『女子出生率低下の傾向に対する理学的生物化学手法による対応方法の研究と実験結果』

中島しのぶ

第1話 女子化の研究と実験

 春、志望した大学の理学部……と言っても私立大付属の中高一貫だからエスカレーター入学だが、オレは見事に特待生で合格し、今日で晴れて入学式を迎えられた。

 母親は一緒に来たがってたけどこっぱずかしいから、中学高校の隣のキャンパスで普段と変わらないからオレ一人で大丈夫と説得し、高校の卒業式の時に新調してもらったスーツで大学に単身で向かった。

 オレは中島 忍。20XX年3月12日生まれで先月18歳になったばかり。身長165㎝の中肉中背。見た目は美男子と大声では言えないけど、母親似のキレイな顔とよく言われる。でもオレは、男は顔じゃなくて中身、信念や勇気から来る男前っぷりだと昔から思っている。


 父親が去年春に事故で亡くなり、一時は進学を諦めていた。保険金は母親の老後に取っておいて欲しくて、自分は高卒で働いて稼ぐと母親に言っていた。しかし、高校の担任からは現時点で成績上位だから大学へ推薦で行けると諭され、さらには、より勉学に励んで入学費や学費が減免される特待生制度の活用まで勧められた。正直、ガリ勉はイヤだったけど、それから受験科目以外の五教科七科目をひたすらがんばった。体育は不得意で、選択科目の美術も、あの時音楽を選ばなかった自分を小一時間問い詰めたいほど下手だったけど……とにかくオレは、努力に努力を重ねて特待生を勝ち取ったんだ。


 全学部の新入生とその親が同時に入れる多目的ホールを見渡すと、オレと同様に高校からエスカレーター進学した同級生をちらほら見かける。普通こういうのは学部ごとに分けてやるらしいが、さすが外資系の学校なだけはある。特待生枠もそのおかげで割と多かったんだろうか……と考えてるうちに、入口でキレイなお姉さんに学部を聞かれた。上級生だろうか。それともスタッフさんだろうか。

「理学部です」

「では、左手前方が理学部の新入生の席ですので、空いている席にお座りください」

 お姉さんに滑らかな口調で案内してもらった。後者だな。


 オレは昔から化学が好きで、部活は中一からずっと化学部だった。高三では部長を務め、その年の文化祭の展示で優勝したこともある。一方で、彼女を作るヒマはなかった。てか、そんな気も起きなかった。ひたすら実験と勉強に明け暮れてたし、後輩に可愛い子がいて気にはなってたけど、論理的に物事を考える『リケ女』で恋愛する気はなさそうだったしな。

 ……となれば、大学理学部の女子はみんなリケ女なわけだから、また彼女なんてできないのか? まぁいいか。オレはオレの信念を貫く。そして理学博士号を取るんだ!

「おう! 中島じゃないか!」

「おわっ! いってーなぁ……」

 突然後ろの席から背中を叩かれる。背中をさすりながら振り向くと、スポーツ特待生で入学したと聞いていた同級生がいた。中澤 秀明。中一から同じクラスで学業の成績はまぁまぁだったが、元サッカー部の主将で県大会で準優勝まで行ったヤツだ。苗字の関係で席が前と後ろになってからというもの、オレたちはずっと仲良しだ。顔が良いこととサッカー部所属を武器に彼女をとっかえひっかえするという、オレとは対照的なナンパなヤツだが、妙に馬が合う友人の一人だ。

「中澤、お前なんでここにいるんだ?」

「オレも理学部に入ったって言ってなかったか? あ、お前合格した後実験室にこもってたから言えてなかったっけか」

 こんな感じで、いい加減なヤツだ。

「てか、受付のお姉さん綺麗だったな~。声かけちゃったよ」

「相変わらずナンパだな」

「そういうお前は硬派すぎんだよ。割とイケメンなのに後輩に声もかけられないしな!」

「うっせえな~、かけられないんじゃなくてかけないんだよ。あといつも言うが、オレはイケメンじゃなくて男前だ!」

「あ~はいはい」

 オレと中澤が言い合ってるうちに、入学式が始まった。


 入学式が終わってから前期授業が始まるまでの一週間、学部共通と学科ごとで新入生オリエンテーションというものがある。多目的ホール以外の講堂で開かれるのだが……はっきり言ってめんどくさい。オレの学科は応用理学科で、一年から入れる『応用理学研究室』に早く行きたかったけど、履修登録の説明や健康診断などがあるのでしぶしぶ参加した。

 一方の中澤は、うまく合間をぬって早くもサッカー部の部室に行ったようで、部から準レギュラーとして入部して欲しいと言われたと早速自慢してきた。さすが、スポーツ特待生なだけはある。オレも中澤を見習ってみるか。ちょうど、さっきのオリエンテーションで各研究室のプレゼンもあったことだし、早速理学部棟の研究室に足を運ぶとしよう。

