘めた想いがあった。


 彼女はずっと前から、幼なじみのレオに秘めた恋心を抱えていたのだ。


 レオは町で人気のカフェ「コージーコーナー」を経営しており、エマとは長い間、友人以上恋人未満の関係が続いていた。


 今年のバレンタインデーに、エマはついにレオに自分の気持ちを伝える決心をした。


 彼女は、レオのためだけに特別なチョコレートを作り、それに自分の想いを込めた手紙を添えることにしたのだ。


 しかし、当日、エマが勇気を出してカフェを訪れると、レオの姿はなかった。


 店のスタッフによると、レオは急用で町外へ出かけてしまったという。


 失望したエマは、レオへのプレゼントをカフェに置いて帰ろうとしたその時、ふとした思い付きで手紙を書き換えることにした。


『レオへ。いつものように、あなたの笑顔を見ることができなくて残念です。

 でも、私たちはいつでも心で繋がっていると信じています。これは、私からあなたへの気持ちが込められたチョコレートです。エマより』


 その夜、レオは急用から戻り、カフェに残されたエマのプレゼントを見つけた。


 チョコレートを一口食べた瞬間、彼の心はエマの温かい気持ちで満たされた。


 そして、手紙を読んで、エマへの自分の気持ちに気づいたレオは、すぐに彼女のもとへと走り出した。


 エマの家の前で、レオは息を切らしてエマに告げた。


「エマ、君の作ったチョコレートが、僕に勇気をくれたよ。僕も君のことが…ずっと好きだったんだ」


 驚きと喜びで目を輝かせたエマは、レオに抱きしめられながら、二人の未来に思いを馳せた。


 バレンタインデーの夜は、二人にとって忘れられない奇跡の始まりとなったにだった。


 

おしまい。

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