第2話—人を憎む者—
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
―逃げろ、シルヴィ!お前だけでも生き残れ!―
—捕まっちゃだめよ!—
シルヴィアは何故か森の中を走っていた。もう辺り一面は暗くなってきており、何度も木の根につまづいてしまった。
その途端、
—見つけたぞ!忌々しき魔女め!—
そう聞くが否や場面がが移り変わり、気が付けば牢の中にいた。
—本当に醜いものだな!—
誰かがそう私のことを嘲笑った。そのあと、何度も顔や体をぶたれ、あちこちに痣ができた。
次の瞬間、気が付けば私は十字架に括り付けられていた。
—これより、忌々しき魔女の処刑を行う—
—このあばずれが!—
—人類の敵よ!—
—よくのうのうと生きてられるな!—
シルヴィアはもう死ぬんだと覚悟した。その時―
「あー、ちょっといいかな?」
一人の壮年の男性が近づいてきた。そして・・・・・・・
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「あ・・・もう朝か。」
ここはオルディウス地方スピルビア王国冒険者ギルド“蒼の陽炎”にある一室だ。昨日数日単位の護衛依頼が終了し、ようやく家に帰ってきたところだ。
(あのときおじさまに助けられていなかったら私は・・・)
そう思うと心がゾッとした。今までの苦しみは無くならない。しかし今ある幸せはすぐに他人に奪われてしまう。だから、シルヴィアは他人を信じないようにしていた。しかしそれはもう過去の話だ。人と関わりあう大切さはもうギルドマスターや“おじさま”から教えてもらい、もう克服していたつもりだった。ただ今になってもこんな夢を見続けていることから、断ち切れずにいるのは、明らかだ。
シルヴィアはベッドから起き上がると、軽く水を被りに行くことにした
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「花が足りない気がする。」
邂逅一番、ギルバートにそう言われ、何言ってんだこいつ?という視線が発言者に向けられた。
「は?」
思わず、どす黒い声を出してしまったシルヴィアだったが、それを咎める者はいなかった。
「あ・・・いや・・・女の子一人っていうのだとあれかな・・・と思って言ってみただけで、特に深い意味は無いんだけど・・・」
「その言い方だと誤解されますよ。」
ギルバートの方便にロークは苦笑しながら答えた。
「・・・それでも大分意味怪しいと思うけど・・・。まぁいいや。そう言っているうちに来たよ、ライゴウさん。」
レオが向ける目線の先には、ギルドマスターことライゴウがいた。。
「すまねぇな。他の奴の依頼がが長引いちまって。」
そういうと、手に持っていた書類を広げ始めた。
「どうも魔神に関わりがあるらしい。供物と魔法陣が見つかってな。」
「それで、私がいるうちのパーティが担当することになったと。」
「一応お前魔神に関しちゃ専門家だろ?」
ライゴウはあきれ顔でシルヴィアに目線を向けた。その先には、めんどくさそうに、書類を眺めている姿があった。
「・・・生きたワニから召喚される魔神を知っているか?」
「ちょっと待って・・・私はわかんない・・・イクトス出てきて。」
そういうと、封入具から扉の小魔であるイクトスを呼び出した。
「よぉ、しばらくぶりじゃねぇか!俺様に頼み事か?」
「はいはい。ちょっと付き合って。【アナザーノレッジ】」
そう魔法を唱え、数秒すると—
「ドレッドバールっていう巨大なワニの鼻先から人間の上半身に似た悪魔が生えた姿をした魔神が該当する。その場合はうちらじゃ手に負えない。」
そう答えた。しばらく長い沈黙が続いたが—
「・・・ライゴウさん、まだ召喚されたわけじゃないんですよね?」
レオがそう確認した。
「ああ。復活する前に元凶を倒してもらえればいい。報酬は一人あたり6000G、場合によっては追加ボーナスがでる。これは連絡用だ。」
そういって、離れていても対どうしで通話できる通話のピアスを渡した。
「なら、やれるだけのことはやろう。もたもたしている時間のほうがもったいない。」
他の面々はうなずき、出発への準備に取り掛かった。
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5時間後、レオ達は特に何の問題もなく目撃情報のあったスピルビア王国の外れにある村についた。
村に入るころにはもうお昼時で、村人たちは休憩をしていた。早速村長のもとに案内された。
「わざわざありがとうございます。もう三か月ほど前からおきているので今晩には出てきてしまうかもしれません。」
そう村長が怯えたように言った。
「ちょっと待ってください。三か月もの間、どこの冒険者を呼ばないで、放置していたんですか!?」
そうレオが驚いて声を大きくしてしまった。しかし、皆同じ思いだった。さすがに時間が経ちすぎている。
「いや・・・その、恥ずかしながら、お金の余裕が余りなく・・・貯めているうちにここまで経ってしまいました。」
「うちのギルドでは代行サービスを行っていますから、次からそれを利用してください。」
そうシルヴィアが宣伝し、現場の近くまで向かうことになった。