 そんなわけで、オレは何とか合間をぬって理学部棟の応用理学研究室に向かい、ドアの前に立つ。何の薬品だか試薬だか忘れたが、とても嗅いだことがある独特な臭いが部屋から漏れている。ひとまずドアをノックしてみるか。

「お、新入生か? そっちは実験室だよ」

 後ろからそう声がした。振り向くと、先ほど研究室紹介の壇上でプレゼンしていた助手の人がいた。えっと名前は……。

「山下入りま~す。入室希望の新入生ですよ~」

 その人はオレとの会話をすんなり終わらせ、ズカズカと研究室に入っていったので、慌てて後を追い入室する。そうだ、山下助手だったな。山下助手はそのまま、応接セットや書架のある部屋のさらに奥の二部屋のうちの左のドアをノックする。プレートは『教授』。ちなみに右は『准教授』だった。

「どうぞ」

 中から応えがあり、山下助手が先に入ったのでオレも続く。

「入室希望の例の新入生を捕まえましたよ~」

 山下助手が軽くそう言う。例の? どういうことだ?

「失礼します。応用理学科一年、中島し」

「知ってる。学力特待生の中島 忍くんだね、ようこそ、応用理学研究室へ。私はここの責任者の一条 瑛一だ」

「よろしくお願い致します。一条教授」

 自己紹介の途中に割って入られたが、向こうが先に自己紹介をしてきたので、オレはとっさにそう返す。何でオレのことを知ってるんだ? わけがわからん。

「学力特待生を中心に応用理学科の新入生のことをひと通り調べていてね。君は面白いね。中高六年間化学部で、高校三年の時は部長として文化祭の展示で優勝経験があると」

「は、はい」

 オレが釈然としないというような顔をしていたのか、一条教授がそう言ってきた。なるほどな。

「我が校の理学部は知っての通り、『化学を活用して環境と調和した科学技術の未来を拓く』を理念としているんだが、主分野は地球環境・化学工学・合成化学・生物化学だ。そしてこの研究室は、先ほど山下助手がプレゼンしたと思うが、今は生物化学を中心に研究していてね」

「はい、お聞きしました」

「よろしい。では、新入生オリエンテーションを終えたら必修科目と選択必修科目、そして一般教養科目を全て履修登録し、なるべく二年までに全単位を修得するように。どれを履修すればいいかは山下助手に聞きたまえ」

「はい」

「三年からは専門課程の必修科目だけを履修できるように」

「分かりました。つまり、早く単位修得して研究に打ち込めということですね」

「そうだ。あと、講義後はできるだけ研究室に顔を出すように。最初は実験補助員として、我々の手伝いをしてもらう」

「はい。よろしくお願いします」

「期待しているよ」

 オレは無事に研究室への挨拶を終えたので、再び次のオリエンテーションを受けに講堂に向かった。


 翌日から必修科目、選択必修科目、一般教養科目の講義を受け始める。何で一般教養って朝一にあるんだろうなぁ。高校の時と違って始業が30分遅いのはありがたいけど。あ、でも高校の時は夕方六時に部活終わって下校してたからまだマシか。今は五限終わってからずっと先輩たちの実験の手伝いだもんな。下手すりゃ終電ギリギリの時もある。補助員はキリのいい時間で帰れるけど、実験や論文が追い込み段階の先輩たちは何日も泊まり込んでいるようだ。

 実験補助員と言うと聞こえはいいが、所詮は高校出たてのひよっ子だ。実験用で飼っているラットのペレット(寝床)の取り換えや、先輩が使い終わった試験管やビーカーの洗浄が主な役割だけど、中高六年間化学部だったゆえの手際の良さが気に入れられたのか、次第に実験中の旋光度計や、NMRやLC-MSなどの分析機器の見学をさせてもらえた。

 他にも、夏には納涼会、冬には忘年会に新年会。そして春は追いコンと、色んな行事を先輩たちと一緒に楽しんだ。


***


 それから時間が経ち、専門課程の三年に進級したオレは、温めていたある研究をしたいと教授に直談判し、許可を得て研究に没頭し始めた。その頃に、同学年の安藤 ラムという女子が入室した。艶やかな黒髪ロングの美人であると同時に、眼鏡っ子でいかにもなリケ女だ。

 最初のうちはオレと同様に実験補助員をしており、その時は挨拶程度しかしなかった。しかし、彼女は優秀らしく、数ヶ月後には教授の許可を得て自分の研究をやり始めていた。


 さらに時間が経って四年の前期になると、教授指定の卒論のためだけに研究室に配属された学生が入ってくる。しばらく連絡をとってなかった中澤など数名だ。オレは自分の研究の傍ら、そういった学生たちへの補助や助言の役割を担う。

