第二十四話 6か月ぶりのレベルアップ

 アルフィアたちによる補助の下、《転移拠点ワープ・ポータル》を設置出来た俺は、1週間ほど第894階層で戦い続けて、ある程度の探索と魔物の出現傾向を調べた。

 その結果、ここは第893階層よりも僅かに広く、そして出てくる魔物はほぼ変わらない……といった感じだった。

 まあ、大方予想通りの結果であったため、特に驚きは無い。

 数も、気持ち増えたかな程度だったしな。


「後は……レベルも上がったな」


 そんな中、一番の成果と言えば、約6か月ぶりのレベルアップだ。

 これにより、俺のレベルは1025となった。

 それで上がるステータス値は、平均15程度だが……これを何十回何百回と繰り返していくと、それは大きなものとなる。


「ただ、6か月……か。やはり、段々と長くなってきているな」


 最初は、1日で何度もレベルアップをしていたが、気づけば数日に1回、1週間に1回、1か月に1回と頻度が落ちていき、気づけば6か月――半年となっていた。

 だが、これはそういうものなんだ。

 1を80にするよりも、80を100にする方が難しいと言われるように、極め続けたからこその宿命。

 故に文句は一切言わず、今後もただひたすらにレベルを上げていくのみだ。


「さて、じゃあ帰ろうか。【座標を繋げ――《範囲空間転移エリア・ワープ》】」


 そうして俺は転移魔法を唱え、第894階層から、拠点のある第600階層へと飛ぶのであった。


「わふ~~~。マスター! ルルム、マスターの為に頑張ったぁ~~!」


 すると、安全な場所へ戻って来た瞬間、ルルムが俺の腰に抱き着いてきた。

 そして、腹に顔を埋めてからガバッと顔を上げて俺を上目遣いで見ると、そんな事を言って来る。

 確かにルルムには、今日は――いや、今日も戦闘補助としての面で、色々と助かった。ここに居る4人の中で、明確にルルムにしか出来ない動きというのがあるからだと常々思う。


「ああ、頑張ったな。ありがとう、ルルム」


 だから、俺はそう言ってルルムの背中に手を回すと、そこを優しく擦る様に撫でてあげた。すると、「むにゅ~~~」と、気持ちよさそうな声をルルムは漏らす。

 すると、前方から大きめの咳払いが聞こえて来た。

 アルフィアだ。


「……どうした? アルフィア」


 俺は引き続きルルムの背中を撫でながら、視線をアルフィアの方に向けると、反射的にそんな問いを投げかける。

 すると、アルフィアは何とも不満そうな顔をしながら、口を開いた。


「なんか……確かに、妾は褒められる事をそこまで好むタイプではないのじゃが、それでもこう、見せつけられると、なんだか……複雑というか、何と言うか……」


 そう言って、アルフィアは口籠る。

 ああ……また、やりすぎてしまったか。

 甘えん坊なルルムと、大人な感じのアルフィア。

 そんな、性格の異なる2人への対応は、そりゃどうしても異なって来てしまう。

 だが、アルフィアは時たまこんな感じでルルムに嫉妬……とまでは行かないが、複雑な感情を抱いてしまうのだ。


「なら、ルルムみたいにすればいいのに」


 そう言って、俺はそっとルルムから離れ、アルフィアの下へと歩み寄ろうとする。


「む、そんな事言われても……流石にそれは、なんか……そう。恥ずかし――」


 俺の言葉に、目に見えて狼狽するアルフィア――だが、俺はアルフィアが言葉を全て言い切るよりも先に、アルフィアの下まで来ると、アルフィアの背中に手を回した。

 そして、ルルムよりも軽い感じで抱き締める。


「いつもありがとな、アルフィア。何だかんだ、精神的にも戦闘的にも、純粋に頼りになるのはアルフィアだ」


 俺が精神的にキツかった時、アルフィアはいち早く気づき寄り添ってくれた。

 そして、純粋な素のステータスは、アルフィアがぶっちぎりで高い。故に、純粋に頼りになる。


「む、う……は、恥ずかしいのじゃ。ご主人様よ……な、なんか変わったかの? い、今までよりも、何かが違うような……」


 すると、案の定頬を赤く染めて、全力で照れるアルフィア。

 稀にしか見れない表情で、新鮮だ。

 それにしても、何かが変わった……か。

 自覚は全くないな……ただ、地上へ行くようになり、生活が一気に変わったから、それが関係しているんじゃないかと思う。


「……もう少し、このままでいて欲しいか?」


 俺は、背後からルルムに抱き着かれる感覚を覚えながらも、アルフィアの耳元でそのような問いを投げかけた。すると、ピクリと身体を震わせたアルフィアが、狼狽し声を上げる。


「も、もういいのじゃ! ……い、いや……でも……も、も、もう……」


「ど、どっちなんだ……」


 止めて欲しいのか止めて欲しくないのか、どっちなのかと思いつつも、まあ嫌がっている様子は無さそうだし、離れるまでこうしとくか。

 そう思った俺は、引き続きアルフィアを抱きしめ続けるのであった。


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こういうの、いいよなぁ……

恋心なのか、恋心ではないのか……それは、作者にも分からない。

……あと、ちょっと投稿遅れてすみません。

そのシーンに、謎に時間が掛かりました(笑)

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