魔法職(最後の神様)
グイ・ネクスト
第1話 魔法職《さいごのかみさま》の仕事
イチカ・リィズ・アナスタシア。その名前を呼び上げるだけで、全ての種族が平伏する。
イチカは目覚める。金に輝く髪、虹色の目、白い長袖を下に、赤いワンピースを上に着ている。イチカが上半身を起こすと、赤い不死鳥が、イチカの頭上に着地する。着地と同時に赤い帽子に姿を変える。イチカは膝を曲げて、身体を右に捻って、回転するように四つん這いになってからゆっくりと立ち上がる。
立ち上がった足元に四色の花が咲き始める。花はどんどん増えていく。
イチカは目を細めて半眼になる。目の前に小鬼、ゴブリンと呼ばれる魔物がやってくる。「イチカ様、おはようございます。カードを引く時間でございます」と、ゴブリンは45枚もあるカードを見せる。カードの表紙には黒い翼の天使が描かれていて、じっとこちらを見つめているようだ。イチカは「混ぜて」と、ゴブリンに依頼する。ゴブリンは「頼まれました」と、カードを混ぜていく。「ストップ。じゃあ、上から三番目のカードをちょうだい」と、イチカはいう。ゴブリンは三番目のカードをそっとイチカに渡す。カードをめくると、33番。全てを明らかにするドレス。と、書かれてある。
「恐れを手放す時なのだわ。私、お母様がお腹を壊して…私が助けなくてはならないって自分を責めていた事があるの。でも、お母様は自分で食べたいものを食べて、自分で寝床に入られて…そのまま私は仕事に行くのだけど、お母様は大丈夫なのかしらって。ずっと心は囚われたままだった。でもね。そういう時は、導きたまえ。そう、唱えるの。お母様の事が心配になった時は必ず、導きたまえ。そう、唱え続けるの。すると心は今を見ようとしてくれるわ。そして結果的に心は答えをちゃんと用意してくれるの。お母様の笑顔で、人生を楽しんで過ごしている姿が心に浮かんだわ。私の魂の色は黄色。そこに黒を混ぜることでもう一人の私(潜在意識、集合意識、阿頼耶識)オリーブ色に辿り着く。そうやって心はイメージをひらめきを与えてくれた。ゴブロウタ、ありがとう」と、イチカはゴブロウタに微笑む。ゴブリンのゴブロウタは白い光に包まれる。ゴブロウタは黒い燕尾服を手に入れた。「ありがたき、幸せ」と、ゴブロウタは片膝をついて跪く。
「ゴブロウタ、クロちゃんを呼んで」と、イチカはゴブロウタに頭を下げる。
「はっ。仰せのままに」と、黒い燕尾服をきたゴブロウタは小走りに走って去っていく。それをイチカは半眼のまま見つめている。妖精たちがダンスを始めた。赤、黄色、青、紫、緑。それぞれの妖精がそれぞれの踊りでイチカを歓迎している。ダンスは黒い狼の出現で終焉を告げる。
「クロちゃん」と、イチカは言う。
「おはよう、イチカ。どうした?いつのもサイコロか」と、クロちゃんと呼ばれた黒い狼は普通に会話を始めた。
「うん。サイコロを振りたいなって」
「今日は五つでいいのか?」
「うん。それでいいわ。」と、イチカが言い終わると…五つの魔法陣がイチカとクロちゃんを囲むように現れる。魔法陣からはサイコロが現れた。
「さあ、行くわよ」と、イチカの声に合わせて、サイコロは回転を始める。
出目は六、五、五、一、一。
「隠された数字は四という事で…つまり、扉は開かれた。」
【天界の扉が開かれました】
雷を司る神が現れた。「こんにちはっていやぁいいか」と、横柄な態度をとっている。「ええ、いいわよ。それでどうしたの?落とす場所を相談に来たの?」
「落とす場所はもう決まっている。浄化するためのポイントを俺っちが間違うわけねぇ。それよりもいいのか?そこから動かなくて」
「あーうん。そうねぇ、動くと妖精たちを騒がしてしまうけど…そろそろ動いてもいいかしら。クロちゃんも一緒だし。」
「?ブラックフェンリル様?え?あれ?えっとあなた様は?」
「あら、私を知らない。イチカ・リィズ・アナスタシアよ」
雷を司る神は地面まで降りてきて頭を下げた。
「いいの、いいの。気にしないで。さあ、それじゃ動くわよ。クロちゃん、行こ」と、イチカとクロちゃんは歩き出した。
四色の花が咲いていく。妖精たちが後をついていく。精霊たちが環境を整える。
イチカのためだけに。
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