「やっぱ中島ってイケメンだよな」

「だ~か~ら~……」

 そんなオレの様子を見た中澤が何年かぶりに言い出したので、久々のやり取りを始めると、山下助手が割り込んできた。

「なになに~?」

「あ、山下さん。こいつがオレのことイケメンって言ってくるんですよ。でも、オレ自身は男前だと思ってて。むしろイケメンはこいつだと思うんすよね。ナンパなヤツだけど……これは中学からずっと言い合ってるんですけどね」

「な、何を~?」

「あ~確かにな~。中澤くんはナンパかどうかは知らないけどイケメンだよな。中島くんもキレイな顔だと思うけど、他の学生の面倒見てくれる男気があるから、イケメンというより男前だろうな~」

「ほれみろ中澤~」

 そんなオレたちのやりとりを見ていた安藤がクスっと笑った。何か珍しいものを見た気がした。


 夏休み。研究室にはオレただ一人。今研究している実験は、ラットでは80%以上の確率で成功しているので、理論的には間違っていないが、精度では完成とは言い難い。ホワイトボードに化学式を書いて何度も見直すも、何が足りないのか分からない。こりゃ一からやり直しか? 整理する必要が……。

「中島くん、その式って……」

 そうして夢中になっている最中、後ろから突然女性の声がした。驚いて振り向くと、安藤が研究室に入ってきていた。

「ねぇ、その式ってもしかしたら……」

「あ、これは……そ、そう、女性を美しくする試薬の研究だ」

「嘘ね。それは男性を女性にする『女体化促進剤』でしょ?」

 オレはとっさにごまかすも、速攻でバレてしまった。

「……安藤、この式を見て何でそう思ったんだ?」

「だって私も、中島くんと同じ研究してるんだもの」

 ふとオレが安藤に疑問を呈すと、意外な答えが返ってきた。

「この研究室に入った時、中島くんが面白いものを研究してる、って一条教授が言ってたの。で、それに興味を持って、私も許可を得て同じ研究を始めたのよ」

「そ、そうか……」

「その式、私が導き出した式とそっくり。でも違うところもある……例えばここの部分、クマノミとかの雄性先熟魚を考慮していないわね?」

「あ、ああ確かに。でも、それは人間に当てはまるか確証が持てずにあえて外したんだ。ラットでの実験では80%以上の確率で成功し」

「知ってるわよ」

「え? てことは、安藤はもう完成したのか?」

「全然。まだまだ改良が必要ね」

「じゃあ、もしかしたら……」

 オレは安藤に痛烈に指摘されたところを振り返る。早速、安藤の言う『考慮していない』部分の修正にとりかかる。

 女体化のプロセスは胎児原基の性分化過程をもう一度辿るようなものだ。少々の語弊を覚悟で科学的に言えば、テストステロン分泌を阻止し、精巣、精管、前立腺小室をそれぞれ卵巣、卵管、子宮に戻し、卵巣のエストロゲン分泌の閾値を高めて限界まで分泌させる。となると……。


 それから数日後、安藤の協力を得てついに式が完成する。

「この式を基にした試薬を作れば……」

「うん、もっと精度を上げられるかもしれないわね。中島くん、今日から共同研究って形で、これを完成させない?」

「あ、ああ。いいよ」

「それにしても中島くん、何で『女体化促進剤』なんて作ろうと思ったの?」

 安藤がふいにオレの研究の動機を問いかけてくる。やっぱりそう来るよな。よし、答えてやるか。

「この約100年間の平均的な割合で、生物学的に人間の男子が生まれる確率は約51%、女子が生まれる確率は49%ってのは知ってるだろ?」

「当然」

 安藤は即答する。これは生物学をやっていれば常識だ。

「そして2000年頃までの日本人の男女出生率の比率は、女子を100とすると男子は104と、生物学の確率通りだった。2010年代になると男子は112前後、現在の20XX年では、地域差はあるが130台にまで増加している。つまり……」

「女子が少なくなり、将来的に人間がいなくなる……」

「そう。だからオレは、希望する男がいるかいないかは別として、男を女性化させる『女体化促進剤』を作ろうと考えたんだ。この学部の理念にも合ってるだろ?」

「そうね……あ、そうやって一条教授を納得させたの?」

「ま、そうだな」

 そうして二人で他愛もない科学的な会話をしつつも、協力して地道に研究を進めていく。式の見直し、試薬の作成、実験、再考と繰り返し……いつしか、クリスマス前に100%のラットがオスからメスになり、研究は動物実験段階で完成した。

