四分咲き ―春休み4日目―
「では今日は、残り少ないひなたさんが青春を楽しめるように計画を立てます!」バーンと私はスケッチブックを取り出す。パチパチパチ。「ひなたさんがやりたいことなんでも言ってください!」陽向さんが手を挙げる。「ショッピングモールデートでしょ!桜祭りも行きたいし…。お花見はマストだよね!」
ということで出てきた候補を絞った結果、ショッピングモールデート、図書館で勉強、桜祭り、遊園地、お花見、これを全部することになった。高校3年生でしかも受験生なのにお金と時間は大丈夫かって?友達と遊ぶ時に使うはずだったお金と時間が有り余っているから大丈夫だ。むしろ高校生活にあるはずだった青春を取り戻せるんじゃないかと楽しみなくらいだ。心底うれしそうにノートに詳しい計画(というかほとんど妄想)をかきかきしている陽向さんを見て「ていうかほんとにサンア…。なんですね。」と口に出す。「そうだよー。」何回目のやりとりだろう。昨日と今日だけで優に10回はこえている。そうだ!私にはサンアのトレカがあるではないか。ケースからとりだしたトレカに載っているサンアの顔はメイクの系統、髪色こそ違うものの陽向さんそのものだ。「ひなたさん、ちゃんとアイドルしてるんですね。」「してるよ!」うつ伏せ状態から起き上がって座った陽向さんとトレカの中のサンアを見比べる。「ほんとだ。でも私、黒髪のほうが好きかも~。」って言ったら、「実物のほうがカッコイイでしょ?」って顔を近づけてきた。近い…。思わず顔が赤くなったのを陽向さんは見逃さなかった。「ほら、カッコイイでしょ!」って。しつこいなぁ。
気を取り直してここで私達のスケッチブックの中身をあなたに少しだけ見せてあげよう。
契約恋愛においてのルール
その一 互いを呼ぶときは呼び捨てで
その二 敬語禁止
その三 この関係は誰にも言わないこと
その三 会えない日も連絡は取る
その四 顔の映る写真は撮らない
その五 アイドルだと絶対バレてはいけない
陽向のやりたいことリスト
・ショッピングモールデート
・図書館で勉強
・桜祭りに行く
・ビデオ通話する
・遊園地に行く
・この桜の木の下でお花見する
これは全部、陽向さんが考えたものだ。
陽向さんが書き上がげたものをパラパラ読んで見た、「呼び捨て…。それに敬語禁止ですか!?」ムリムリ。「そうだよ。」って爽やかな笑顔で言う陽向さん。ええい、どうにでもなれ「ひなた…。ほんとにこれでいい?」なんかニコニコしてる。この顔はOKってことなのか。ひたすらニコニコしている、怖いから。それから陽向さんはスケッチブックを私の手に渡し「じゃ、ちゃんと読んでおいてね。明日の予定は後で連絡するから。また明日、おうか。」と、 スマートに去って行った。というか、ちゃっかり連絡先が交換されていた。しかも、はじめて名前を読んでもらえた。素直にうれしいって思ってしまった。
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