第四十八話 想いをぶつけて――
「【魔力よ、
「っ!? 【
俺がこの場を覆い隠すように《
「【――《
「【――《
やがて、発動する2人の魔法。
まず、美玲が3本の雷の槍を放つ。
そして、それを美月は音系統の固有魔法で防いで見せた。
「【正しき想いは孤独の始まり――】」
美月が《
これは……固有魔法だな。
「させるかああ!!!!」
すると、美月が凄い形相で片手剣を構えながら、美玲目掛けて突貫してきた。
この表情――相当マズい魔法なのだろうか。
試しに解析をしてみると……ああ、なるほど。
固有魔法によるものならさぞ強力な事だろうし、受けたくないのも頷ける。
ただ――
「焦りすぎだな。身のこなし的に、普段ならそうはならないだろ?」
カチッ
「!?」
雷の槍で気を逸らしている隙に置いていた罠を、美月は踏んでしまった。
ドオオオオオオン――!
直後、小規模の爆発が美月を包み込む。
一方、そうなる事を知っていた美玲は、冷静に後ろへ下がりながら、詠唱を続けていた。
「【嘆き、苦しみ、家族を想う――《
「くぅ……っ!」
そして、発動する固有魔法。
美玲自身が巻き込まれない程度の爆発では、当然美月は死なない。だが、爆発のせいで硬直してしまった美月にそれを避ける手立ては無く、見事に身体能力を下げられてしまった。
「ふむ……筋力俊敏が3割減といった所か。中々強力だな」
これで、絶対的なアドバンテージであるステータス差すら埋まってしまった。
「うぬぬぬ――死ねぇ!」
だが、美月はそれを意に介さず、片手剣を振り回して美玲に襲い掛かった。
それに対し、美玲は咄嗟に長杖で迎撃する。
「死ねぇええ!!!!」
「美月! 私は、負けられない!」
互いに声を飛ばして斬り、叩く。
おー互い退く事を考えて無いな。
まあ、この状況じゃ退く即ち敗北に結構大きく繋がるからね。
「……近接戦だと、美月の方が技量上だな」
近接戦が続き、少しは頭が冷えて来たのか、美月が徐々にキレを取り戻してきた気がする。
「にしても、2人共――殺す気なくね?」
一体2人は何が目的なのだと、俺は嘆息するのであった。
◇ ◇ ◇
「いい加減、諦めて!」
「絶対に嫌だ!」
もはや、意地と意地のぶつかり合いとなっている状況。
そんな状況で、互いは声を上げながら戦い続ける。
「死ねっ!」
美月の片手剣が美玲の腕に掠り、血飛沫を上げさせる。
「はあっ!」
だが、その攻撃と同時に美鈴は美月の鳩尾へ長杖を突き出した。
「ぐっ 舐めるなぁ!」
鳩尾を突かれ、苦悶の声を上げる美月――だが、気合だけでそれを乗り切ると、仕返しとばかりに片手剣を美玲の右肩へと振り下ろした。
「ふっ!」
しかし、寸での所で美玲が身を屈めた事で、その一撃は虚しく空を斬る。
そして、攻撃後の隙を突いて、今度は美玲が屈んだ状態で長杖を振り上げた。
「やるねぇええええ!!!!!」
だが、素早く片手剣を自身の下へ引き戻した事で、それは完璧に防がれてしまう。
「飛べ!」
「ぐふっ!」
直後、美月の猛烈な蹴りが、屈み状態から戻ろうとしていた美鈴を襲った。
美玲は急所を守りながら、後方へと吹き飛ばされる。
そして、吹き飛ぶ美玲を確認した美月は、即座に詠唱を始めた。
「【
「ぐっ【魔力よ、
それを見て、美玲は美月の下へ駆け出しながら少し遅れて詠唱を始める。
「【――世界に響け――《
そして、美月の詠唱が終わってしまった。
直後、音の振動波が美玲を襲った。
「【――守れ――《
だが、ギリギリの所で詠唱を切り詰め、雷で己を包む防護魔法を発動させた。
しかし、これは緊急で発動させたもの。
「が、はっ……!」
故に、固有魔法である事も相まってか、かなりのダメージを受け、崩れ落ちる。
直後、美月は美玲へ急接近すると、首に剣を突き付けた。
そして、ニヤリと笑う。
「やっと殺せるよぉ。さあ、言い残す事はある?」
そんな美月に対し、美玲はゆっくりと顔を上げると口を開いた。
「な、んで……あれ、だけ……殺す機会を、逃した……の? 美月なら、もっと、早くやれた、でしょ……?」
「っ……!」
美玲の、何故わざわざこのような状態に持って行ったのかという問いに、美月は言葉を詰まらせる。
「な、何故って……そりゃ、こうやって圧倒的な力量差で潰したいだけよ!」
「嘘。そんな事、したいと思ってるの……?」
「……」
美月の言い訳じみた言葉を、美玲は即座に否定する。
すると、美月はそのまま黙り込んでしまった。
「……美月。私……ただ、家族と、幸せに……真っ当な道で、生きたかっただけ……でも、それは叶わない――私が、壊したから。なら、せめて美月だけは……今の私のように、笑える日々を、送らせ、たい……」
だからごめんね。美月の優しさを利用した、卑怯な事をするよ。
そう内心で告げた後、美玲は唱えた。
「【
一瞬で終わる詠唱。
直後――
「な、がっ……!」
美月が、全身を傷だらけにしながら、だらりと仰向けに倒れ込んだ。
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