 後はこの結果を、提出期限ギリギリの来年一月中に、一条教授とオレと安藤の共同研究として、卒論という形で書き上げれば卒業できるんだが……。


 オレにはまだやり残したことがある。この『女体化促進剤』は、人間の男を実際に女体化させなければ真の完成とは言えない。そう、臨床試験、言い換えれば人体実験が必要になる。

 ただ、この薬を本格的に実現させるためには、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の第二条三項『人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの』に値するもの、つまり医薬品としてパスしなければならず、そういう意味でも臨床試験は必須事項だ。

 そして、臨床試験を行う場合は、『医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令』がある限りは、規則に定められた要件を満たす病院だけでしか行えない。

 つまり、この薬は実行が極めて難しい臨床試験をしない限り、ただの卒論のテーマで終わってしまい、この学部の理念とオレの信念を実現できないことになってしまう。

 オレは熟考の末、そのことを安藤に話してみた。

「あ~、この薬を世に出すには臨床試験が必要なのね。私もうっかりしてそれに気づけなかった、ごめん」

「いや、まぁ安藤のせいじゃないから」

「対策としては三つある。一つ目は、お互いに修士・博士一貫課程に進むわけだから、そこで博士号を取ってこの卒論を煮詰めて学会に発表するルート……」

 安藤の言う通り、オレたちは卒業後に修士・博士課程に進む予定だ。幸いにも学費面はTA制度や学生支援制度を利用でき、母親に心配をかけずに進学できるメドが立っている。

「でも、それでも最短五年か……」

「二つ目は、教授の許可を得てこの論文を翻訳して、英米の有名大学に送って認めてもらうルート……」

「梨のつぶての可能性もあるがな」

「そして三つ目は、この学校の親会社のアストラル製薬に論文を売り込んで研究してもらうルート……それが一番現実的じゃない?」

「そういやこの学校、外資のアストラル製薬が親会社だったな。でもよ、実際に女体化の需要が無かったら、製品化はおろか試作も実験も臨床試験もしてくれないだろ。今はどう考えても需要なさそうだし……」

「んもう、せっかく私が考えてあげてるのに! じゃあ、いっそのこと自分で注射して試してみる他ないじゃない!」

「……それだ!」

 安藤のその言葉を聞き、オレはふと閃いた。

「え、中島くん何言ってるのよ! 冗談よ!? 本当に女の子になっちゃったらどうするの!? ……まぁ、女の子になるように作ったんだけどさ……」

「この薬で自分が実験台になって成功するなら、それはそれで本望だよ! 自分で作ったんだし! あ、安藤もだけど」

「あ~もう何だかな~! 何でそこで男気出すわけ!? コレラ菌飲んだペッテンコーファーかよ!」

「よし、オレ決めた! この試薬の自主臨床試験をする! 安藤! 共同研究者として、女体化の記録をビデオで録ってくれ! 本当なら心拍数とか、脳波とか、実験前後のテストステロンとか、エストロゲンの分泌量も計測したいところだけど、あいにく医学部に知り合いはいないしな」

 オレの決断と提案に、しばし熟考する安藤。そして……。

「……しょうがないわね、私も共犯者になってあげるわ。中島くんは言い出したら聞かないから」

「き、共犯者ってなんだよ! 立派な実験だ!」

「バカ! 無許可で臨床実験するのは立派な薬機法違反よ!」

「あ~分かったごめん! じゃあ共犯者になってくれ!」

 何やら自分の夢のために安藤を巻き添えにしてしまうことになったが、安藤はオレの心にしっかり応えて共犯者になってくれた。まったく、法に触れるとはいえイヤな響きだぜ。

「じゃあ、決行は今週の土曜23時以降でどう? 昼間はダメだし、遅い時間なら教授たちも帰ってるし、卒論提出してないのは私たちだけだから、残ってる室員もいないはずよ」

「よし、じゃあその時間にしよう!」


***


 決行日の土曜。22時頃には室員が次々退室し、オレら以外誰もいなくなる。教授も夕方に帰ったのを確認済みだ。実験室は狭いので、応接セットを動かして十分なスペースを確保する。女体化の影響で膀胱が縮小して失禁する可能性を考慮し、ブルーシートを敷いてその上にバスタオルを置く。オレはトイレを事前に済ませ、安藤はその間に撮影の準備をする。

 研究室の各部屋を施錠し、実験室の冷蔵庫に保管していた『女体化促進剤』をバイアル容器から注射器に217.8mlほど吸い上げ、準備に取り掛かる。

 薬の量はこう計算した。まず、ラットのオスの平均体重が550gでオレの体重が約60kg=59,900gなので、体重比は59,900÷550で108.9倍。そして、ラット一匹に2.0mlを投与した結果が100%だったから、2.0ml×108.9倍で217.8ml。

