出来損ないのピアニスト

@yuriarare

第1話 ないものねだり

天才音楽家の家系に生まれてしまった私。

天才音楽家の娘として生まれてきてしまった私。

正直私には父のようにピアノの才能がない。私本人もそれに気がついている。でも周りからは「あの天才ピアニストの娘なら娘もピアノが上手いんだろうな」音楽の授業があれば「じゃあ天音さん」天才ピアニストの娘であっても私は天才ピアニストじゃない。本当は私だって父のようにピアノを楽しく弾きたかった。でも私にはそれが出来なかった。私に浴びせられるたくさんの声。私はそれが大嫌いだった。だから私は音楽から離れようと考えた。でも結局最後に行き着くのは「天才ピアニストの娘」これだった。私にはピアノの才能もないし音楽ばかりをやってきたせいでその他のことがなんにも出来ない。私は天才ピアニストの娘に生まれてきたただの凡人だ。そのせいで君が憎い。周りからなんのプレッシャーもなくただ楽しんできれいな音色を奏でる君が。いつ見ても笑顔で楽器を吹く君が。私はただ音楽を楽しみたかっただけ。

「君が羨ましいよ」


僕の両親は世界的に有名な体操選手だ。でも僕はそれをずっと隠して生きてきた。周りからの視線に耐えきれなくなったから。昔からずっと「蒼井くんは立派な体操選手になるんだろうね」こんな言葉が僕を苦しめる。両親の思いを押し付けられ毎日体操教室に通った。そこで僕は才能があることに気づいた。でも僕は体操が大嫌いだった。「好きと得意は違う」僕はただこれを分かってほしかっただけなんだ。でも両親はどんどん僕を体操の道へと引きずり込んでいった。だから僕が中学に上がって「吹奏楽部に入る」というと周りは全員反対をした。「なんであの二人の子供なのに吹奏楽なんか」「今までの努力は何だったの」痛い言葉が僕に向けられる。でも意を決して僕は言った。「僕は昔から体操なんて嫌いだった。大嫌いだった!それなのに…。今までの努力なんかあんなの努力じゃない!僕はただ無理やり体操教室に行かされてそこで才能がたまたま開花してしまったただそれだけのことだ。もともと体操の道になんか行くつもりはない!僕は自分のしたいことをする。これは僕の人生だ!お前らのものなんかじゃない!」僕がこんな事を言ったのが初めてだったからだろう。周りは呆然としていた。なかには「嘘でしょ。嘘だと言って」とまで言っている人もいた。結局僕は吹奏楽部に入った。そこには「天音七海」僕が密かに憧れている人物がいた。君は僕のように夢を押し付けられずに自由に音楽の道に進んでいったんだろうな。

「自由な君が羨ましい」

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