第五十話 その後はどうなったか
その後、俺は美玲に言われ、《
「貴方は……第二級探索者の青梨美玲さんですね。こちらで激しい戦闘音が聞こえてきたと、通報がありまして……何があったのでしょうか?」
なるほど。最初に美玲と美月の戦闘音を聞いてた奴が、こいつはやべぇって感じで、警察に通報していたのか。
これは何とも間が良い。
すると、警察の前に立つ美鈴が、口を開いた。
「はい。先ほどここで”魔滅会”の幹部と戦闘をし、撃破しました。そこに座っている彼女がそうです」
「そうですか……おい! 至急そこの女を捕らえろ!」
美玲の言葉に、警察官は頷くと、一斉に座り込んでいる美月を取り押さえにかかった。
一方美月は、そんな警察官に対し、「抵抗しないから、もうちょっと丁寧に扱いなさいよ……」と愚痴を零していたが、その言葉通り特に抵抗は無く、すんなりと上級探索者用の護送車に乗せられた。
その間、警察官たちは美月の顔を見て、美鈴と瓜二つである事に驚きの表情を見せてはいたが、それについて言及するような事は無かった。
そうして色々と終わった所で、美玲は口を開いた。
「……大翔。私の事、どう思う?」
「どう……とは?」
美玲が発した言葉の真意が分からず、俺はそう言って首を傾げた。
すると、美鈴は言葉を続ける。
「私……”魔滅会”でずっと生きてきたの。色々な人に、迷惑を掛けた。そして、今はそれを隠してダンジョン配信者なんてやってる……。大翔はそんな人、嫌いじゃない?」
「ああ、それか……」
なんだ。何を心配しているかと思えばそんな事か。
別に、俺以外の人間に迷惑を掛ける分には、正直な所どうでもいいんだよね。
それに、隠し事が駄目だと言うのなら、俺も駄目だという事になるだろうに。
「……別に、嫌いだとは思わない。別に俺を害している訳では無いからな。俺がそういう存在だという事は、もう分かるだろ?」
「そう、ですね……」
俺の言葉に、美玲は俯きながらそう言った。
そんな美玲に、俺は続けてこんな事を言う。
「……美玲は配信者活動を通して、多くの人を楽しませてきた。美玲は、人間たちから必要とされている人間なんだよ。だから、あまり悩むな。自分の進んできた道を、後悔するな。悩んで悩んでどうしようも無かったら、ダンジョンで暴れろ。殺し合え。そうすれば、どうでも良くなるから」
落ち込む人間に、どんな言葉を掛ければ良いのか、俺は知らない。
だから、俺は自分なりの励ましの言葉をかけてやった。
何も取り繕わず、俺の経験談を添えて――
すると、美玲は何故か笑った。
「ふふっ ……大翔さんらしいです」
「……なんで笑うんだよ」
笑う要素なんてどこにもないだろと思いながら、俺はぼそりとツッコミを入れた。
だが……何故だろうか。
不思議と、悪い気がしない。
以前なら、何故笑うんだと警戒心強めに聞いたと思うのに……
「これは、いい変化なのだろうか」
気付けば、俺はぼそりとそんな言葉を零していた。
すると、美玲が口を開く。
「いい変化だと思いますよ。人として、人の思いを知るのは、大事ですから」
「……そうか」
脈絡も無く紡いだ言葉で、良く意図が分かったなと感心しながら、俺は短くそう呟いた。
「……気配的に、どうやら”魔滅会”は全員死亡なり逮捕なりされたようだ。一旦、ダンジョン総合案内所に行こう」
「分かりました」
その後、周囲の気配を感知し、敵がもう居ないと判断した俺は、美玲にそう言うと、ダンジョン総合案内所目指して、美鈴と共に歩き出した。
「あ、カメラが……!?」
あ、勿論無粋な輩は潰しといたよ。
「美玲。無事だったんですね」
「はい。それにしても、何故宏紀さんがここに? 名古屋へ出張に行ったのではないですか?」
「予感が、ありましてね。飛んで戻って来たのですよ」
ダンジョン総合案内所に戻ると、そこには”星下の誓い”の小川宏紀が佇んでいた。
そして、美玲は宏紀の下へ駆け寄ると、色々と話を始める。
「じゃ、俺も――」
そろそろアルフィアたちの所に戻ろうか。
そう、言おうとした瞬間。
「マスター~~~~~~!!」
「うお!?」
ロボさんが俺を《
ここ数十年で一番の威力。
俺は不意を突かれた事もあってか、思いっきり仰け反り、あと少しで後ろへ倒れ込む所まで行った。
「マスター、無事~? 無事~?」
「ああ、大丈夫だよ。怪我は一切していない」
俺は抱き着きながら、心配そうにこっちを見つめてくるルルムの背中を擦りながら、安心させるようにそんな事を言った。
すると、ルルムの後ろに居たアルフィアが、嘆息してから口を開く。
「急にご主人様が出て行って、その後戦闘音が聞こえてきたからのう……。妾たちが居なければ、今頃ご主人様を助けに行ったルルムによって、街が壊滅しておったぞ」
「あー……だよね。ごめん」
アルフィアの言葉に、俺は微妙な表情をしながら謝る。
「それで、その様子なら、解決はしたのじゃな」
「……ああ、そうだね。解決したよ。それじゃ、帰るか」
そう言って、俺は家に帰るべく、転移魔法を発動させる準備に入った。
そしてその間、一瞬だけちらりと美玲の方を見た。
「……美玲。また、会おうな」
直後、俺たちはその場から姿を消すのであった。
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はい、てことで第一章がこれにて終わりになります。
第二章以降は2日に1回更新となる予定です!
あ、フォローと★★★をしていない方は、是非是非この機会にどうぞ!(強欲)
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