「えっと、バスタオルと小さいタオル数枚。ショーツとブラ。スカートはイヤだろうからワンピース。それに寒いからダッフルコート。申し訳ないけど全部私のだから。女体化後のサイズが大きいか小さいかは分からないけど……」

 安藤は顔を赤くしてそう言い、オレに着替えを渡してくる。

「あ、着替えのこと考えてなかった! サンキューな」

「う、うん」

「じゃ、23時ジャストに試薬の注射を始めるから……薬液の吸収速度が速い筋肉注射がいいな。一分前から撮影始めて」

 オレはそう言い、服を脱ぎ始める。

「ちょ、ちょっと何やってるのよ!」

「え? だって身体が男から女になる過程を記録するんだから、裸にならなきゃ意味ないだろ? 特に股間が重要だし」

「そ、そうだけど……じゃ、じゃあ、あと数分で22時59分だから、上半身を起こして座ってて」

 安藤はさっきよりますます顔を赤くするが、最終的に恥ずかしさより科学者としての研究心が勝ったようで、オレの股間を中心に試し撮りをし、できるだけ直視しないように録画チェックをする。

「試薬を注射したら仰向けで寝る……でいいかな?」

「あ~そうね。あと、目を閉じといたほうがいいかも」

「何で?」

「多分、ショック受けると思うから……」

「そ、そうか。そうだよな……」


 一分前になると、安藤が記録用紙にレポートを書き始め、実験の際の決まり文句を口にしながら撮影を始める。

「現在20XX年12月24日土曜日22時59分00秒。これから中島 忍を被験者とし、『女体化促進剤』による女体化の実験を始めます。被験者に試薬を注射します。被験者は注射後、指示があるまで目を閉じ、仰向けに寝ていてください」

 23時00分の10秒前からカウントダウンを始め、アルコール綿でオレの左肩を消毒する。そして、ゼロとともに注射針が肩の三角筋に垂直に刺され、薬液が注入される。いってぇ~、やっぱ筋肉注射じゃなくて皮下注射にすればよかったかな。オレはそう思いながら、仰向けになって目を閉じる。

 まず、頭痛とめまいが始まった。次に身体が熱くなり、鼓動や呼吸も早くなる。身体中が痛み、骨がきしむような感覚も出てくる。そして、腰周りに激痛が走る。きっと骨盤が開いてきてるんだろう。

 あまりの痛さにうめき声を上げ、のたうちまわりそうになるが、何とか我慢して身体の変化を確かめようと股間に触れると、陰茎が今までにないぐらい固く勃起していた。程なくして断末魔のように射精すると、睾丸とともに収縮していった。ああ、21年間を共にした相棒よ、さらばだ! しかし、これを傍から見てる安藤からすりゃ衝撃的なシーンだろうな。

 やがて、触っている箇所に外性器が形成されてくる。ヘソの下のあたりが痛い。収縮した精巣、精管、前立腺小室がそれぞれ卵巣、卵管、子宮に再形成されてるんだろう。それと同時に両乳首も痛くなる。片手で触れると、乳房ができつつあるのが分かる。頭のあたりも、首を動かしている時に髪が絡むような感覚がしてきたので、髪も伸びているようだ。

 時間が経つと、身体が熱くなくなって鼓動も落ち着いてきたが、まだ指示がないので目は閉じたままにしていた。

「実験開始より207秒経過で女体化が完了。これから被験者の身体特徴を観察します。詳細な身体測定は後ほど行います。被験者はまだ目を閉じたまま、起き上がって立ってみてください。無理であれば、上半身だけ起こしてください」

 安藤がオレに的確な指示を出してくれる。案の定、うまく立ち上がれないので上半身だけ起こす。長い髪が裸の背中に当たって心地がいい。

「頭髪は……金色で腰までの長さ。肌の色はかなり白くて上半身は華奢。座高は男性の時より10㎝近く低くなっています。乳房はそれほど大きくなく、80㎝もないと思われます」

 女体化で体組織がほとんど入れ替わった影響で、身体がかなり縮んだようだ。しかし、チッパイか。しかも金髪……これは果たして成功と言えるのだろうか。

「では、被験者は目を開けてカメラを見て……!」

 安藤はそう言いながら、突然ハッと息を飲んだ。

「えっと瞳、虹彩は赤色です! 被験者は私が見えますか!?」

 え、赤? どうしてそうなった? とりあえず安藤を見ることはできたけど、まだ声を出すのが怖いのでこくりと頷く。

「視覚、聴覚とも正常なようです。では、立ち上がれますか?」

 オレは再度頷き、ゆっくり立ち上がる。

「身長は約150㎝。股間に陰毛はありません。両手をあげてください……両脇毛もありません。では、発声はできますか?」

「ん、んっ……は、はい」

 おお、完璧な女の子の声! これ、オレの声なんだ!

