第4話
「よぉ、ドワーフの旦那、景気はどうだ?」
「……ボチボチだな、ほれ、通行書」
「ほいほい、通って良し」
手渡そうとした通行書を受け取りもせずに、手ではやく入れという合図を出してくる門兵。
「……ちゃんと見とかんでええんか」
「旦那なら顔なじみ過ぎるしな」
「それとも、何か悪さでもしてたり?」
「……するか」
「ほらな」
「だな」
この二人は、飲み酒屋の常連という事で、意気投合しては美味い酒の話を色々していた輩でもある。
こういう気楽な相手だと、その時の会話を思い出しては、土産を渡したくなるものでもある。
「……ほらよ、話していた
「ほぉこれが!旦那の目利きした酒は確実に美味い奴買ってくるからなぁ」
「さすがドワーフだわ、ほんと、ごちそうになります!」
「……そういうのは、小さい声でやっとけよ?」
そういって、門兵の後ろを指さしてやる
「ほぉ、お前ら職権を使ってサボってるんだな?ん?」
「た、隊長!?」
「いえ!これは職務を全うしている段階であります!」
「荷物検査になります!!」
「ほぅ、ならそれは没収品という訳だな?ワタシが持っていこうではないか」
「えっ?」
「そ、それは、その・・・」
「なぁに、諸君らはまっとうに職務を果たしているのだ、サボっていないというのならば、私がたまには手伝ってやろうと言っているのだ。ん?」
「えっ、あ、はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます……」
そう言っては、酒瓶をもっては移動する隊長さま。
すれ違いざまにウィンクしては見えないように銀貨を手渡してきている時点で、まぁ、面倒見の良いお人なのか、それとも意地悪な人であるのか……
どちらにしろ、金銭受け取ったからにはフォローしろという事でもあろう。
「……わしの分けてやるからそう落ち込むな。まぁ、頑張れよ?」
「だ、旦那ぁ……」
「旦那は神なのか?!」
「……今度は注意しろよ?」
「「……!!」」
二人とも、口を閉じたまま頷き合って周囲を確認していたのは言うまでもないか。
* * *
半月ぶりの家になるが、掃除が行き届いているともいう。
まぁ、知り合いの神官オーガのやつに、孤児院の仕事として清掃手配を頼んでいるというのもあるが、さすがに工房となる離れは危ないので禁止としてはいる。
そうして、一人落ち着いては、荷ほどきにいそしむ。
今回手に入った聖石は何に使ってやろうかと思いをめぐらせつつも、他にも手に入れたものを並べていく。
酒に酒で酒を……うーむ、酒がかなりかぶっているな
道中によった港町やら宿場町、交易街で見つけた酒をかたっぱしから集めていった記憶がよみがえる……
そうして、気が付いたら背負子の中身がほぼ酒で埋め尽くされていた。
いや、一部は付与石の材料なり、ハンドクリームの素材なり、いろいろとあったりはする、するが……背負子の二割に満たない気もしない事もないのは気のせいだろう。
ここまで多くなったのは、なぜなのか?
いや、多くてもかまわんか、酒は薬という奴がいた様な、いなかったような……
まぁいい、薬だ薬、薬だから大量にあっても問題なかろう、うむ。
まずは味見で一本開けて、香りを確かめる。
うむ、やはり見立て通りの芳醇な香りをしておるわ……
さてと、これらは早急に隠し棚にしまい込んでおかなければ……
「ドワーフのおっさん!帰ってきたんだって?」
「隊長から報告あったから来てやったぞ!」
「私は、掃除の仕事に関してのお話が……」
なんというタイミングで来る奴らなのか、隠す時間を稼がなければ……と行動を移す前に扉を強くたたき出す輩がいた……
「おーい!いるのは解ってるぞ!おれの索敵能力をなめるな!!」
「匂いもするな、それに、おお、これは上物のお酒の香り、まさか独り占めじゃあるまいな?」
「ふむ、なるほど、だから居留守とは感心しませんね。これは、何やら不徳とするところがあるのではないでしょうか」
玄関先で、大の大人三人が騒ぎ始めていおり、このままでは扉を壊されかねない、かつ、やかましくなってきたため
「……だぁぁぁ!!うるっせぇな!てめぇら!!玄関先で喚くんじゃねぇ!!」
あまりにも、玄関先で喚き散らしているので、怒鳴り返してしまった。
「お、ほらな?やっぱいたいた、ほら、上物生ハム燻製もってきたぜ?台所でいいか?」
「邪魔するぜ。おれはチーズの燻製な。お!蒸留酒あるじゃねーか!やったぜ」
「お邪魔します。畑でとれた野菜を漬け込んだ物を持ってきましたよ?これが、なかなかに合うんですよ。それと、果実系ありますか?」
「……おまえら何勝手に上がってんだ」
三者三様で勝手知ったる何とやら状態で、家の中に入り込んでは準備を始める。
「氷、要りますよね?作っておきますよ」
そういいながら、何かわくわくしながら魔法使って氷をつくりだす神官オーガ
「チーズの厚みは薄い方がいいよな?その生ハムも一緒にやっとくわ、かせ」
と、慣れた手つきで包丁を使い薄くスライスしていくモノクルフォーマル姿の獣人
「おう頼むわ、んじゃ俺は皿とグラス、グラスっと……こっちの長テーブルでいいよな?」
明かりを準備しては、手慣れた手つきでテーブルを片して準備する魔族
三人が三人ともに、手慣れ過ぎた行動で場がいっきに整い
「それではードワーフのおっさんが無事に(美味い酒を持ち)帰った事に」
「「「乾杯!」」」
「……ちょっと待てやお前ら!わしのだぞ!!わしが手に入れたんだぞ!!!少なくとも先に飲ませろや!!!!」
「「「どーぞどーぞ」」」
こうなったら、やけ酒である。
少しでも、こいつ等よりも多く飲んでやると心に決めて
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