第4話—守る者—

「対人戦は嫌なんだけどな。」

 クライドは背中からヘビーメイスを取ると、一匹のワニに向かって振りかざした。ワニはしばらく悶絶すると襲い掛かってきたが、クライドの防御で攻撃はすべて受け流された。

「まだ人とは戦ってないじゃん。」

 他のワニの相手をしていたシルヴィアが片付ける片手間にそういった。周りをみると、見ると、レオのほうはもう倒しているようだ。

「【アストラルバーン】」

「!」

 シルヴィアが召異魔法を使ってワニを倒しているのを見て、魔神使いの女は驚いた顔になった。その間に、クライドの目の前のワニを倒していた。彼は魔神使いの女にヘビーメイスを向けながら言った。

「大人しく、知っている情報を話してもらおうか。それがお互いのためだ。」

「それはできない相談だわ。そこの貴方ならわかるでしょう?魔神使いがどういう扱いを受けてきたか。」

 そういうと、シルヴィアのほうを見た。シルヴィアは否定も肯定もしないで聞いていた。気にせず、彼女は続け始めた。

「情報を渡した何?あなたが約束を守る保証ってあるの?」

「ねぇな。」

 クライドはそう言い放った。シルヴィアとレオは、「ちょ、何言ってくれてんの?」という顔になっていたが、彼は気にせず続けた。

「なら、それには応じられないわ。」

「だが、今ここで受け入れるほうが得策だと思うぞ?この辺はまだ寛容なほうだ。自首しても刑は数十年で出られるはずだ。」

「10年は長いじゃない!」

 思わずシルヴィアは突っ込んでしまったが、それはクライド以外のこの場の全員が思っていることだった。

「そうか?いや人間としてはそうなのか・・・俺はリルドラケンなのでな。寿命の違いでわからなかった。すまない。」

「ちょっと!こっちが悪いみたいじゃない!ていうか待って!頭下げないで!やめてよ!」

 謝られたことに思わずひるんでしまい、その様子を見た他の人たちは、「あれ?実はいい人なのでは?」とまで思ってしまった。

「え~と・・・お名前、なんですか?」

「いきなり何なのよ!エイミーよ!」

 この瞬間レオ達は彼女をいい人認定してしまいそうになった。

「とにかく!・・・私はもう後戻りはできないわ!・・・」

 そういうと、家の奥に置いてあった竜のうろこを取り出し、何やら呪文を唱え始めた。 

       そしてー

「いでよ!ラグナカング!」

 そういうと、空中に扉が現れ、直立したドラゴンのような魔神―ラグナカングが現れた。

「ドレッドバールは無理だったけど、この子でも十分時間稼ぎ程度にはなるはず!」

 エイミーは言い終わるや否や、すぐさま戦闘から離脱しようとした。レオ達は追いかけようとしたが、ラグナカングを野放しにするわけがいかない。結局―

「逃げられちゃうわけね・・・後でいろいろ話したかったのに・・・」

 シルヴィアがそうつぶやくと、戦闘態勢に入った。彼女は改めてラグナカングの特徴を分析し、こう言った。

「・・・確かこいつ断空属性が弱点だったはずなんだけど・・・」

「俺らには関係ないな・・・」

 レオが苦笑しながらそういうと、剣を鞘から取り出しー

「うわ!」

 攻撃に入ろうとした瞬間、相手のほうが早く動き出し、当たりそうになった。しかしとっさにクライドが間に入ってくれたおかげで傷を受けることはなかった。

「悪い。助かった!」

 そういうと、すぐさま前にでて翼に攻撃した。しかしすぐに落ちるようなものではなく、多少傷つけた程度で終わってしまった。

「さっさとまず翼を落として攻撃を当てやすくしないと・・・いでよ!グンネル!」

 次の瞬間、空中に扉が現れ、そこから3m程の人型の長いしっぽを持った魔神が現れた。そのままグンネルは攻撃したが、当てることができず、そこからいたちごっこが始まった。