「発声も正常で女性特有の高い声です。実験開始から約10分、20XX年12月24日土曜日23時09分45秒、中島 忍を被験者とした『女体化促進剤』による臨床試験を終了します。身体数値データは後ほど計測して資料添付します。以上」


「はぁ~……」

「だ、大丈夫か?」

 安藤が大きな溜め息を吐いたので、まだ聞き慣れない女の子の声でオレが声をかける。

「う、うん。それより、な、中島くんすっかり……その、可愛くなっちゃって。鏡、見る? まだ怖い……かな?」

「いや……実験結果はしっかり見なくちゃな」

 オレは意を決して安藤から手鏡をもらい、恐る恐る見る。

「誰これ! オレなのか!? 美少女がいる! 可愛い!」

「うんうん、見事に可愛い女の子! 赤目に金髪で、インターナショナル・スクールの子みたい!」

「赤目で金髪って、面影なんて微塵もないじゃんか~!」

「ねえねえ、身長と体重とスリーサイズ測るのは明日にする? 日曜だから研究室誰も来ないはずだし。あ、ていうか中島くん、そのまま帰ったらお母さんびっくりしない?」

 安藤が興奮気味に話しかけてくる。ん、お母さん?

「うわ! 母さんのことすっかり忘れてた! どうしよ、いきなりこの身体で帰ってもオレって信用されないだろうし、信じたとしても研究のこと話してないからひっくり返っちまう! ヤッベー、オレ、男に戻れないんだったよな!?」

「女体化が目的だったから戻ることは考えてなかったわねぇ……終電も近いし、今日はとりあえず、私の家に泊まる?」

「え、男のオレが行っていいのか?」

「今は女の子でしょ? それに、こんな高校生みたいなちっこい子を一人で放り出すわけにもいかないわ」

「そ、そりゃそうかもだけど……」

「それより、裸で寒くない? サイズ合わないけど、私の服着なよ。いくら同性の身体とはいえ、裸だとこっちが恥ずかしくなるから」

「お、おう」

「あと、これからはなるべく男言葉を使わない方がいいよ」

「あ、はい……でいいのかな?」

「よろしい!」

 オレは結局安藤に諭され、安藤の家にお世話になることになった。研究中は泊まり込みで何日も帰らない時はあったものの、母親に心配をかけないようにメールだけは毎日しているので、今日はとりあえず研究室の連中とのクリスマスパーティーで朝まで飲むから帰るのは月曜になる、とでも送っておこう……そういや、今日ってクリスマスイブだったっけ。


 安藤が用意してくれた服は今のオレの身体には大きく、ブラは大きすぎてとてもじゃないけど着けられなかった。安藤って巨乳だったのか。パンツ……あ、ショーツって言うんだっけ。男のパンツだとスースーするからそれは履いた。ワンピースは大きいスカートのような感じで、何だか心許ない。

 安藤はビデオや三脚、照明などの撮影機材を実験室の棚に片付け、録画したメモリを大事にカバンにしまっていた。オレはブルーシートとタオルを片付けた後、応接セットを元に戻そうしたけど、重くて動かせなかった。あちゃ~、女の子ってこんなに力がないんだ。

「おーい安藤、手伝ってくれー」

「はいはい」

 安藤の手を借り、二人がかりでそれを元に戻す。

「さ~て……じゃあ中島『さん』、今日は奇しくもクリスマスイブだし、コンビニのケーキとチキンになっちゃうけど、私の家でクリスマスパーティーしましょうか」

「何で『さん』? まぁいいけど……てかよ、こんなダブダブな服着た美少女姿って、オレ、お前んちで怪しまれね?」

「な~にが美少女よ。女の子だから親は全然大丈夫だし、服のことは実験中に水かぶって私の着替えを貸したとでも言えばいいし。研究室の後輩とでも言っておけば怪しまれないって。それに『オレ』じゃなくて『私』!」

「あ、は、はい!」


 時刻は24時過ぎ。研究室の戸締まりをすると、安藤について行く形で大学の裏門を抜け、コンビニ経由で安藤の家に向かう。コンビニでパーティー用の買い物をし、安藤の家の前に着いて玄関で待っていると、安藤の母親が出てきた。