その場所には何人かもう人が集まっており、そこには大きなワニ—クロコダイルがいた。
「あの・・・村長?そのワニは?」
クライドが恐る恐る村長に尋ねた。
「あぁ!今村に来ている芸人のものですな。これまた腕のいい芸人でして・・・毎日楽しませてもらっていますわ。」
「・・・いつからいますか?」
「ん?三か月前からですが・・・まさか旅人さんを疑っておられるのですか?!そんなわけないでしょう!あの方にはいつも助けてもらっています。そのようなお方がそんなことするとは到底考えられません。」
周りの村人達がそうだそうだといわんばかりに頷いた。
「ただこのワニは魔神の供物に使われる可能性があります!だから被害が出る前にせめて違う場所に移させてください!」
そうシルヴィアが村人たちを説得させようとした。
「なんでお前がそんなこと知っているんだ?まさかお前魔神使いじゃねぇだろうな?」
そう村人にすごまれ、思わずびくついてしまったシルヴィアだったが—
「だったらなんですか?」
そう返してしまった。
「こんな異端者もの町に置いていられるか!出ていけ!」
そう怒鳴られてしまった。他の村人たちも見る目が険しくなった。
「まぁまぁ、向こうも依頼で来ているのだ。そこは理解してやってくれ。」
そう村長宥めようとしたが、村人たちのいかりは収まらなかった。
「・・・なら人の役に立てることを証明すればいいんですね?」
ずっと黙っていたレオが口を開いた。
「あ?」
「シルヴィアも俺たちの大切な仲間です。それを貶したあなたのことを許せません。ただ信用できないのなら、実績を作ればいいんですよね。」
「ならやってやりますよ!私は!」
そう強い目で村人を見返した。
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そういった後、借りた部屋の一室にレオとシルヴィアが座っていた。
「ごめん・・・勢いであんなこと言っちゃった・・・」
「ううん・・・むしろあぁ啖呵切ってくれてありがとう!やることが見えてきたよ」
そう笑顔でシルヴィアは言ってのけた。
「強いねシルヴィアは。」
そうレオは語りかけた。シルヴィアは少し悲しそうな顔をしながら話し始めた。
「独り言だと思って聞いてくれる?私はさ、家族みんな魔神使いだったんだ。それで私にも才能があったらしくて・・・しばらくしたら魔女だっていわれて追われて、・・・捕まって処刑されそうになった時におじさまに助けてもらった。おじさまも魔神使いでさ・・・いろいろ教えてもらったんだ。それまでは人間不信だったんだけど大切なことだって気付かさせてくれた。私が前向きなのもおじさまのおかげ。」
シルヴィアは懐かしそうにそう話した。
「そのおじさま、いい人なんだね。」
「う~ん・・・いい人かどうかはわかんないな~。けっこうやばいことしている人だし。」
どんな人だとレオが思っていると、ロークが隣の部屋にいたギルバートとクライドを連れてやってきた。
「なんかロークが重要な話があるらしいぜ」
そう言いながら干しブドウを食べようとしたが、ロークに止められ、しぶしぶ諦めた。
「さっき通話のピアスで確認したんですがね・・・村長お金を用意できないからうちのギルドの代行サービスでやっているそうですよ。」
皆しばらくの間沈黙が流れたが気にせずロークが続けた。
「もうこの村、末期ですよ」
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「おや?ギルバート殿、他の皆様はどうなされましたか?」
村長が杖を突きながらこちらにやってきた。
「いやねもう一度例のワニを件について芸人と話し合うために向かったんですよ。俺はなんかあったときのための留守番です。」
「そうでしたか・・・では、死んでいただこう!」
そういうが否や、村長は一瞬にして3メートル近い体躯になり、呪文を詠唱してきた。
「ヴェス、オルダ・ル・バン。シャイア・スルセア・ヒーティス―ヴォルハスタ【エネルギー・ジャベリン】」
そういってマナの槍をギルバートに向かって投げつけた。しかし—
「おせぇんだよ」
そう言って魔法を避けたのだ。村長だったものは目を見開いていた。
「おまえオーガウィザードだろ?」
第2話人を憎む者―完―
ステータス
シルヴィア ソーウェル 人間 女 17歳
起用度:18
敏捷度:21
筋力:18
生命力:14
知力:25
精神力:26
技能:デーモンルーラー7
フェンサー6
セージ6
ソーサラー1
戦闘特技:≪ターゲッティング≫≪魔法拡大/数≫≪マルチアクション≫≪魔力撃≫
武器:レイピア+1
防具:ソフトレザー
装飾品:叡智のとんがり帽子
所持金:11700G
次回予告
シルヴィ「私、メイン回!」
ローク「最初は時系列つながってないかと思いましたよ。」
レオ「メタいよ」
クライド「因みに作者は主人公であるレオが目立ってない気がしてならないらしいよ」
レオ「まだ二話目だよ?!」
ギル「時間がないから終わろう。次回、第3話—取り戻す者—お楽しみに!」
レオ「話強制終了させられた?!」
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