雪を描く空

菱海蒼翔

開幕…記録の欠片0

生きることも苦しいが、死ぬこともまた同じく苦しいものである。


 これは、今より10年程過去のお話です。

あるところに、10歳ほど歳の離れた兄弟がいました。兄は病気がちでしたが音楽を作ることに才能のようなものがありました。妹は、人付き合いがあまり得意ではなくこれといった秀でた才能もない、けれどなんでもそつなくこなせる方のようでした。

 そんな兄妹はよく公園で弾き語りをしていました。兄の作る音楽は心を落ち着かせるように優しいもので、兄妹の弾き語りを聞きに公園に足しげく通う人も多かったようです。

 でもそんな兄妹は、ある日からすっかり姿を見せなくなりました。

しばらくは、風邪でも引いたのだと心配する人たちもいましたが、一月もすれば

公園に遊びにきていた人達は、その兄妹のことも、兄の音楽もすっかり忘れてしまいました。もう聞けないものを心の奥にしまい込むように。そしてこれは、その10年後の今の妹と同級生のお話です。

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