第35話 『おかあさんといっしょ』
もう、学生さんは夏休みに入ったのかしら、昨日、行ったカラオケボックスも昼下りだと言うのに、予約できないくらい満席。近くに居たので、直接、店に足を運ぶと、フロント横の待合ソファーは3、4組待っていた。
これじゃ、ムリだと諦めて、喫茶店へ入っり、次回作の資料でも読もうと馴染の店に行く。
ココも満席。
ココは、一階と、二階で、50:50くらい入れる大手のチェーン店だ。
今日に限って、客層が、お年寄りグループ(常連さん)、高校生くらいの教科書を広げるカップル。
(まったく、最近の若者は、性欲ないのか。彼女と一緒に勉強なんてできるもんかね。私の若い頃は……はっ! デメリットしかないことを口走りかけた♡)。
そして、買い物の帰りかしら? それとも、習い事の帰りかしらん? 若い(20代後半から、30、40歳手前ぐらい)お母さんと小学生ぐらいの母子が多い。
あれね、現代のおかあさんって、子供が小学生くらいだと、買い物へ行くにも、お子さんをお留守番させないのね。習い事も子供だけで行かせないのね。
なんか、事件に巻き込まれないように用心してるのかしらん? それとも、過保護。まあ、47歳になっても独身の私にはわかりません。
そんな、夏休み(たぶん、そうだと思う。裏取はしていない)の今日。えー、現在、2024/7/27 14:00。
私、星川は、先ほど、小説家になろうで先行連載している
『タイムスリップ×魂入れ替わり! 歴史オタクの高校生が戦国武将に!?』
のストックを書き上げて、おまけのこのエッセーを二軒目の喫茶店で認めております。
(宣伝は、これくらいに本題に入ります)
皆さんは、どんな執筆スタイルか存じ上げないけれど、私は、3時間ほどで3000字弱ぐらいを書き上げると、頭が茹って、脳のダウンタイムが訪れます。
そこで、朝のお店で、小説を。二軒目でエッセーを書くことにしています。
それに、エッセーは小説と違って、既存のキャラクターがないので、およそ15分~30分の散歩の間に、題材を拾います。
二軒目へ向かう道すがら、向こうと、こちらを隔てる川。渡し橋の役割を果たす空中庭園を、トボトボ歩く。
「太陽がオレを殺しに来てるなあ」
なんて悪態をついて渡っていると、後ろから若いお母さんの声が追い抜いていきました。
「アイス溶けるから、早く、歩いて!」
おかあさんは、見たところ35、6歳。小柄で、軽やかなショートカット。薄い青のストライプの長袖シャツを日焼け止めに着て、背中にリュックを背負いどんどん歩いていきます。
(マジか、元気だね……)
私、星川、いつもヘロヘロ言ってますが、家から駅まで、毎日、15分歩いて往復しています。
スマートウォッチで万歩計を確かめると、1万歩は歩いて居ります。決して、足が遅いわけでも……、
「そうか、足が短いのか!」
(納得するかー---! 否定もできんけど、認めない!)
そう、歩き慣れた男性の脚力を引き離す、まるで、開幕されたパリオリンピック、女子マラソン代表の鈴木優花さん、みたいなものです。
このおかあさんが、そうだった。
目測30m遅れて、背中からお尻にかけて、はみ出る肩掛けバック担いだ小学4年生ぐらい(小柄なおかあさんより背が低かった)の少年が、星川よりやる気なさそうに、後をついて行きます。
ちょうど、やる気のなさは、星川と同程度、時速1mぐらいです。むしろ、手負いのお年寄りです。
「まってーやー--!」
少年は、弱音を吐きます。
星川は、「うんうん、わかるよ。その気持ち。(以下同文)」少年に共感します。
しかし、お母さんは、振り返りもせず。
「アイス溶けるで~~~~、早く、歩きなさい!」
(あんたは、鬼か、般若か、それともフリーザーか!)
と、星川は少年に同情します。
ぎょぎょぎょ!
お母さんと、少年の距離が30mだったのが、さらに引き離しにかかります。それは、まるで、鈴木優花選手のラストスパートです。
「おかーさん……まってやー---!」
少年が、嘆きの声をあげます。
星川は、殺しに来る照りつける太陽の下の歩行です。眼鏡焼けせぬよう、ド近眼の癖に、眼鏡をはずしていましたが、これは見過ごせません。
児童虐待です。児童相談所案件です。
眼鏡焼けするリスクを冒し、眼鏡をかけます。そして、クイッと鼻の上のフレームを持ち上げます。
星川が、お節介の遠山の金さん
(そうか、もう、時代劇は民放では放送してないのか)
少年に助け舟を出す声をかけようとします。
「おかーさん!」
少年は、お母さんを追って走り出した。
まるで、やる気のムラのあるサラブレットで有名な、ゴールドシップのようです。突然、駄馬の星川を差し切って、目指す二軒目のカフェのある商業ビルに消えてゆきました。
ここの、4階には音楽スクール、ダンススクールがあります。おそらく、どちらかへ向かったのでしょう。
それに、私が歩いてきた方向の背後には、スイミングスクールがあります。
少年とお母さんは、午前中は、スイミングスクールへ通い、午後は、音楽かダンススクールへ通うのでしょう。
「少年よ、アイス一つで走り出す君は、見込みがあるぞ! 目指せ、2032年ブリスベンオリンピック! ゴールゴシップのようにフランス競馬の凱旋門賞でもいいぞ。とにかく、がんばれ!」
昔は、父子で親子鷹など言いましたが、現代は、強い子供を育てるのも「おかあさんといっしょ」ですね。母は強しです。
と、ヘロヘロの星川は、二軒目の喫茶店で、氷が溶けるまでアイスコーヒーだけで粘って、このエッセーを書き終えるのであった。
〈了〉
それでは、本編・あとがき、どちらでもいいので、「おもしろかった」・「星川、お前は変人だが応援してやろう」と心ある読者の皆様。
・☆3つ
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・「毎週楽しみだ」などポジティブな感想お待ちしてます。
それでは、また、来週。
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