【1話完結】泣ける話集

頑強文熊

最後の手紙

冬のある日、小さな海辺の村に住むユウキは、祖父の家の片付けを手伝っていました。祖父は最近亡くなり、ユウキにとっては親代わりの存在でした。祖父の部屋を整理していると、ユウキは古い木製の箱を見つけました。中には、祖父が若い頃に戦地から祖母に宛てた手紙がたくさん入っていました。


手紙には、祖父の若い日の夢や、戦地での恐怖、そして何よりも祖母への深い愛が綴られていました。ユウキは祖父が若い頃に経験したこと、感じたことを初めて知り、心が熱くなりました。祖父が祖母に宛てた最後の手紙には、こんな言葉が書かれていました。


「愛する君へ、戦が終わり、もしも私が帰れなかったら、この手紙が私の心を届けるものと信じています。私の愛は時を超え、いつまでも君のそばにあります。」


ユウキは涙をこらえながら、祖父が生きた証を一つ一つ手に取りました。そして、祖父と祖母の愛が、時を超えて今もなお村に息づいていることを感じました。


その夜、ユウキは村の海岸に立ち、祖父と祖母が過ごしたであろう美しい景色を眺めました。冷たい海風が吹き、波の音が静かに響き渡ります。ユウキは海に向かって手紙を読み上げました。祖父の言葉を通じて、ユウキは生と死、愛と別れの意味を深く理解しました。


その瞬間、ユウキは祖父の存在を強く感じました。まるで、祖父がユウキの側に立っているかのように。ユウキは海に向かって言いました。「祖父さん、僕は祖父さんの話をずっと忘れません。祖父さんの愛を、この村を、守り続けます。」


そのとき、遠くの海から光が一筋、村を照らしました。まるで、祖父がユウキの誓いを聞いて、その勇気を称えるかのように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【1話完結】泣ける話集 頑強文熊 @gankyobunkuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る