「今夜はお世話になります。私、安藤先輩と同じ研究室の後輩の中島と言います。安藤先輩にはお世話になっています」

「あら~、綺麗な金髪と赤い目! 留学生さん?」

「あ、いえ。私、日本人ですけどアルビノなんです」

 オレは無難に挨拶をし、家に上がらせてもらう。外国人と思われたので苦し紛れに返答したけど、何とかやり過ごせた。

 二階の安藤の部屋に案内され、コタツに座って安藤を待つ。女の子の部屋なんて初めてだな……そう思うのも束の間、家にあったワインと、コンビニで買ったショートケーキと、売り切れていたチキンの代わりの唐揚げを安藤が持ってきた。

「あれ~? 中島さん。その座り方、ぺたんこ座りだね~」

「え? あ、本当だ。気づかなかった」

「それ一見可愛いけど、成長期にやり続けるとO脚になっちゃうよ~? だから私、できるだけしないようにしてたし」

「確かに今の身体年齢は成長期だしな……女体恐るべし……」

「も~、その言い方……ま、とりあえず、中島さんの女体化実験の成功祝いとクリスマス祝いに、乾杯しよっか?」

「あ、ああ」

「ほら、さっきも言ったけど、もう少し女の子っぽく」

「あ、ごめんごめん。でも、まだ全然慣れてないしさ」

「ま、そのうち慣れるよ。じゃ、乾杯ぁ~い!」

「カンパ~イ」

 そのままオレたちは乾杯し、ショートケーキと唐揚げを食べながらパーティーを楽しんだ。夜通し楽しもうと思ったが、実験の疲れとワインの酔いですぐにコタツで寝てしまった。


***


 翌朝。実験の影響かコタツで寝た影響か、起きると身体中がギシギシ痛む。身体を触ると女の子のままだ。チッパイはあるし、股間の相棒もいない。まだ数時間しか経ってないけど、女体を維持してるから成功と考えていいだろう。

 部屋を見渡すと、安藤がいない。どこに行ったのかと思っていると、階下から足音がし、安藤が入ってきた。

「起きた? コタツで寝かせちゃってごめんね。よく寝てたからさ。実験で体力使っちゃったんだね。そうそう、これ、私の中学の頃の服。サイズ合うかな? ちょっと着てみて」

 安藤は、自身が昔着ていたパンツとブラとブラウス、ジャンパースカートを持ってきて、オレに着ろと言ってきた。

「やっぱスカート履かなきゃダメ? せめてジーンズとトレーナーがあればな……」

「あ、ごめん。私、ジーンズとかトレーナー着ないんだよね。だからこれで我慢して」

「分かった。ありがと~」

 オレはそのまま、安藤の古着を借りて着替え始める。 

「あ、私の前ならいいけど、他人の前でいきなり着替えないようにね。特に男の人の前で。あと、座る時に足組んだり、足を開いたりしない。これ、女の子の基本だから」

「分かりました~! 安藤せんぱいっ!」

「先輩は余計! これからは私のことは『ラム』でいいよ。私は中島さんのこと『しのぶ』って呼ぶから」

「うわ~、何か女の子を下の名前で呼ぶのって恥ずかしいな」

「下の名前で呼び合うのも女の子の基本だよ?」

「そ、そうなのか……」

「あ、そうだ。10時までに研究室に行くからね。さっき一条教授に電話してさ。昨日の実験過程のビデオと、その結果のしのぶを教授に見せることにしたから」

「えええ~~~っ!?」

「そりゃそうでしょ? 成功したとはいえ、研究室で勝手に実験しちゃったんだし」

「ま、まぁな……こりゃ怒られるかな。しょうがないか」

「私も一緒に怒られるし、いいでしょ。そこは男らしく認めなきゃ。男前、なんでしょ?」

「こういう時だけ男扱いするのかよ」

 そんなこんなでオレは、今後の事を安藤と話した後、安藤の古着を来て部屋を後にした。

 食卓では安藤の母親が朝ごはんを用意していてくれていたので、一緒にいただく。トーストにコーンポタージュ、固めの目玉焼きと、洋風だ。ぶっちゃけオレはごはん派だけど、ここは気にせずいただこう……んん、食べ切れないな……。

「あ、しのぶ。食べきれなかったら残しちゃっていいよ~」

 安藤はオレにそう言った後、そばにいる母親と談笑する。

「……あの、ちょっとトイレに」

「あ、じゃあこっちだからついてきて」

 オレは食事中に尿意を催したので、安藤に案内してもらう。もちろん、人生初の女子としてのトイレだ。

「トイレットペーパ―を適当に切って重ねてから優しく当てて拭くのよ。絶対にこすっちゃダメよ。こすったら小さなくずがデリケートゾーンにくっついちゃって後処理が大変だし、膀胱炎とか他の病気の原因になるからね」

