第2話 生まれ変わる

暗闇。


ここは、何処だろう?


手を動かすと、固いものに触れる。


四方を壁で囲まれている。


外に出たい一心で、壁を叩き続ける。


コンコンコンコンコン


叩く、叩く、叩く、、、


暫くそうしていると、ようやく壁が少しだけ壊れた。

隙間から、光が差す。


短い手を光の方へ動かし、勢いよく突き破った。



まぶしい!


目が眩む光の洪水。


徐々に目がなれ、恐る恐る目を開いてみる。


最初は、霧がかかったようだった視界が、徐々にはっきりしてきた。


広い自然豊かな空間。

降り注ぐ暖かな光。

俺の隣にある木は、見上げるほどの大樹。

川のせせらぎの音もする。


ここは、どこなんだ?


ふと、目線を下げると、白い爬虫類のような身体が目に入った。


どゆこと?!

俺死んだよね?


お尻の方に、今までなかった感覚もある。

試しに力を、入れてみると、ふりふり動く。


まさか、これは、今人気の異世界転生というやつでは?


ただ、どう見ても、美形な人間とかではなく、爬虫類。

鏡がないから分からないけど、アルビノのワニっぽい。


ワニに転生するとか、詰んだ。


よろよろと体を動かし、何とかここから抜け出せないか試していると、誰かの声が聞こえた。


「長き時を経て、遂に目覚めたか。わが親友の息子よ。」


渋い、めちゃくちゃ格好いい声だ。

なんだ、どこから聞こえるんだ?


声のする方を、見ると先程まで、俺が根本にいた大樹。


「わしの名前は、ユグドラシル。太古よりこの世界を守る神の眷属じゃ。」

 

ゆ、ユグドラシル。

神話とかネット小説で登場する、あの木の事か?!


「お前は、わが友の息子。友が人間に殺されてから、300年。わしは、お前の誕生を心待ちにしておった。わしが友に変わり、お前の親となろう。」


なに言ってるんだ?

僕の親は、父さん母さんだけだ!


「ピギュュ、ギュウウ(お前は、俺の親じゃないぞ)」


声がでない。

変わりに出るのは、可愛い鳴き声だけだ。


「!!!なんと!これは驚いた。前世の魂の記憶が残っておるのか。普通は、全て忘れてから転生するものなんじゃが。これも、神のご意志かのぅ。それなら、まずは自分がどうなったか知りたいじゃろう。ちょっと待っていなさい。」


ユグドラシルは、勝手に言いたいことだけ言った。


ガボッ


「ピギュゥ!?」


突然、俺の足と元の地面が、盛り上がり、あっという間に、成人男性ほどの大きさがある花の蕾が出現した。


真っ赤な花びらが毒々しい。

なにこれ、怖いよ!


半泣きの俺をよそに、シユルルルっと花びらがほどけていく。


花の中心には、長い金髪の男性が座り込んでいる。


ひぇっ!

もう、逃げるしかない。


「ピギャァァァぁぁ」


雄叫びを上げながら、短いて足をバタバタして、出きるかぎり、ここから離れようとしていると、むんずとつかみ上げられた。


「ビギュウウ!ピギユゥ、ピギュゥ!(やめろ!はなせ!はなせ!)」


「こら、こら、どこに行くんだ。暴れるでない。先ずは、自分の姿を確認してみるのじゃ。」


びっくりするほどの美形だが、全裸で隠すところも、隠してない男に、鷲掴みにされながら、川縁まで運ばれる。


もう、やだよぉ。

俺は、普通の中学生だったんだぞ、こんな変質者に対応出来るスキルはない。


ぐったりと、なされるがままになっていると、「ほれっ」と、川の上に掲げられる。


「自分の姿をみてみるんだ。」


「!!!!」


川に写った姿は、小さな白い龍。

西洋のドラゴンというより、中国の龍のような、にょろにょろしたフォルム。

生まれたてだからか、全体的に丸々としているが、紛れもなく龍だ。


「ピギャぁ・・・」


取り敢えず、ワニじゃなかったかぁーー

むちむちして太ってるけど、可愛いなぁ~~


ちょっと、現実逃避してしまった。


「自分が何に転生したのか、わかったようじゃな。次は、お前が入っていた卵の殻を食べるのじゃ。龍族の母親は、長い間子を身籠っておる。その間に、大量の魔力や龍としての知識を殻に貯めておるのじゃ。」


「ピィキュウウ(なにそれ)」


「殻を食べる事によって、産まれた直後でも、ある程度の力を付けることができる。

龍やドラゴン等の種族には、欠かせない大切なことじゃ。」


再び、元の木の根本に戻ってくると、殻の上に下ろされる。


「ほれっ。食べるのじゃ。」


「ピィキュ、ピキュキュキュ、ピギュ(そんなこと言っても、抵抗があるんだけど、無理)」


「わがままな奴じゃのう。おりゃっ!」


「!!!!ギャ!」


こいっ、無理やり口につめやがった!

うぇっ・・・・・

あれっ?!甘くて美味しい?!


なにこれ~~~うまうま。

あっとゆう間に全部食べてしまった。


「げふっ。」


お腹いっぱい。ほけっとしていると、突然身体がカッと、熱くなった。

頭の中に、強制的に知識を詰め込まれる。


・・・俺の両親は伝説の龍種、ドラゴンより上位の存在だった。

だけど、ある時信頼していた、人間に裏切られ殺されてしまった。母親は、命からがら逃げ、ユグドラシルに卵を預けた。


この全裸の男は、ユグドラシルの化身。


違和感のあった心と身体が馴染んでいく。

これが、今の俺の姿。

俺は、白龍として転生したんだ。




「ユグドラシル、このあと俺は、どうしたらいい?」


知識や、魔力を吸収して、先程まで話せなかったはずの言葉が話せるようになった。


「もう、話せるか!流石あの二人の息子。これから暫くの間、わしがお前を鍛えてやろう。箱庭の外の世界は、危険がいっぱいじゃ。わしの事は、パパと呼んでくれていいんじゃぞ。ず~~~~っと、見守ってきたから、わしにとっても、息子みたいなもんじゃ。」


「・・・・取り敢えず、服を着てくれ。」




































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