16 真っ白い病室にて
ここは私の世界であって、誰の世界でもない場所。
真っ白い病室、キョウコはベッドに腰掛けている。
何もない部屋、誰もいない部屋。
いや、枕元に置かれたぬいぐるみがキョウコを見ている。
それだけの、ただ安全で清潔なだけの部屋。
時は過ぎても、天井の強すぎる蛍光灯に照らされていると時間が止まってるみたいに感じる。
キョウコがここに来て二週間になる。
自分ではもう完全に毒が抜けたと思っているが、医者によると体にも脳にもまだダメージは残っていてもう少しここにいる必要があるそうだ。
退屈で頭がおかしくなってしまいそうだったが、だからといって一人で外に出る自信はなかった。なんといってもキョウコは本当に一人ぼっちになってしまったのだ。助けを求めたくても、もう誰もいない。
キョウコは唯一の友達であるウサギのぬいぐるみのミーコに話しかけた。
「ねぇ、私たちはずっといっしょだよね?」
確かにキョウコはそれに話しかけたつもりだったが、そこにあるはずのぬいぐるみはなかった。
どこに行ったのだろう?
キョウコはベッドの下や、サイドテーブルの周りを探してみるがミーコはどこにもいない。
そういえばこの前も同じようなことがあった。
あの子は私に無断で外出する。
今度ちゃんと叱っておかなくちゃ。
やることがまたなくなったので、またまた時計を見上げた。
夜ではなくたぶんお昼の一時過ぎだった。
久しぶりに窓を開けてみる。
きっと外は小鳥さえずり爽やかな風吹く夏の草原にちがいない。
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