 安藤が小声で忠告してくる。ん~、やっぱ女体恐るべし。


 朝ごはんとトイレを済ませると、支度をして安藤の家を出発し、10時前に研究室に到着する。

「説明はオレがするよ」

「ダメよ。急にその姿で行っても信用されないわ。ていうか、説明ならさっき私が電話で」

「お~い、二人ともドアの前で話してないで、入りなさい」

「え? あ、はい」

「し、失礼します!」

 教授室のドアの前で安藤と話している最中、中から一条教授の入室を促す声がしたので、オレたちは早速入室した。

「お~、中島くんすっかり女の子になったね~。しかも赤目金髪で可愛いじゃないか! あ、これはセクハラで言ってるんじゃないからね。まぁ、突っ立ってないで座りたまえ」

「は、はい……」

「しかし君たち、やってくれたというか、でかしたな~」

「い、いえ。勝手に自分とはいえ人体実験をしてしまい……」

「いや、それは後で何とでもできる」

「へ、へえ……教授、あまり驚かれないですね」

「中島のことだ。ラットでの成功を見て、正式な手続きでの臨床試験を待ってられないと思ってはいたよ。自分を実験台にするとまでは思わなかったがね。それに、安藤さんの電話である程度の話も聞いている。研究室のあちこちにある監視カメラで画像も確認したしね」

「監視カメラ? 四年間在籍してましたけどそんなものが」

「見えるようになってたら、監視カメラにならないだろう?」

「ああ……ごもっともです」

「だけど、監視カメラじゃ細かいところが分からないから……早速このビデオカメラを再生してモニターに映そうか」

 一条教授は、オレたちが昨夜実験で使用したビデオカメラをテーブルに乗せ、モニターケーブルを接続する。

「じゃあ安藤さん、録画メモリをセットして再生して」

 安藤は、教授に言われた通りにセットし、ビデオを再生する。そして、昨晩の記録用紙を教授に渡す。原本を渡して大丈夫かと思ったけど、もしもの時のメモリデータのバックアップと記録用紙のpdfを自分のPCに残してるから、万が一もみ消されることになっても大丈夫……って安藤が家を出る前に言ってたのを思い出した。その辺、抜かりないヤツだ。

 再生が始まると、安藤の声が聞こえ始める。そしてカウントダウンの後にオレの身体に試薬が注射され、オレのうめき声とともに身体が変化する映像が映し出される。

 一条教授が記録用紙と映像を見比べながら時々感嘆の声を上げる一方で、オレは初めて自分の身体の変化を客観的に目の当たりにし、少々気分が悪くなる。ある程度覚悟はしてたけど、かなりグロい。よく安藤は冷静に撮影と記録をしたな。

 やがて、安藤の声とともに、映像が終了する。

「う~む、二人でよくここまでほぼ完成に近い『女体化促進剤』を作ったな。この結果をすぐにでも卒論にまとめ上げて欲しい。私と中島くん、安藤さんの共同研究ということにすれば、大学に提出できるだろう」

「は、はい!」

「それから、卒論を書き終わったら、二人の連名でより詳細な学術論文を作成してくれ。当然、ちゃんと英訳してレビューワーにピアレビューもしてもらう。後は私に任せてくれ。博士論文として、論文博士の申請をしよう」

「え! それってつまり、論博の理学博士ですか!?」

 一条教授の一連の言葉に、安藤がぱあっと色めき立つ。

「論博って修士・博士一貫課程を終えないとなれないんじゃ」

「しのぶって、ほんっと研究バカというか実験バカね。いい? 博士号ってのは、」

「いやいや、安藤さん。今すぐに論博になれるわけじゃない。まずは卒論を仕上げないとだね」

「あ! そ、そうでした~」

「それより中島くん。いや、中島さん? 親御さんには、ちゃんと女の子になったことを伝えたのかな?」

「い、いや……まだです」

「じゃ、それが一番最初の試練だね」

「うう~、ちゃんと信じてくれるか疑問だ~」

「よし、じゃあしのぶ! こうしよっか」

 その後、興奮した安藤が矢継ぎ早にオレに話してきたので、その内容をオレなりに要約した。

1. 今の社会は女の子が減少し、このままだと将来人間がいなくなってしまうこと。

2.それを憂い、『化学を活用して環境と調和した科学技術の未来を拓く』理念と信念から、『女体化研究』をしたこと。

3.実験台がいないから、オレの男気で自分の身体を使い、人体実験をして女の子になったこと。

4.この研究で理学博士なれるかもしれないこと。

 今からオレの家に行ってそのことを説明すれば、母親も納得してくれるだろう、とのことだ。共同研究者ということで、安藤も同行すると言っている……やれやれ、骨が折れそうだ。


 こうしてオレは、ただの『男前』の中島 忍あらため、『美少女でも男前な理学博士』中島 しのぶを目指すことになった。

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