第18話
この街で、飯といえば基本的に野菜系が主になる。
次点で酪農の肉や卵などになり、それに加えて果樹園からとれる果実とそれらでつくられる酒になる。
そういう事情のために、足りない食品となるのが海産物だ。
こればっかりは、州都から船便で送られてくる物の中に含まれるが、魚というか生鮮食品は、やはり時間と手間がかかるために高級品となる。
そもそも生魚が来ることがほとんど無い。
加工品の干物から始まり、調理済みのモノほとんどであり、生魚といえば、近くに流れる大河で釣れたものが主だったりする。
というか、淡水魚はあまり美味くない。
やはり海水魚の方が旨味がある分、味に深みが出てくるものである。
地場物は、地場で食うべきだという訳であるのだが
「……海水魚の
昼からだいぶ時間がたちながら、いつもの飯屋にて遅い昼飯を食べに来た際、ちょうどいいという事で、味見を兼ねての白身魚(海水魚)の揚げ物が提供された。
「ああ、それ、州都で加工品が出回っててな、仕入れてみたんだ」
「……加工品か、そういう事ならいけるか?」
「揚げ直したから、多少はいけると思うぜ?」
そういって、熱々の衣がついた白身魚を口に運ぶ。
サクッという食感から、白身魚のふんわりとした歯ごたえ、そしてあとからやってくる生臭さ。
「……なんだこれ、クッソまずいぞ」
「やっぱりかぁ、そうだと思ったんだよなぁ、失敗したか」
「……海水魚と言ってたから期待したが、出したのは失敗作を処理させるためか?」
「ま、いいじゃねぇか。コレ何とかならんかね?上手くいったらタダにするからさ」
「……タダねぇ、タダより高い事になりそうじゃねぇか」
「かもな。で、考えた方法なんだが、こういうのは……」
ソースをぶっかける事から始まり、果実の香りでごまかすなどなど、いろんな案を出しては試すという事になっていく。
ただ、ここまで生臭いとなると、他のでごまかすとしても誤魔化しきれないのが実情だった。
「……もったいねぇけど、いっその事、酒精の強い酒に漬けるしかねぇな」
「酒かぁ……」
もっともポピュラーなのは、アルコールをつかった臭みとりである。
日本酒……は無いから、代わりの果物酒に無理やり付け込んでしばらくしたものを揚げ直す。
臭みは消えたといえば、消えたわけでもなく、ただ薄くなってはフルーティな香りが強く残った代物に化けただけであった。
「……匂いが果物かこりゃぁ?それに食感そのものとか、もう色々とダメだな」
「だな。これは売り物にならんわ」
「……臭み抜きは少なくともそれでいいとしてだが、物がなぁ」
臭みは取れる事には成功はするが、結局、色々と手間暇かけたためにボロボロになった身がどうしようもない状況となる。
「……いっその事、ひき肉にしてほかの具材と一緒に丸めるなり、そぼろにするなりか……」
「一緒に丸めるか……それやってみるか」
そうしてできた、魚だんご、いうなればツミレ。
果実酒も柑橘系の奴にすることで、香りも悪くない出来となった。
なったのだが……
原型がまったくない代物になってしまい、魚なのか肉なのか、はたまた小麦を練ったモノなのか、よくわからない代物に変わってしまった。
「……ま、捨てるよりかはマシか」
「確かにな」
「……という事で、それを揚げた奴を頼む」
「こういうのは、スープだろ?」
「……わかってねぇな、表面を焦がして衣をつくんだよ、そして中もトロリとした状態のまま火を通して……表面カリカリの球状……あ!アレじゃねぇか!!しばらく待ってろ!」
「お、おぅ……?」
そう、思いついた。
思いついて、思い出してしまった。
そう、関西の一部地域の家庭には、一つは存在するといわれる"くぼみが複数ある鉄板の調理器具"を!!
・・・
・・
・
「お、これいいな」
「……だろ?んで、小麦を溶いた液体のやつで、こうやっても行けるぜ?」
「ほうほう」
クルリクルリと回して球状にしたソレの中身に、先ほどの肉団子の小さいものをほうりこんで丸めた奴が完成する。
そして、今度は何をいれるかという具材を色々試していた。
というかこれ、何というタコパ?
ただ、タコはないが。
「……んで、これをこうやって」
「手際よすぎだな、おっちゃん上手すぎ」
「……ふふ、返しのツヴォルグと呼んでくれや」
ただ、やはりタコが欲しくなる。
あと、出汁がとれる昆布とか……とか
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