 ラグナカングの攻撃をレオが回復し、レオ達からの攻撃をラグナカングが回復させる。その繰り返しだ。お互いが消耗していくだけで、戦況の決定打を見つけることが出来ずにいた。

「少しいいか?」

 突然クライドがそう話しかけてきた。言葉こそ返さなかったが、残り二人は戦いに集中しながらも耳を傾けていた。

「俺は一度牢屋に入っていた時期があってな・・・冤罪だと信じたいんだが、周りはそんなのお構いなしだ。俺は過ちを犯しても努力すれば認められてもいいと思っている。そんな俺についてきてくれるか?」

「今更だよ。それをいうなら俺は最初の冒険のとき、大迷惑をかけたよ!」

「私も魔神使いだって言った時もみとめてくれたじゃん!」

 そう返事が返ってくると、クライドは嬉しそうに笑いながらヘビーメイスを持ち直した。

「ありがとよ!元気出てきたわ。じゃぁ・・・まずはギル達が来るまで持ちこたえるか!」

「とはいえどうすんの?レオもマナ、大分消費しちゃったでしょ?」

「そうだね・・・今後の回復のことを考えると、そうたくさん攻撃魔法を撃てないかな。」

 レオがラグナカングの攻撃をかわしながら思案気に答えた。

「・・・レオ、魔晶石はいくつ買ってある?」

「0!」

 クライドの問いかけにレオは清々しいほどいい笑顔で答えた。クライドが唖然としている横で、シルヴィアはわなわなと震えていた。

「ダメじゃん‼何で出発する前に買っていないの?!」

「だって今まで何とかなったから・・・」

—今までどうにかなったってどういう意味よ。

 シルヴィアはついそんなことを考えてしまった。ただ運が良かっただけなのか、彼の実力が高いのか。どちらにせよ、今考えることではない。

 そうこうしている間もレオ達は劣勢に追いやられてきていた。後のことを考え、回復を制限しているからだ。しかし彼らも負けてはいない。翼は片方落としているし、頭部や胴体にもそれなりに打撃が与えられている。ただ決め手がなく、泥仕合となりかけているのだ。

「あーもう!じれったい。【アストラルb-」

「シルヴィ避けろ!」

 呪文を唱えようとしていたシルヴィアは突然の注意に固まってしまった。しかし次の瞬間理解した。ラグナカングの翼が目の前まで来ていたのだ。いつもの彼女なら避けることが出来ていただろう。しかし今の疲労状態ではその判断すら危うかったのだ。そのまま直撃—

「マギスフィア起動。コードロード:【クリティカルバレット】」

 背後からの弾丸が翼を貫き、その後甲高い悲鳴が聞こえた。その様子を見たシルヴィアは安堵した表情で後ろを見た。

「遅いよ。ギル、ローク。」

「お時間をおかけしました。しかし内通者は“処分”できましたよ。」

ロークはニコリと笑いながら言った。

「さぁ、反撃の時間だ。」

レオは剣を持ち直すと、ラグナカングに目線を向けるのだった。


第4話—守る者— 完







ステータス

クライド イーストン  リルドラケン 男 34歳

起用度:12

敏捷度:16

筋力:30

生命力:31

知力:12

精神力:15

技能:ファイター7

   レンジャー7

   エンハンサー3

   (ビートルスキン、マッスルベアー、キャッツアイ)

戦闘特技:≪かばうⅡ≫≪防具習熟A/金属鎧≫≪ガーディアンⅠ≫≪防具習熟S/金属鎧≫

武器:ヘビーメイス

防具:ミスリルプレート

   タワーシールド

装飾品:

所持金:5000G




次回予告

クライド「盛大なミスが発覚したな。」

レオ「だからメタいよ・・・」

シルヴィア「いいじゃん。あとがきみたいなもんだし。」

ギル「それでも俺らが話しているだろ?さすがに少しは意識しようぜ?」

レオ「大分もう定着しちゃっているけどネ。」

ギル「よしローク、もう終わろう!」

ローク「次回、第5話—求める者—お楽しみに!」

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