第三十八話 手荒な目覚まし
「があああああああ!!!!!!」
「「「グルアアアァ!!!!」」」
ザン!ザシュ!ビシャア!
激しい戦闘音を奏でながら開催されるのは、大翔主催の殺戮の宴。
招かれし客――大量の魔物どもが、その宴をより一層盛り上げていた。
「おおう……相変わらず恐ろしいのう。あれは……」
その光景を前に、巻き込まれまいと気を付けながら、ロボさんが展開した《
「マスター、強い!」
そんな状況でも、天真爛漫に振舞うルルムに、アルフィアは何度目かも分からないため息を吐く。
(《
殺戮を続ける大翔の後を追いながら、ふとそんな事を思うアルフィア。
《
それは、アルフィアの思う通り、理性を代償に筋力、防護、俊敏を3倍にする最強クラスの強化魔法――否、狂化魔法。
だが、その魔法の効果はそれだけでは無い。
使用中、血と屍の山を作れば作るほど――即ち、生物を殺せば殺す程、強化率が上昇していくのだ。
そして、その上昇率に限界は――無い。
即ち、実質無限に強くなれるということだ。
もっとも。理論上そうであるというだけで、実際は身体や魂の限界――そして魔力の枯渇で、いずれ強制的に魔法が解除されてしまうのだが。
「あれ、妾との戦いで使われてたら、多分死んでたじゃろうなぁ……」
もし使われていれば、絶対的な力量差であった身体能力で逆に負け、狂乱しているせいで対話する余地も無く、アルフィアは死んでいただろう。
アルフィア自身、あの時は死んでも構わないと思っていたが……今の生活が待っていると思えば、殺されなくて良かったと、心の底からほっと安堵の息を吐く。
「使わなかったのは、単にそっちの方が自身の消耗を減らせるから……かの」
大翔は、いっそ病的なまでに効率を重視している。
己が持つ大量の手札の中で、最も消耗の少ない方法を即座に選んで、使っているのだ。
その事について本人は、余裕が無く、魔力1滴体力1の差で勝敗が決まるような状況が、日常的に起こり続けた結果だ……と、語っている。
「……お、ルルムよ。ロボさん。見えてきたぞ!」
数時間後。
そう言って、アルフィアが指差す先に見えてきたのは、下へと続く大階段だった。
狂乱しながらも、その圧倒的な精神力で完全に狂いきっていない大翔は、周囲に居る魔物を掃討してから、下へと向かって駆け下りる。
そして、変わらず巻き込まれないように一定の距離を保ちながら、アルフィアたちも下へと向かって駆け下りた。
そして――第893階層に到達した。
「がああああああああ!!!!!!」
第893階層に降り立ってから間もなく、壁から次々と強大な魔物が産み落とされる――が、即座に大翔によって命を刈り取られた。
「グルァ――」
「ガァ――」
産み落とされた傍から、抵抗すら許されずに殺されていく魔物たち。
既に1500匹以上の魔物を殺している大翔の身体強化率は――4倍。
装備している《
素の身体能力で互角程度の魔物では、もう話にならない。
「よし。その間に、妾たちは設置の準備じゃ。ルルムは
「うん! マスターの為に――《擬態》!」
アルフィアの言葉に頷き、ルルムは自身が保有する最強の技能――《擬態》を発動させた。
直後、ルルムの身体がぐにゃりと変形し、スライム体になったかと思えば、そのまま形を更に変化させ、のっぺりとした顔面を持つ、全身真っ白な人型の魔物に変化した。
これは、第799階層で遭遇した
その名も、
「よし。周辺の空間を破壊するのじゃ! その間に、ロボさんは状態を維持する結界を!」
「ゴホオオオオォ――【遨コ髢薙r遐エ螢翫?∽ク也阜繧堤?エ螢翫?∝」翫○螢翫○螢翫○】」
アルフィアの的確な指示に合わせて、
壊された空間は、本来すぐに塞がれるのだが――空間破壊の専門家たる
「【我ハ
続けて、ロボさんによって展開されるのは、空間を固定する結界魔法――《
これにより、空間が破壊された状態――即ち、ダンジョンからの空間干渉を受けない状態が、より長く続く事となる。
「よし。ご主人様よ! 早く
《
「があああ、あ、があああああああ!!!!」
だが、大翔は一瞬動きを止めただけで、直ぐに壁から産み落とされる魔物を見やると、殺戮を再開させてしまった。
「あーもう! 思った通りじゃ!」
アルフィアは「ふがー!」と声を上げると、右手を前方へと掲げた。
そして、唱える。
「【■■■■■■■■■■■■】――正気に戻るのじゃ!」
龍言語によって紡がれ、放たれた炎の竜巻は、大翔を勢いよく飲み込んだ。
本来であれば受ける事の無いであろう大規模魔法に、大翔はまるで
そして――
「……ふぅ。中々手荒な目覚ましだな」
爆炎が晴れた先に立っていたのは、《
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